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環境教育テキスト 瀬戸内海?里海学入門

 事業名 瀬戸内海沿岸域における浜辺の観察教室による実践環境教育
 団体名 瀬戸内海環境保全協会  


7. 瀬戸内海の生き物
7.1 海の生物 ―多様な生活様式を持つ海の生物―
 海には様々な生物が住んでいますが、陸の生物と海の生物で大きく異なっていることがあります。普通、陸上の生物の方が海の生物より多様性が高いと言われますが、それは陸上では昆虫の種類数が多いためで、昆虫の種類数を除けば、海の生物の方が陸より多様性が高くなります。それは以下に述べるように、海の方が生活様式の多様性が高いからです。
 海の生物はその生活様式に応じて、プランクトン(浮遊(ふゆう)生物)、ネクトン(遊泳(ゆうえい)生物)、ベントス(底生(ていせい)生物)に大別されます。
 プランクトンは身体が小さくて遊泳力が弱く、海水の流れによって移動させられる生物で、植物プランクトンと動物プランクトンに分けられます。ネクトンは身体が大きくて遊泳力も強く、海水の動きに対して独立に動くことができる生物です。ベントスは海底と離れては生活できない生物を指します。ネクトンもベントスも、その生活史の初期には、浮遊卵や浮遊幼生としてプランクトンの仲間に入ります。
 これに対して、陸上の生物は空を飛ぶ鳥も昆虫も一生涯空を飛び続けることはできません。すなわち、陸上の生物は、海洋生物の分類ではすべてがベントスの仲間に入るような生活史を持っています。この理由は、大気と海水の密度の違いにあります。海水の比重は大気の比重より850倍も大きいのです。そのため大きな浮力がかかって、海水中の沈降速度は大気中の沈降(落下)速度よりはるかに小さくなるのです。すなわち、大気中で飛行を続けるためにはとてつもないエネルギーが必要となり、そのために生涯飛行を続ける生物は陸上には存在できません。一方、大きな浮力によりあまりエネルギーを必要としないで泳げる海中では、プランクトンやネクトンのような生活様式が可能となるのです。
 また、海中にはクジラのように巨大な生物が生息可能ですが、陸上で同様な生物は重力のために身体が押しつぶされて、生息できません。
 生物の餌は、基本的には植物の光合成が元になっています。光合成のためには光、栄養、炭素が必要です。陸上ではどこでも光が当たりますが、海では海水中の光の減衰が大きいために、平均水深3,600mの太平洋の中で光合成が可能な層(有光層(ゆうこうそう)と呼ばれます)は、海面下わずか100m〜200m程度です。瀬戸内海の場合には、海水中に多くの懸濁(けんだく)物質があり、光の減衰が大きいので、大阪湾では海面下6m〜7m程度、きれいな紀伊水道や豊後水道でも40m〜50m程度しか光が届きません。したがって、植物プランクトンはこの薄い表層に留まらなければ生きていけないのです。そのために彼らは身体をなるべく小さく、軽くして、沈みにくいようにしているわけです。
 また陸では、有機物の生産と分解がいずれも地表で行われますが、海では光の当たる表層で有機物生産が、光の届かない底層で有機物分解が行われるため、先述した貧酸素水塊(6.4節参照)発生のような問題が生じるのです。
 
7.2 ベントス(底生生物) ―海を浄化するベントス―
 海水中で生産された有機物粒子(プランクトンの死骸・糞など)は海底に沈降して、そこに生息している生物の餌として消費されます。
 海底にはゴカイや二枚貝などマクロベントスと呼ばれる様々な大型埋在(まいざい)性生物(泥の中で生息している生物)の他、線虫などのメイオベントス、バクテリアなどの小型埋在(まいざい)性生物が生息しています。さらにヒトデ、ナマコ、エビカニのように海底表面に生息する表在(ひょうざい)性生物や、アミ類のように海底より少し上に浮遊して生息する近底性生物も生息しています。これらの生物すべてをまとめてベントス(底生(ていせい)生物)と呼びます。
 
 
 マクロベントスの中で、多毛類のゴカイは口から取り込んだ泥の中の有機物を餌とするので「堆積物食者(たいせきぶつしょくしゃ)」と呼ばれ、二枚貝のシズクガイは水管から取り込んだ海水中の懸濁物を濾過(ろか)して餌とするので「懸濁物食者(けんだくぶつしょくしゃ)」と呼ばれています。
 ベントスにとって大切なことは、上層からの有機物の補給があることと、海底付近に酸素が十分あることです。瀬戸内海の各海峡近くでは、エビやカニが多く棲む豊かな海底が見られます。それは、餌の補給が十分あるのと同時に、強い潮流による大きな鉛直混合(えんちょくこんごう)によって海底付近まで多量の酸素が供給されるからです。一方、海水が停滞する湾奥や灘中央部では、成層が強化される夏季に貧酸素水塊が発達して、低酸素濃度に弱いエビ、カニなどがまずいなくなり、生き残るのは低酸素濃度に耐性を持った二枚貝のシズクガイや多毛類のヨツバネスピオなどで、これらのベントスは海底の汚染指標種とされています。
 さらに酸素濃度が減少して無酸素となると、すべてのベントスがいなくなり、「死の海底」となります。
 
舟崎克彦・靖子(1971)「トンカチと花将軍」
福音館書店にでてくるアメフラシ
なんと貝の仲間です。
 
瀬戸内海の単位面積当たりのマクロベントス種類数分布
(せとうちネットより)
 
瀬戸内海で漁獲量が激減しているアサリ
 
瀬戸内海の砂浜でよく見られるアラムシロガイ
 
7.3 海蛍 ―夏の海の幻想的な光―
 夏の海岸に出かけると、海の底に青白いぼんやりした提灯のような光を見ることがあります。これは海蛍(ウミホタル)という甲殻類に属する発光性の小動物が光っているのです。ウミホタルの身体は楕円形で、2枚の殻でつつまれ、約3mmの体長を持っていて、ミジンコのようです。昼間は浅海の底の砂泥中に潜っていて、夜になると泳ぎ出て、魚の死骸などを食べます。
 空き瓶の中に魚のアラなどを入れて、蓋に直径5mm程度の穴をたくさん空けて海底に置き、しばらくして引き上げると、ウミホタルを採取することができます。
 ウミホタルは口の近くにある赤みがかった発光腺から発光物質を体外に放出して雲状の光を発するので、ぼんやりした光に見えるのです。同じく夏、海面近くの波間でピカピカ光るのは動物プランクトンの夜光虫で、ウミホタルと異なります。
 ウミホタルに刺激を与えないように乾燥させると、ウミホタルの発光物質は長く保存されるので、水を加えるといつでも発光させることが可能です。ウミホタルの光は強いので、たくさんのウミホタルを集めると、その光で本を読むこともできます。
 
ウミホタルのメス
(愛媛県立松山南高校丸尾秀樹教諭提供)
 
発光するウミホタル
(愛媛県立松山南高校丸尾秀樹教諭提供)
 
 この節の参考文献としては
阿部勝巳(1994)『海蛍の光−地球生物学にむけて』 筑摩書房 1,100円
をお薦めします。


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