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図1.4-11 実船搭載における制御システム・インタフェース構成案
 
 
図1.4-12 SMGT2全体構成および放風弁構成図
 
2.1 吸気冷却システムの開発
 SMGT2では大気温度が高い場合においても出力低下が少ない吸気冷却システムを採用することとした。本年度は基本設計及び機器仕様の検討を行った。
 
(1)吸気冷却システムの基本設計
 ガスタービンは、吸気温度が高くなると出力が低下するという特性があるため、機関計画においては、夏場の大気温度が高いときの出力が機関出力となり、舶用主機に多く適用されているディーゼルエンジンに比べてデメリットとなっている。
 そこで、次頁に示すように夏場を想定して大気温度は30℃、また、SMGT2を実際にシステムに組み込む場合を想定して吸気圧力損失、排気圧力損失を考慮した条件でケーススタディを実施した。その結果、SMGT2では吸気冷却により大気温度が30℃の時でもエンジン吸気温度を15℃に下げることで、夏場でも大気温度が15℃の時と同じ出力、効率を得ることができる吸気冷却システムを採用することとした。SMGT2の吸気冷却有無の場合における大気温度による出力および効率の変化を図2.1-1に示す。また、SMGT2の吸気冷却システムは図2.1-2の概略系統図に示すように、吸気式冷凍機によって作られた冷水を吸気冷却器に供給して、エンジンの吸気を冷却するシステムである。
 
(2)実証試験装置のシステム仕様
 平成15年度に基本設計を修正して試験装置のシステム仕様の設計を実施した。システムの特徴を以下に示す。
1)次節の排熱回収システムの研究により、内航船で利用する熱源は蒸気よりも熱媒油が多いことが予想されることから、試験装置の熱源は当初計画の蒸気から熱媒油に変更した。
2)同様に次節の排熱回収システムの研究の基本設計において、熱源は吸気冷却とともに船内のサービス熱源にも利用されているが、信頼性試験では船内サービス熱源として利用できないため、熱源はすべて吸気冷却システムに使用する系統とした。
3)船舶搭載時は主として熱媒エコノマイザによりSMGT2の排ガスを利用して熱媒油を加熱することになるが、船内のサービス熱源に使用する熱媒油量により吸気冷却システムに使用可能な熱媒油量が変化することが予想される。そこで試験装置では熱媒油量の違いや変動によるシステムの性能を検証するため、熱媒油の加熱はボイラにより制御するようにした。
4)吸収式冷凍機の作動に必要な冷却清水は、船舶搭載時は海水冷却により一定温度に保たれるが、試験装置には海水がないため冷却塔により冷却清水温度を制御するようにした。
 図2.1-3に試験装置の概略系統図を示す。
 
(3)機器の詳細設計および製作
 上記のシステム仕様に従って、構成機器の詳細設計および製作を行ってSMGT2試験装置に追加設置した。主な構成機器の仕様を以下に示す。
 
1)吸収式冷凍機
a)形式 一重効用型(舶用仕様)
b)冷凍能力 116USRT(407kW)
c)熱源 熱媒油 120℃ 80ton/h
(熱媒ボイラにより温度制御)
d)冷却清水 入口32℃ 出口36℃ 217ton/h
(冷却塔により温度制御)
e)冷水 入口12℃ 出口7℃ 70ton/h
2)吸気冷却器
a)形式 チューブ式(デミスタ付)
b)伝熱面積 576m2
c)冷水 入口7℃ 出口12℃ 70ton/h
(吸収式冷凍機により温度制御)
d)冷却空気 入口30℃ 出口15℃ 32,200kg/h
3)熱媒ボイラ
a)形式 貫流式
b)熱出力 698kW
c)使用燃料 A重油
 
 図2.1-4に試験装置において平成15年度設置した機器および配管類の配置図を示す。また、主な構成機器の写真を図2.1-5〜図2.1-7に示す。
 
(4)吸気冷却システムの作動確認試験
 平成15年度は、システムを設置し各機器の単体試験を実施後、吸気冷却システム全体の作動確認試験を実施した。その結果、正常に作動することが確認できた。
 
(5)吸気冷却システム性能試験
平成16年度に大気温度が約30℃における定格出力での冷却システムの性能試験を実施した。吸気冷却システム性能を表2.1-1に示す。吸気冷却システムにより、大気温度30.1℃の吸気が14.9℃まで温度低下し、また吸収式冷凍機の性能も設計値を満足して、計画通りの吸気冷却性能を得ることができた。
 
(6)吸気冷却システム作動時のガスタービン性能
 表2.1-2に吸気冷却システム性能計測試験時のガスタービン性能を示す。吸気冷却システム作動時について熱効率及び出力とも設計目標値を満足することができた。出力については、別項1.1(1)にて述べたガスジェネレータタービンのスロート面積変更による性能改善対策を実施した場合、さらなる出力向上が予想される。
 また、吸気冷却による熱効率及び出力の向上を確認することができた。
 
(7)総合エネルギー効率
 本実証システムでは、排熱回収エコノマイザの代わりに冷凍機の熱源として、熱媒ボイラを使用しているため、総合エネルギー効率の評価では、排熱のエネルギーをエコノマイザより回収したと仮定し評価した。
【総合エネルギー効率評価時の仮定】(図2.1-8参照
・排熱回収については、熱出力1530kW級の排ガスエコノマイザ(後述の表2.2-2参照)を適用すると仮定。
・吸収式冷凍機以外の排熱回収した熱出力は船内サービス用に使用すると仮定。
・冷凍機での消費熱量及び機関効率は、吸気冷却性能試験時の実測値を用いる。
 吸気冷却システムの総合エネルギー効率の評価結果を表2.1-3に示す。
 大気温度30℃において、総合熱効率50%以上が達成できる見通しを得ることができた。







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