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2.2 排熱回収システムの研究
(1)基本計画
 再生サイクルを採用しているSMGT2ガスタービンの排気温度は、410℃程度と一般的なシンプルサイクルのガスタービンに比べ100℃程度低いが、ディーゼルエンジンの排気温度に比べれば150℃程度高いため、その排熱エネルギーを有効に利用することで熱効率の向上を図ることができる。そこで、本項では、SMGT2の排熱回収システムとして、蒸気注入やミニコンバインドシステム等の複合サイクルを採用した場合のケーススタディを実施し、機関出力、総合効率、付帯設備を指標とし、SMGT2のシステムとして最適なサイクルを検討する。
 ケーススタディの結果のまとめを表2.2-1に示す。
 ケーススタディの結果としては、出力及び効率からみるとケースCの排熱回収と吸気冷却を組み合わせたシステムが最も優位性があると考えられる。理由としては、他のケースに比べ機関出力は最も高く、また総合効率については、ケースBの排熱回収サイクルに次ぐ高い数値であるとともに目標値(50%)を超えることができるためである。ケースBの排熱回収サイクルは、総合効率では最も高いが、夏場の機関出力および機関効率はかなり低くなり、舶用に適していない。
 よって、SMGT2に採用するシステムとしては、夏場でも機関効率が高く、機関出力が大きく、さらに総合効率も50%を超えることができるケースCの排熱回収と吸気冷却を組み合わせたシステムが最適と思われる。
 
(2)実船搭載用排熱回収システムの検討
 SMGT2の排熱回収システムにおいて、機関出力、総合エネルギー効率、付帯設備を指標とし、SMGT2のシステムとして最適なサイクルを検討した。その結果、排熱回収と吸気冷却を組み合わせたシステムが最適であることがわかった。これらに基づいて、実船に搭載する機器を検討するため、排熱回収システムの具体的なケーススタディを実施した。
 基本計画では、熱源として蒸気を利用するシステムを検討していたが、以下の理由により熱媒油を利用するシステムに変更した。
 
(1)内航船の場合、温水器、造水装置、空調、タンクヒーティング等の熱源としては蒸気よりも熱媒油の方が一般的である。
(2)熱媒油によるシステムは、蒸気によるシステムで手間のかかるドレン処理等がなく、メンテナンスが容易である。
 
 図2.2-1に熱媒油を熱源としたシステムの概略系統図をを示す。排熱回収装置としては、蒸気エコノマイザが熱媒エコノマイザに変更となる。エコノマイザにて180℃まで加熱された熱媒油は、吸収式冷凍機への熱源ラインと船内へのサービス熱源ラインの二つに別れる。なお、吸収式冷凍機の入口温度が120℃と熱媒エコノマイザ出口温度の180℃に比べ低温であるため、吸収式冷凍機の入口ラインに温調三方弁を設置し、出口ラインから一部の熱媒油をバイパスさせる系統となっている。
 図2.2-1では、熱媒エコノマイザの熱出力を蒸気エコノマイザと同等の出力となるシステムとしている。しかし、船舶の用途によっては、重油タンカーのように電力よりも熱出力を多く必要とする場合も想定される。一般的に、大きな熱出力を得ようとすれば、熱媒エコノマイザの寸法および重量が増加する。そこで、熱媒エコノマイザの仕様によって熱出力を変化させた場合における、システム性能のケーススタディを実施した。ケーススタディは以下の4ケースを実施した。
 
【検討ケース】
CASE1: 排熱回収が実用上最大となるケース
CASE2: 熱出力を吸気冷却と船内サービスの両方に使用するケース(総合エネルギー熱効率50%)
CASE3: 熱出力を全て船内のサービスに使用するケース(吸気冷却無しの場合、総合エネルギー熱効率50%以上)
CASE4: 吸収式冷凍機に必要な熱出力だけ回収するケース
 
 なお、熱媒エコノマイザの排ガス条件は以下に示すとおり、大気温度30℃が吸気冷却器によって吸気温度15℃まで低下された時の排ガス条件とした。また、熱媒油の入口温度(船体側からの戻り温度)/出口温度はそれぞれ140℃/180℃とした。
 
【熱媒エコノマイザ排ガス条件】
排ガス温度 :410℃
排ガス流量 :9.58kg/s
熱媒油入口温度 :140℃
熱媒油出口温度 :180℃
 ケーススタディ結果を表2.2-2に示す。この表の総合エネルギー効率(ケース3を除く)は大気温度30℃で吸気冷却を行って、15℃まで吸気温度を下げた場合の機関効率および船内サービスに使用可能な熱出力の合計である。
 
 本研究により、船舶搭載に適した排熱回収システムのケーススタディを実施し、熱出力等のシステム要求に応じた機器の要目を検討することができた。実船搭載時には、本研究をもとに船舶仕様に適した基本計画が実施できる。
 
図2.1-1 吸気冷却による機関出力及び効率の変化
 
【注】吸気圧=1.0332kg/cm2
   吸気圧損=1000mmAq 排気圧損=300mmAq







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