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(3)処理の中心周波数とレーダーの周波数の不一致が応答波形に与える影響の解析
 新マイクロ波標識の処理の中心周波数とレーダー送信波の中心周波数が一致していない場合の、いわゆる「離調」状態が応答波形に与える影響の解析は、前節の単位遅延時間の問題と同様に周波数スペクトラムの領域で検討することができる。
 理想的な条件(離調していない条件)での処理の流れを示した図3-29に対応させて、レーダーの中心周波数と新マイクロ波標識の処理の中心周波数が約5MHz離調している場合の処理の流れを図3-33に示す。同図からわかるように、離調している場合は、入力波のスペクトラム(b)は0Hzが中心とならない。この入力波のスペクトラムは、新マイクロ波標識で行う遅延合成処理の伝達関数スペクトラム(d)の複数本と重なることになる。従って、レーダーからの入力波スペクトラム(b)と新マイクロ波標識の伝達関数スペクトラム(d)の積で与えられる応答波形のスペクトラム(f)も、複数本のスペクトラムとなる。その結果、応答波の時間領域波形は、櫛状の異常応答波形(e)となる。
 ところで、離調の度合いによっては、応答波形のスペクトラムが結果として1本のみ現れ、応答波形が異常とならない場合も存在する。このような例として、10MHz離調している場合の応答波形の生成過程を図3-34に示す。同図からわかるように、この離調条件では伝達関数のスペクトラム(d)が0Hzではなく10MHzのところで入力波形(b)と一致しているため、この結果生成される応答波形(f)も10MHzのスペクトラム1本だけとなる。このような場合には、応答波形の時間波形(e)も異常とはならない。このように、必ずしも離調状態が異常な波形を生成するとは限らず、あくまでレーダー送信波のスペクトラムと新マイクロ波標識の伝達関数スペクトラムの関係によって、応答波形の異常、正常が決定される。
 上記の状態を包括的に表すために、離調の度合いによって応答波形がどのように変化するかを1つの図形に表現したものが図3-35である。横軸は時間軸を表し、縦軸は離調の度合いを示している。例えば、離調がない場合は、縦軸0Hzの部分を横に時間を追ってゆけば応答波形が長線、短点、長線と現れ、正常に符号が出力されることを示している。これは、図3-29に対応している。また、5MHz離調している状態は、縦軸5MHzの部分を横に時間を追ってゆくことでわかり、波形が斑になっている事から、図3-33に示した櫛状の応答波形になる。さらに、10MHz離調した状態は、同様に縦軸10MHzの部分を横に時間を追ってゆき、この場合は離調していない0MHzの場合と同様に正常な応答をしていることがわかる。このように、離調していても必ずしも異常な応答波形にはならず、離調の度合いによって正常な応答波形と異常な応答波形を繰り返す性質がある。
 
図3-33 応答波形の生成過程(5MHz離調)
 
図3-34 応答波形の生成過程(10MHz離調)
 
図3-35 離調の度合いと応答波形の変化
0.1μsのパルス波形を入力した場合
(1):離調なし状態:図3-29(e)に対応(正常応答波形)
(2):5MHz離調状態:図3-33(e)に対応(異常応答波形)
(3):10MHz離調状態:図3-34(e)に対応(正常応答波形)







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