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(3)FM-CWレーダーに対する解析
 このような状況は、周波数領域上で考えれば他の方式においても同様の状況が発生することが容易に推測できる。掃引周波数幅が10MHz(レーダーの距離分解能は時間換算で0.1μs程度)のFM-CWレーダーに対する応答波形の生成過程が図3-31であり、図3-13で示した理想状態と同一である。この例では、新マイクロ波標識への入力波(レーダーの送信波)スペクトラムは、伝達関数の繰り返しスペクトラムより狭く、応答波形(レーダー復調後のビート信号)も理想的なものとなっている。
 ところが、掃引周波数幅が50MHz(レーダーの距離分解能は時間換算で0.02μs程度)のFM-CWレーダーでは、図3-32のように、入力波(レーダーの送信波)のスペクトラムは、伝達関数の繰り返しスペクトラムを複数含むようになり、この結果、応答波形のスペクトラムも理想的な応答の場合と異なり複数本となり、応答符号波形(レーダー復調後のビート信号)も櫛状となってしまう。
 以上のように、単位遅延時間は対応するレーダーが持つ送信波スペクトラム幅の逆数で与えられる時間以下、すなわち概ねレーダーの持つ距離分解能に対応する時間以下となるように設計する必要がある。なお、種々の制約により十分に短い単位遅延を得ることが困難な場合は、フィルタリング処理によってその影響が緩和される。これについては、次節以降で周波数離調の対応と併せて述べる。
 
(4)パルス圧縮レーダーに対する解析
 パルス圧縮レーダーについても、パルスレーダーとFM-CWレーダーの中間的性質を持つと考えることができ、周波数領域でレーダー送信波のスペクトラムがどのような帯域幅を持つかを検討することで、その結果が推定できる。すなわち、圧縮処理後の距離分解能が時間換算で0.1μs以下となるようなパルス圧縮レーダー、言い換えれば送信波のスペクトラムが10MHzを超える帯域を持つような場合は、パルスレーダー及びFM-CWレーダーの例で示したように、伝達関数のスペクトラムを複数本含むことになるため、櫛状の波形になることが推測される。なお、ここでは特にその特性を例示しないが、これらの検討結果についても参考添付資料(2)に記述した。
 
(5)単位遅延時間の設定指針
 以上のように、単位遅延時間の設定は、対応するレーダーが持つ送信波スペクトラム幅の逆数で与えられる時間以下、すなわち概ねレーダーの持つ距離分解能に対応する時間以下となるように設計する必要がある。
 なお、種々の制約により十分に短い単位遅延を得ることが困難な場合は、フィルタリング処理によってその影響が緩和される。これについては、次節以降で周波数離調の対応と併せて述べる。
 
図3-31 応答波形の生成過程(FM-CW理想条件)
 
図3-32 応答波形の生成過程(掃引帯域の広いFM-CW)







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