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(2)単位遅延時間の応答波形への影響解析
 遅延合成方式において、新マイクロ波標識の持つ単位遅延時間とレーダー側の距離分解能が一致していない場合、応答波形が櫛状になるなど応答波形が異常になる場合があることは、3.3(2)節で述べた。ここでは、異常な応答波形が発生するメカニズムと、その対応に関する設計上の留意点について述べる。
 
(1)入力波形のパルス幅と、単位遅延時間が等しい理想的な条件場合の解析
 理想的な応答波形は、先にも示した様に図3-28のようになる。一方、遅延合成処理によって得られる波形は、入力信号をsR(t)、SR(f)、遅延合成処理による伝達関数をhd-code(t)、Hd-code(f)として次式で一般化して表すことができる。
 
 
 これを図示すれば、図3-29のようになる。特に周波数領域に着目すれば、(3-14)式からもわかるように入力波形と伝達関数の積になっているので、図においても、入力波形のスペクトラム(b)と伝達関数のスペクトラム(d)の積によって出力波形のスペクトラム(f)が得られる事がわかる。同図では、出力波形のスペクトラムは図3-28に示した理想的な波形のスペクトラムと同一である。
 
(2)パルスレーダーのパルス幅が、新マイクロ波標識の単位遅延時間より短い場合の解析
 入力パルス幅が、単位遅延時間より短くなった場合の信号の特性を図3-30に示す。同図より、入力パルスが短くなったことで入力波形のスペクトラム(b)は図3-29の場合より広がり、この広がったスペクトラムと伝達関数のスペクトラムの積で得られる出力波形も理想的な出力スペクトラムと異なるものとなっている。この両図の比較から、遅延合成処理の伝達関数のスペクトラムは、単位遅延時間の逆数の周波数間隔で繰り返し現れるが、これが複数本含まれるような広いスペクトラムを持つレーダー波が信号として入力される場合は、出力波形が櫛状になることがわかる。従って、入力波形のスペクトラムは、単位遅延時間の逆数で与えられる周波数より狭い必要がある。時間領域で考えれば、パルスレーダーの送信パルス幅は新マイクロ波標識の単位遅延時間よりも長い必要がある。
 
図3-28  符号「K」の時間領域及び周波数領域での理想特性
(a)時間領域
 
(b)周波数領域
 
図3-29 応答波形の生成過程(理想条件)
 
図3-30 応答波形の生成過程(パルス幅が短い場合)







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