■小田 JC卒業後、先輩たちに口説かれてPTAの会長をやりましたが、PTA自体はそんなに忙しくはないと思います。ただ御津は地縁のつながりが強く、色々な組織のお役がいっぱいきます。スポーツ少年団も学校週休2日制のおかげで、月2回やっています。そのかわり地域でコミュニケーションが取れているおかげで、治安がよいのかなとも思います。
私がPTAの会長をやった小学校の特色として、オーストラリアのメルボルンの小学校と1年おきに交流をしています。愛知県では他に高浜の小学校が行っているらしいです。しかし、公立の学校なのでお金がない、また先生の休みをどうするかという問題から止めようという話になりました。ただ、それを決めたのが職員会議だというので、それはおかしいと思い、親に協力できるのかを聞いて国際交流の会というのを作りました。その時にわかったことは、校長先生の責任は大きいが権限は小さいということです。オーストラリアの学校では校長先生は経営者であり、責任も大きいが権限も大きいんです。
■大島 中野市長になってから、コンペで学校整備のお金をもらうことができるようになったわけですが、そういう点では豊川は進んでいるようです。
では次に、活性化の具体策についてお聞きしたいと思いますが、その前に今日参加されている方の中でPTAの役員を経験された方がいますので、そのときのお話を聞いてみたいと思います。星川さんお願いします。
■星川 井上校長先生のもと小学校のPTA会長をさせていただきました。平成12年の東海北陸大会が豊川で行われたときで、市P連の副会長も同時にしておりました。大会では学校・家庭・地域の連携というパネルディスカッションも行なわれましたが、内容はいま一つよくわかりませんでした。しかし、「どうせやるならなにかやろまい。」ということで、みのりの会という米づくりを子供たちに教える会ができました。PTAはお母さんが多く、女性の会というイメージがありますが、男性も参加しやすい環境をつくってやればいいのかなと思います。最近では学芸会や運動会に多くのお父さんが来ますので。
■大島 校長先生のアイデアを地域の人が応援するというときに、どういう組織を作ればよいのでしょう。おやじの会がそういうものになる可能性はないのでしょうか?
■森久 おやじの会は大反対です。この地域に作るべきではないと思っています。
岐阜の方で民間の校長先生が悩んでいるという話を聞きました。新しい校長がやりたいことを地域の市会議員が分かってくれないらしいのです。でも、反対をする市会議員もえらいと思いました。どうして反対なのかそこで議論になりますよね。議論が始まったときにまちが動くのです。校長のやりたいことを応援する組織をPTAを中心につくることが大事です。校長がまちを変えると言い出すことによって、地域の方の学校の先生方を見る目が変わると思います。
■井上 学校のまわりにも色々な組織がありますが、PTAはマンネリ化していますし、青少年健全育成にいたってはあってないに等しいような状態です。
以前地域の方から「学校のパソコンを夜使ってもいいか。」という話がでました。地域の人を対象にパソコン教室を行うということでした。地域の有志が集まって始めたのですが、案内を出す時に問題が起こったのです。なんでもかんでも回覧板に入れることはできないと。結局は地域の生涯学習の一環ということで納得してもらいましたが、地域のコミュニケーションができてくると学校に対する理解が生まれるような気がします。
学校の日があった土曜日の午後、地域の人たちが子供たちに色々なことを教えたいということで、老人会にも協力を要請したのですが、依頼文に校長名前があれば人は出せると言われたそうです。結局80人以上の地域の人が講師として来てくれました。学校があり、子供がいるから応援してやろう、ということになるのだと思います。そういう意味では学校がまちづくりの拠点になることは可能だし、まちを活性化させるきっかけになると思います。
■大島 蒲田さん、PTA以外の組織でうまくやっているところはありますか?また、忙しい人が集まるためのポイントはどんなところでしょう?
■蒲田 その前に井上先生にお聞きしたいのですが、パソコンクラブと子供たちとの接点はあるのでしょうか?
■井上 PTAのお母さんから夏休みにパソコンクラブの人たちに子供たちを教えてもらえないかという話が出て、やってもらいました。これからは昼間にも行って、子供たちも参加できるようなことを考えているようです。
■蒲田 今の若いお父さんたちは自分が楽しくなければ絶対に来ない、でも一旦義務的でもいいから来ると真剣にやるんですね。ある小学校でどうしたらお父さんたちが一緒にできるか考えたところ、パソコン教室をやって自分たちで勉強しようということになったんです。そうしたら、お母さんも教えて欲しい、先生もというようにどんどんふくらんでいった例があります。井上先生の話を聞いてすごいと思ったのは、老人会に頼みに行くのに校長のハンコが効いたということです。NPOでも町内会長に何度も案内を出したり、報告書を出したりして認めてもらうようにしているところがあります。そういうところとうまくやらないとやっていけないんですね。
今の子供たちはめちゃめちゃに忙しいので、なかなか集めるのは難しいです。ITとか子供たちの関心があることなどがいいのではないですか。
■井上 実は桜町小学校では、インターネットが見れるようにパソコンクラブの人が配線をしてくれたんです。かかったのは材料費だけです。それくらいやってくれましたよ。
■蒲田 なんかやった後で子供たちの笑顔を見せつけられたらそれで大満足なんだけど、それで終わりじゃなくて飲み会に行って「あれがよかった。」とか言って盛り上がると「次はこんなことやろうか。」というかたちで繋がっていくのではないかと思います。
■森久 それがなぜおやじの会で、PTAではいけないのか教えてください。
■蒲田 東京ではPTAは極めて形骸化しています。男性の方が無理やり頼まれて会長をやって、女性がほとんど動かしています。男性の参加が全くないんです。それではまずいだろうということで生まれたのがおやじの会で、自由な組織です。PTAと対立するわけではなく、補完するような感じなんです。
■森久 意図することは一緒だから、PTAという組織の中で、もっと自由な発想でフランクに人を集める組織としておやじの会ができれば一番いいですよね。組織としてPTAに参加できなくても、このイベントには参加するというような動きができれば素晴らしいと思います。
■蒲田 我々が考えていることもまさにそういうことです。
■森久 教科書問題審議会が20年も前のルールをいまだに守っているという世界だという話をしましたが、PTAがまさしくそれなんです。単年度でみんな変わってしまうので、先生方の作った予定表の下に1年間を過ごすと終わってしまいます。せっかくこれだけのメンバーがいるのに、学校を変える力になっていません。「そんなルール変えればいいじゃん。」という発想で動いてないのが豊川のPTAだと思います。もっと変えてフランクな組織にしてしまって、年に1回参加するのでもいいってやれば・・・。
■大島 今、森久さんからテーマをいただきましたが、PTAの任期を複数年にすればもっと動きやすいのかという点についてはどうですか。
■小田 PTAは先生の言いなりになってやってもやらなくてもそんなに大変ではないです。御津では毎年バザーをやるんですが、なんでやるのと聞いたら毎年やっているからと言うんです。本当は学校にお金がないからなんです。だから自分のときは金儲けのためにやるとはっきり言いました。でもバザーも毎年恒例化すると地域の人がちゃんと砂糖とか醤油をとっておいてくれる。準備は大変でしたが、PTAのコミュニケーションもとれました。
■大島 学校側はPTAがあまり活発に動き出すと困るというようなことはあるのですか?
■井上 PTAの活動について、学校がこういう風にやれと路線を引いているわけではありません。何にもないところでやるのは時間も労力もかかるので、参考として計画案を出しています。決してこの通りにやれという学校はないと思います。
■森久 PTAの会長をやった人からは、計画がもうできているじゃないかということを聞きます。なぜ僕がそれを言わないかというと、2年以上やっているからです。来年の計画は自分で作るんです。「一緒になってやるから何かない?」といえばネタを若い先生が持ってきます。JCは何年かやった後の単年度ですが、PTAはいきなり単年度です。みんなやった後でやらされたといいます。面白くないに決まっています。やらされていてはやはり面白くないのです。「学校を変えちゃいましょう。子供と一緒に同じ体験しましょう。」というような組織をPTAの中に作っていかないと。
■蒲田 校長先生はお金の面では権限はないけれども、学校経営の面ではすごい権限があります。ある学校でおやじの会が活発に活動していたのですが、新しい校長先生の方針で活動を縮小することになったんです。おやじの会は納得したんですが、子供たちが「今年はやらないの。」というので、うまく折り合いをつけようと教頭先生が苦労しているという例もあります。
■森久 元気のある校長とそうでない校長がいます。悲しいかなそうではない校長が半分以上います。僕の退職と刺し違いに若い校長をつくれと言っています。実は法の上では校長の権限は、非常に幅広いものがあるんです。それを行使しようという元気のある校長が少ないのです。校長が決めてくれれば変わるんです。
■大島 若い校長とおっしゃいますが世代でそんなに違うものですか?
■森久 校長は終わった後に、色々世の中に仕事があるんです。最終年度の校長はその後のこともあるのでおとなしい。ですから教員としての年数が残っている人に、早く校長になっていただきたいと思っています。
■蒲田 伝統校の校長先生は上がりのポストなのです。また定年まで1、2年という先生に何か新しいことを始めようというのも気の毒ですよね。そんなリスク負わせるわけにはいきませんから。だから新設校へ行って働きかけています。
■森久 校長先生の元気は応援して、あんまり早くクビにならないようにしたいと思っています。それくらいのことをまちが声を出して言わないといけないんです。まちが応援したいという校長も、まちが応援できないという校長もいると思います。その辺の優劣をはっきりつけましょうよという話をしているつもりです。
■大島 会場の方から質問があればどうぞ。
■後藤 まちづくりをひとづくりととらえると学校だけではなく、地域・家庭を含めて考えなくてはならないと思います。最近の子供たちは、社会力が欠けているといわれていますが、人と相互にかかわっていく力が足りないのです。立場を超えて世代を超えての交流ということで、おやじの会とかが必要だということはわかります。しかし、学校の中がどうとかいう話に縛られてしまうと、議論が違うのではないかと思います。
■森久 そこに人が集まってくる、集まってくる人の教育者は校長先生なんです。そういう人たちが学校づくりに参加する、そういう行動がひいてはまちづくりになるといっているのです。だから学校に多くの人を集めましょうということなのです。集まってきた人が子供と接することが、集まってきた人の勉強になってそれ自体がまちづくりになると思っています。おやじの会やPTAがより多くの気概がある人を、継続的に学校に集めることで間違いなくまちが変わるという話です。
■後藤 誰がそれをコーディネートするのですか?
■森久 それが校長先生だと言っているんです。教員も父兄も地域の人も校長だけが誰も反対しないんです。難しい話題をあえて言っているのですが。
■後藤 いつも森久さんがおっしゃっているまちの応援団ということですね。
■蒲田 先生たちは教育のプロです。我々のいいところをうまく活用してもらえればいいと思います。
■大島 最後に一言ずつお願いします。
■小田 保護者の立場から申しますと、校長先生は威厳があり、シンボリックな存在で、コーディネートもできる存在だと思いますが、その校長を保護者が選べるような社会のしくみがあればと思います。
■蒲田 いろいろな県の教育委員会に行っていますが、あるところで「地域との関係をうまくやっていける先生を校長先生にしてください。」とお願いしたら「それはもうやっています。」「地域とうまくやって行く、そういう能力のない先生は校長になっても成功しないし、そういう人を校長にすることはありません。」と人事課長がおっしゃったんです。ぜひ学校をまちづくりのひとつの拠点にしていただきたいと思います。
■井上 校長の立場で言うのは非常に難しいんですが、校長は教育出身ではなく、一般社会人からもつくろうという社会の流れがあります。そういう世の中の流れは何かということは、校長として考えざるを得ないと率直に思っています。学校は色々なことをしていますので、地域とのつながりだけに目を向けていくこと難しいと思います。しかし、子供は地域の中で育っていく、地域の元気がなかったら子供も元気がないだろうと思っています。ですから、学校が何らかのかたちで地域と連携をとりながら、子供たちを教育していくという立場をとらなければならないと考えています。
■森久 校長先生はまちを変える力が現実にはあるんです。もっと学校に参加をしていただいて、校長を支えいただくことが地域の力だと思います。多くのまちの人たちが集っている校長に力があるに決まっているということです。学校に人が集まってくる、おやじが集まってくるというシステムを、気持ちよく集まるという学校の中のお祭りをみんなで作り上げて頂きたいと思います。
■大島 本日の「学校をまちづくりの拠点にしよう!」ですが、いきなり学校からまちづくりに話しが飛んでいるんですが、最後に森久さんにまとめてもらったように、地域が応援して盛り上げていって欲しいと思います。
報告者:大島 嗣雄、大村 幸司(穂の国まちづくりネットワーク)
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