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1995/10/18 産経新聞朝刊
【混迷と模索】国連50周年(2)安保理改革 「特権」めぐり思惑交錯
 
 国連の五十周年記念特別総会には、世界中から百六人の国家元首と五人の副大統領、五十六人の首相が出席を予定している。しかし、これほど多数のVIP(要人)が集まって何を話し合うのか、実はそのことはあまり話題になっていない。二国間の首脳会談など特別総会の外側の動きはともかく、特別総会そのものについていえば、実体はほとんどない。
 要人たちの総会演説は人数があまりにも多いことから、一人五分以内の時間制限が付けられている。また五分間で「あれもこれも」と総花的な話はできないので、それぞれが「どうしてもこれだけは言っておきたい」というテーマに内容を絞ることになる。ただ、それら要人たちの演説によって、何か決定的なことが決まるわけではない。
 最終日の二十四日には政治宣言が採択される見通しだが、それも「あった方が好ましい」という程度のものといってもいいだろう。
 特別総会に向けて準備されている宣言案は「創設以来五十年たった国連は冷戦後の今日もなお、その役割は重要である」と国連の存在意義を強調し、とくに安全保障理事会について、拡大の必要性を加盟国全体の総意として明言している点にあえて意義があると指摘されている。
 しかし、世界の指導者がわざわざニューヨークに集まって「国連の役割はもう重要ではない」と宣言するはずはないし、安保理の拡大にしても、国連取材での印象では「いまさら」の感が強い。外交官やジャーナリストが無理やり意味をこじつけない限り、中身のある宣言とはいい難いようだ。
 もともと国連で安保理改革の議論が大きなテーマとして浮上したのは、冷戦が終結し、世界の平和と安全保障の面で国連の役割に対する期待感が強まった時期に、途上国から「現在の安保理の構成は国連加盟国の現実を正しく反映していない」との声が上がり、理事国を増やして途上国の意見をもっと反映させるよう求めたからだ。
 一九四五年に国連が発足した当時、安保理は米国、英国、フランス、ソ連、中華民国の常任理事国五カ国と二年任期で交代する非常任理事国六カ国の計十一カ国で構成されていた。六六年に非常任理事国が十カ国に増え、現在は常任五、非常任十の十五カ国となっている。
 一方、国連加盟国は四五年には五十一カ国だったのが、現在は百八十五カ国と三・六倍に増えている。
 四五年当時は加盟国四・六カ国に一カ国が安保理の理事国だったが、いまは一二・三カ国に一カ国。常任理事国で見ると最初は一〇・二カ国に一カ国だったのが、現在は三十七カ国に一カ国。単純に加盟国数との比較でいうと、国連が第二次大戦の戦後体制だったことの象徴ともいうべき安保理常任理事国の存在はこの五十年間に三・六倍も重くなり、逆に他の加盟国の発言力はその分だけ軽くなった計算になる。
 安保理改革については過去二年間、総会直属の作業部会で検討してきたが、結論はいまだに出ていない。「これは」という案に全体がまとまるところまで行っていないからだ。
 この五十年間に常任理事国の特権的な地位をいやというほど見せつけられてきた他の加盟国が、国連の第二の出発点ともいうべき冷戦後の改革論議の中で、それぞれの主張を譲ろうとしない姿勢をとったとしても、それは十分、理解できる。ここで好位置を占めなければ、今後五十年にわたって割を食うことになるかもしれないからだ。
 その意味では結論が出るのはまだ当分、先の話になりそうだが、「状況が変わり、動き出せば早い」との見方もある。この場合の状況は「米国の意思」と言い換えることもできそうだ。今年五月に核拡散防止条約(NPT)の無期限延長が決まったのは「どうしても無期限延長が必要」と判断した米国が会議の前から精力的に票固めに動いたためといわれる。
 安保理改革がまとまるかどうかは同じような意思を米国が再び持つ時期がくるかどうかにかかっているというわけだ。それが米国の国連離れの気分とも密接に関係しているとすれば、来年秋の米国の大統領選挙が冷戦後の新たな出発を模索する国連にとっても重要な意味を持つことになる。
 
 
 
 
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