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1995/10/17 産経新聞朝刊
【混迷と模索】国連50周年(1)米国の心変わり 期待失せ分担金に不満
 
 第二次大戦終了間際の一九四五年、今度こそ世界に平和をと求める声の下で国際連合が創設されてから半世紀。国連はいま節目を迎えている。二十二日から三日間開催の特別総会には、百カ国を超す国家元首などが出席予定の盛況ぶり。だが、東西冷戦終結とともに各地で噴き出した民族紛争解決に対する国連平和維持活動(PKO)の限界など、紛争停止活動にも新たな阻害要因が浮上してきた。肥大する組織、常任理事国枠の拡大など、内部改革問題も山積している。
(ニューヨーク 宮田一雄)
 大戦後の体制として発足した国際連合は、米ソの冷戦のもとでは、安全保障に関する限り「無力な組織」とみられてきた。冷戦終結で一時、世界は「国連の時代」などと期待したが、国連本部を取材する限り、最近は再び無力感が広がっているように感じる。
 それは一つにはソマリアや旧ユーゴスラビアで試そうとした力のPKOが結局はうまくいかず、国連が冷戦後の紛争解決能力に自信を失っているためだとされている。しかし、それよりも、もっと大きな原因は唯一の超大国として残った米国の心変わりである。米国は冷戦後、国連を中心にした世界秩序を重視する姿勢を打ち出したが、この一年余りの間に、そうした雰囲気は完全に消えた。
 オルブライト米国連大使は先月二十二日、会見で第五十回国連通常総会に臨む米国の姿勢を明らかにした。中身は国連予算を名目でゼロ成長以下に抑えることなどを求めた国連事務局への行革十項目提案だった。
 三日後の二十五日にはクリストファー国務長官が総会一般演説で「ニューヨークやジュネーブで金が浪費され、官僚仕事で時間が失われているとき、代償を払うのは飢餓や病気や暴力にさらされている人たちである」と語った。国連が何もしないで金ばかり使っているから、世界は苦しんでいるというレトリックだ。
 行革はもちろん必要ではあるが、五十周年という節目の総会で唯一の超大国がまなじりを決して取り上げるテーマとしてはちょっと寂しい。米議会は、米国が三一%を負担していた国連PKO特別予算を今後は通常予算同様二五%しか払わないと決めた。行革の強調は、国連にはもう金を使いたくないという米国民の気分を察知したクリントン米政権の言い訳と国内向け発言だとみられている。
 ブトロス・ガリ国連事務総長は今月四日、第五十回通常総会の第五委員会に九六、九七年通常予算案を提出した。国連の通常予算は二年単位で組まれており、来年と再来年の予算案の総額は二十六億九千万ドル(約二千六百九十億円)。この額は九四、九五年の二年間と比較すると実質でほぼ四%減。インフレ率を含めた名目では三%増になる。
 国連の予算削減には全体の六七%を占める人件費の削減が必要だが、職員の給与は国際人事委員会勧告に従って上げなければならない。そうしなければ「優秀な人材が国連を敬遠し、結局、国連は無力化する」(国連外交筋)という。残された手段は人を減らすことで、予算案によると、事務局定員は現行の一万百十五人から一万六人に減っている。内訳はポストの廃止が二百一、紛争予防や平和維持機能の強化などのための新設が六十六、PKO特別予算のポストの通常予算への移設が二十六で、差し引き百九人の減少になる。
 米国の要求通り名目でもマイナスを達成するには人員をさらに減らし、プログラムの一部を廃止する必要が出てくるが、他の加盟国からは米国が国連の無駄遣いばかりを強調することには反発も強まっている。
 ドアマラル総会議長(ポルトガル)は就任演説で国連通常予算が人口一千万のポルトガルの教育予算(年間五十億ドル)の二五%にすぎないことを指摘し「国連が指摘されているほど金食い虫かどうかは現実的に考える必要がある」と語った。第五委員会ではカナダ、オーストラリア、ニュージーランドを代表してカナダが「国連バッシングにはうんざりしている。とくにそれが払うべきものを払っていない国によって行われると怒りを覚える」と述べ、国名こそあげなかったが、分担金滞納の常習犯である米国を非難したほどだ。
 もっとも通常予算の二五%とPKO予算の三一%を払ってきた米国が「そんなに出したくない」と言い出したことには、反発の半面で「一つの国の負担が大きすぎるのは好ましくない」との同情論もある。分担金は国民一人あたり国民総生産(GNP)を基準に修正を加えて決められるため、同じ安保理の常任理事国として特権的な発言力を保持する中国などは〇・七四%しか負担せずに涼しい顔をしている現実も一方にあるからだ。
 
 
 
 
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