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1999/09/20 読売新聞朝刊
[社説]日本の役割が大きい国連強化
 
 第五十四回国連総会の課題は、各国首脳が参加する来年のミレニアム(千年紀)総会で二十一世紀の国連像を提示するため、国連改革に道筋をつけることだ。
 高村外相は二十一日に総会で演説する。日本は、外相演説と今後の討議を通じて、安全保障理事会や財政、途上国開発など様々な分野での国連改革の構想と指針を積極的に発信するべきだ。
 米ソ冷戦下では、安保理が必ずしも円滑に機能せず、国連は、国際社会の平和と安全の維持という目的を十分果たしたとは言えない。が、冷戦構造が崩れた後、世界の平和と繁栄に対する国連の役割の重要性がクローズアップされている。
 しかし、米国主導の北大西洋条約機構(NATO)軍が安保理の決議もないままユーゴ空爆に踏み切ったことで、国連の信頼性が大きく揺らいだ。冷戦終結から十年を経て、国連は一つの曲がり角にあると言えるだろう。
 とはいえ、米国だけで世界の平和を維持出来るわけでもない。グローバル化が進展し、相互依存関係が進んでいる時、国際社会の協調なしには、紛争処理をはじめ、平和の維持は困難になっている。
 長期的に見て、国連の役割は一層増大するはずだ。国連への信頼回復という観点からも、改めて、国連の改革と機能強化の必要性が示されたと言っていい。
 国連改革の最も重要な柱である安保理改革の論点は、常任理事国も含め理事国の数を増やすことや、拒否権の取り扱い、新常任理事国の選び方に絞られている。
 世界第二位の経済力を持つ日本は、常任理事国入りすれば、世界の平和と繁栄のために一層の貢献ができるはずだ。
 アジア・太平洋地域での紛争処理などに国連が関与する場合、米中露が常任理事国であるのに日本だけ十分な発言権がないのでは、日本の国益上もマイナスだ。
 安保理が平和維持のための中核機構であることを考えれば、安保理改革を急がなければならない。各国の利害が絡み、合意は容易ではないが、ミレニアム総会に向けて方向性を見いだすよう、日本も各国の調整と説得に力を尽くすべきだ。
 折から、安保理が決めた多国籍軍の東ティモールへの派遣は、国連の一員としての日本の役割と責任について問題提起したと言えるのではないか。
 政府は、武力行使を任務とする多国籍軍への「参加」は出来ないが、武力行使と一体とならない「協力」は憲法上禁止されているわけではないとしている。
 国連平和維持軍(PKF)本体への参加凍結の解除を急ぐとともに、多国籍軍について、どんな「協力」が可能か、具体的な論議が必要だ。
 日本の国連分担金は二〇〇〇年には全体の20%を超え、米国を除いた常任理事国四か国の合計13.7%を大きく上回る。
 これだけの負担をしている日本として、国連の活動が日本にとって望ましい方向に進むよう、国連改革に積極的に関与していくことが大事だ。
 
 
 
 
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