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2000/09/17 読売新聞朝刊
[政治を読む]国連改革 先見えぬ常任理入り
 
 ニューヨーク・メッツの本拠地シェイ球場で八日夜、米大リーグ公式戦の始球式でストライクを投じた森首相は意気盛んだった。二〇〇一の背番号には「二〇〇一年にも日本の国連安保理常任理事国入り」への思いが込められ、それはミレニアムサミットを舞台にした初めての国連外交への手ごたえにも裏付けられていた。
 サミットに臨む日本の戦略は、〈1〉森首相による七日の演説では日本の常任理事国入りに言及せず、安保理議席の拡大を唱える〈2〉加盟各国にも同一歩調で改革の必要性を訴えてもらう――ことに狙いを定めていた。その布石として、首相は今年七月中旬、百六十か国以上の国連加盟国に対し、親書を送っていた。
 熱意が実を結んだのかもしれない。ミレニアムサミットでは、安保理改革の必要性に言及した加盟国首脳は、演説した百八十五か国中九十九か国と半数を超え、日本の常任理事国入りを直接支持した国もオーストラリアやハンガリー、カンボジアなど七か国にのぼった。首相に同行した政府関係者は、演説時間が五分に限られていたことを考慮すれば、「支持表明は画期的なこと」と大歓迎した。
 十四日付の米「ワシントン・ポスト」紙も森首相の外交手腕について、「一歩一歩安保理の議席増を図る日本の新たなキャンペーンは目に見える成果を上げた」と評価した。
 だが、九三年十二月の国連総会決議に基づきスタートした国連改革論議は、当初に比べて熱気が冷めつつある。日本の悲願である常任理事国入りも見通しが立っていないのが実情だ。
 日本は九二年九月、渡辺美智雄外相(当時)が国連総会演説で、いち早く国連改革の必要性を強調して以来、〈1〉メンバー国の見直しや運営方法の改善を含む安保理改革〈2〉開発推進体制の合理化〈3〉分担金の滞納解消など財政問題の解決――の三点を提唱し続けてきた。
 多くの加盟国が改革を求めていることは明らかになった。しかし、約七年経過しても、具体的には何一つ決まっていない。仮に安保理の常任、非常任理事国の議席増で合意しても、次に〈1〉現行の理事国枠をどれだけ拡大するか〈2〉どの国を安保理に加えるか〈3〉それをどう決定するか――など課題が多い。
 安保理改革を実現するためには、国連憲章の改正も必要だ。改正は「総会構成国の三分の二の多数で採決され、かつ、すべての常任理事国を含む加盟国の三分の二が批准した時、加盟国に効力を発する」との規定があり、手続きは困難を極める。
 一方、国連改革に不可欠な現常任理事国の支持も固め切れていない。米英仏露の四か国は日本を支持しているが、中国の唐家セン外相は十三日、ニューヨークでの河野外相との会談で、「安保理改革にはさまざまな議論がある」と指摘し、日本の常任理事国入りに対し、慎重な姿勢に終始している。
 河野外相は十三日の国連演説で、国連改革をめぐる議論について、早期のとりまとめを求めたが、それさえ見通しが立っていない。
 安保理改革が実現すると、一九六五年に非常任理事国を四か国増やして以来のことになる。第二次世界大戦の敗戦国が安保理常任理事国になるという意味では、それ以上に画期的な改革となる。しかし、まだ先は見えてこない。
(早乙女大)
 
 
 
 
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