1993/07/07 読売新聞朝刊
[社説]常任理事国の重責を担うには
政府は六日の閣議で、国連安保理改組問題に関するわが国の意見書を了承した。直ちに国連事務総長に提出する。
意見書は「世界の平和と安定のために貢献する意思と相応の能力を有する国を積極的に活用することが重要だ。わが国として、安保理で、なし得る限りの責任を果たす用意がある」と述べている。
日本が、安保理常任理事国入りの意欲を間接的に表明したことになる。わが国が、国際社会で占める政治的、経済的力に見合った責任を、国連の場でも担おうとする姿勢は正しい。日本外交の理念である国連中心主義にも沿う。
冷戦が終わった世界で、国連の役割の重要性が高まった。矢継ぎ早の平和維持活動(PKO)の展開など、世界の平和と安定に中心的役割を果たすようになった。
しかし国連は、世界が変容したにもかかわらず、創設当時の古い体制を引きずっている。前大戦の戦勝国である米・英・仏・中・ロ(ソ連議席を継承)のみを常任理事国とする安保理の構成はその典型だ。
国連憲章は、安保理に、国際の平和と安全の維持に関する主要な責任を負わせている。経済大国として再生し、世界の主要国となった日独を、常任理事国にすべきだとの意見は、近年強まっていた。
日独が国連の責任ある地位につき、ふさわしい貢献をしてもらいたい、という考えだ。日本は、国際社会から望まれるなら、引き受けるべきだ。
米政府は、国連事務総長に提出済みの意見書で、日独の常任理事国入りを明確に支持した。ドイツの意見書は、「常任理事国に伴う責任を果たす用意がある」と、積極的な言い回しで意欲を示した。
ただ、日独だけの常任理事国入りには賛成しない国もあり、この問題で国際社会が結論を得るには時間がかかろう。わが国の常任理事国入りは、あくまで国際社会全体の賛同を得るものであってほしい。
日本が安保理の常任理事国の座をめざすには、国内で克服すべき課題がある。
国連平和維持活動(PKO)への協力、なかんずく自衛隊の参加についてはなお反対論がある。憲法の禁じる海外での武力行使につながる恐れがある、という一部野党の主張にも配慮して、平和維持軍(PKF)の本体業務への参加は凍結中だ。
国際の平和と安全確保のために加盟国に兵員の提供を含む貢献を求める国連憲章と憲法との関係が明確に交通整理できていないためだ。
国連の平和機能に、きわめて限定した形でしか協力できないということであれば、常任理事国になっても、不都合が生じるのではないか。将来、国連憲章に基づいて国連軍が創設された場合、現行憲法で参加できるのか、できないのか――。
憲法の見直しを含め、議論を積み重ねて国際貢献の遂行に混乱が生じないようにすべきだ。政府は、国連創設五十周年に当たる二年後の常任理事国入りをめざすという。重くなる責任を十分自覚したうえでの目標でなければならない。
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