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1993/03/03 読売新聞朝刊
国連はでたらめだ 人事も予算もムダ遣い 前次長が総括文書で“告発”
 
 【ニューヨーク1日=山岡邦彦】「ほとんど仕事をしない“無用な人”が多過ぎるかわりに、少数の有能なスタッフの請け負う仕事が多過ぎ、仕事の生産性が上がらない」――国連の行政管理担当事務次長を今月一日付で退職したリチャード・ソーンバーグ元米司法長官が、国連の行財政の実態を手厳しく内部批判した報告をまとめ、国連内に大きな反響を呼んでいる。ソーンバーグ氏は、ブッシュ前米政権時代に事務次長職に就き、丸一年間の在職中の総括を、ブトロス・ガリ事務総長あて報告として一日に発表した。国連が抱える問題点を詳述した報告は、歯にきぬ着せぬ国連官僚制批判を展開している。
 報告によると、国連職員の新規採用のやりかたは、「行きあたりばったりで、時間がかかり過ぎ」。昇進システムはでたらめで、結局、「無用の人」がはびこり、スタッフのやる気を失わせている。「ほとんど全員(九〇%)にプラス評価を与えるインフレ査定で、際立った仕事への正当な報奨も、標準以下の仕事に対する制裁も行われない」のが実態という。
 「時代遅れで無駄遣い」も国連行政の特徴の一つ。実例としてソーンバーグ氏が挙げたのは、会議通訳を聞き取り、タイプするタイピスト約五百人の存在。「これからは、ワードプロセッサーを使える通訳を育てていくべきだ」と指摘し、ワープロ導入による経費削減を年間少なくとも二千万ドルと見込んでいる。
 また、ガリ事務総長が国連改革の一環として、不要のポストで高給をもらっていた高級職員の二五%減員を打ち出したことを評価する一方、昨年十一月、事務次長ポストを三つ増やしたことを、「縄張り争いのもとを作った」として批判している。
 年間十億ドルに達する国連通常予算についても、「総会で、重箱の隅をつつくような議論」が続けられていると批判し、また激動する世界情勢の中で、「六年間の中期計画は不要」とばっさり。外貨交換取引の運用などで年間千二百万から千五百万ドルが節約可能としたほか、フォード財団が二月二十三日に発表した国連財政改善に関する勧告を履行するよう提言している。
 とくに、一万四千人が働き、各国の拠出金でまかなわれる国連で、きちんとした会計監査が行われていない点について、ソーンバーグ氏は「ペンシルベニア州知事として、また米司法長官としての」体験から、国連にも監査総監室を設け、あわせて会計基準の設立、職員管理規約の修正、査定の見直し、国連内の異議申し立て手続きの簡素化などを実施するよう勧告している。
 国連スポークスマンは「事務総長は、ソーンバーグ氏からこのような報告を初めて受け取った」と、戸惑いを隠せないでいる。
 
 
 
 
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