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1992/12/25 読売新聞朝刊
日本、「国連常任理」入りの機会 非同盟、地域均衡求める声(解説)
 
 第四十七回国連総会は二十三日、積み残しの決議案処理を終え、休会に入った。平和維持機能強化とともに二大課題の一つだった機構改革では、安全保障理事会の改組に向けて論議開始の総会決議が採択された。
(ニューヨーク支局 山岡 邦彦)
◆人道援助、難民・・・積極姿勢を
 国連総会はさる十一日、安保理の構成見直しを求める決議を、全会一致で採択した。各国は来年六月までに、「安保理議席の衡平配分と拡大」に関する見解を事務総長に提出し、事務総長はこれをまとめて来年の国連総会で報告することになっている。
 これで国連創設五十周年(一九九五年)に常任理事国入り、という日本の目標実現の可能性が高まってきた。
 まず、安保理改組を求める声が、国連で多数を占める非同盟諸国の間から強く出ていることだ。改組に必要な国連憲章改正は、国連加盟国の三分の二以上の多数で勧告が採択され、かつ安保理の五常任理事国を含む加盟国の三分の二が批准した時に発効するから、非同盟の要求は大きな力となる。事実、今回決議案のイニシアチブは、インドなど非同盟諸国がとった。
 非常任理を四議席増とした前回(一九六三年)の安保理改組は、独立ラッシュのアフリカ諸国が相次いで国連に加盟した結果、加盟国が国連創設時(四五年)の五十二か国から百十三か国へ倍増した背景下で実現したものだ。
 現在の加盟国は百七十九か国(旧ユーゴの議席は空白)。三十年前に比べるとさらに六割も増えた。決議で加盟国を拘束する安保理の構成メンバーは、今や、全加盟国の八%に過ぎない。各国の不満は、安保理の議席配分が、地域的バランスを欠いている点にある。アジア、アフリカ、中南米百二十八か国からは、常任一(中国)と非常任理が七か国。これに対し欧米は、三十四か国から常任四、非常任三か国だ。
 日本の経済力も、国連活動への貢献では注目されている。ブトロス・ガリ事務総長は最新のソマリア報告の中で、多国籍軍への資金協力の受け皿となるソマリア基金設立に果たした日本の役割を高く評価したばかりだ。基金への一億ドル提供は群を抜いている。「英仏独で回り持ちの欧州共同体(EC)議席となれば、常任理に日本が入る余地が出来るかもしれない。日独が安保理にいれば、資金面での一層の貢献をするかもしれない」(十二月八日付ニューヨーク・タイムズ紙社説)という論調も現れた。
 だが、常任理の義務と責任は経済力だけではない。また、国連平和維持活動(PKO)への貢献だけでもない。
 「最近の安保理では、人道援助問題や人権、難民に関心が高まっている。PKOもそういう問題を解決するための一つの手段として利用される例が増えている。欧米はこうした国連の中心課題に積極的に取り組んでいる」と、波多野敬雄国連大使は指摘する。日本国内では、PKOに比べると関心が低い分野だが、ソマリアやボスニア・ヘルツェゴビナの例を見るまでもなく、人道援助や人権、難民問題は、世界の平和と安全と今や不可分の関係にあると認識されている。日本は人道援助でも即時対応体制が整っているとは言い難い。常任理入りに関する日本の資格が、経済力だけでうんぬんされるのなら、あまりにも寂しい。
 
 
 
 
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