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1995/10/16 毎日新聞朝刊
[国連50年]期待と限界/1 過渡期迎え、改革急務−−「冷戦後」の役割を手探り
◇国内型紛争に対処できず
 世界百五十カ国余の元首・政府代表が一堂に会し、国連創立五十周年を記念する特別総会が二十二日から開かれる。戦後の混とんから東西対立、アジア・アフリカ諸国の独立、そして冷戦終結を経て、百八十五カ国が加盟するグローバル機関となった国連の現状と各国の見方を報告する。
 「今の国連はカオスとは言えないが、大きな過渡期を迎えている」と小和田恒・国連大使は言う。
 一九四五年六月、国際平和と安全保障にかかわる理想を掲げた国連憲章がサンフランシスコで調印されてから半世紀。旧ユーゴスラビアの平和維持活動(PKO)や、発展途上国の社会経済開発問題で、国連は指針を失ったかのようにもだえている。
 「半世紀の大半は東西イデオロギー対決という冷戦構造の中にあった。その枠組みがなくなり、国連が実質的に新しい開発戦略、平和維持活動などに取り組み得るチャンスが訪れた半面、各国の積極的協力と参加がなければ可能にならないというチャレンジに直面している」との分析である。
 国連組織・活動には無駄が多すぎるという国連批判の急先ぽうである米議会。それを受け、オルブライト米国連大使も言う。
 「能力の限界を超えたPKOはやめなければならない。ソマリアや旧ユーゴのPKOの失敗は、環境保全など他の活動に対する国連のプラスイメージを曇らせることになる」
 「南北問題」といわれてきた発展途上国と先進諸国の経済・社会開発格差是正にしても、もはや冷戦時代の論理と手法は通用しない。では、具体的にどう是正すべきかと問えば、途上国も先進国も手探り状態なのである。
 ガリ事務総長が登場した九二年。ニューヨークの国連本部には不思議な期待感がみなぎっていた。ほぼ機能停止状態だった安保理が湾岸危機・戦争で、史上初めて「適切かつ効果的」に対処し、ポスト冷戦時代の国連権限による平和維持活動にだれもが大きな可能性を感じていたからである。
 「あれは、雲間に太陽がのぞいたような感情の高揚期だった」と小和田大使。
 三年後の現実は、だれもが再び国連の限界を口にする。「(冷戦後)紛争の内容が国内型に変わってきた。今の国連の力では対処するのが難しいと感じた」と指摘したのは、旧ユーゴ現地責任者を辞任する明石康・事務総長特別代表である。
 国連の変身が迫られている。日本の常任理事国入りなどを含む組織の質的改革と簡素化▽活動内容や権限の見直し▽危機的状況の財政基盤の整備――と、問題は山積している。
 こうした過渡期に開催される今回の特別総会の大きな意義の一つは、新時代に対応しうる国連をめざす「再出発点」にすることであろう。
(ニューヨーク・田原護立)
 
 
 
 
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