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1991/12/18 毎日新聞夕刊
揺れる“平和の要”国連安保理、「ソ連」常任理事国問題で憲章の見直しも
 
 ソ連邦の年内解体が18日、正式に決まった。これに伴い国連憲章が見直しを迫られている。安保理の常任理事国(PERMANENT MEMBERS=5P)の一角がなくなることで、新たな体制の確立が必要になってきた。激震に次ぐ激震が、「世界平和の要(かなめ)」をも揺り動かしている。
 常任理事国は米、英、仏、中国とソ連で構成することが憲章で明記され、いわゆる「五大国一致」の原則を通すため、「拒否権」を認めている。この「拒否権」が冷戦時代、国連の機能をマヒさせるマイナス要因にもなった。
 「連邦解体はソ連内部の問題。ソ連政府から正式に通告がない限り、ソ連邦は加盟国であり、常任理事国」というのが国連広報センターの公式見解。しかし、政府そのものがなくなってしまう。 5Pが4Pになるのか。ソ連がなくなることで、憲章を改めなくてはならないが、外務省によると、それには「総会に出席した国の三分の二以上の賛成と本国の批准、それに5Pの批准」が必要。しかし、肝心のソ連がどう出るかが不明なため、動きがとれないのが実情だ。
 これまで、常任理事国が代わったケースが一度だけあった。一九七一年、今の台湾から中国になった時だが、この場合は、基本的にどちらが国民の正当な代表か、という代表権問題。国連は「中国は一つであり、台湾政府は中国の領土を非合法に占拠している」として、台湾を国連から追放した。決定は総会が行い、「5大国一致」の必要はなかった。
 ソ連から国連に加盟しているのは「ソ連邦」だけではない。ウクライナ、ベラルーシ(白ロシア)両共和国も四五年十月の国連創設時からのメンバー。同年二月のヤルタ会談で、スターリンは全十五共和国の加盟を要求したが、米国が当時の四十八全州も参加すると対抗したため、ソ連が譲歩した結果といわれる。
 ロシア、カザフなど各共和国は独立国として承認されれば、国連に加盟申請するとみられ、エリツィン・ロシア大統領は「ソ連に代わって国連に加盟する」と明言した。5Pの地位を引き継ごうという意欲の表れだ。しかし、「大ロシア」の復権を嫌い、軍事大国ロシアに任せるかどうか、すんなりとは決まらないとみる専門家もいる。
 ソ連はウクライナ、ベラルーシを含めて国連予算の一一・九%を分担している。経済破たんで支払いが滞っているものの、ソ連邦の消滅は財政難に悩む国連の機能をさらに停滞させる可能性も出ている。ユネスコ(国連教育科学文化機関)は「政治的理由」で米、英が脱退した八四年、資金不足で数百人の職員を解雇したこともあるからだ。
 ソ連は今月、安保理の議長国。三十五年前のあす十九日(ニューヨーク時間十八日)は、五大国の思惑でもめた日本の国連加盟が承認された日でもある。
 
 
 
 
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