分科会28 鶴岡市
心のバリア 社会のバリアを解き放て!
精神保健福祉が耕す新しいパートナーシップ社会
コーディネーター 斎藤 昌子(庄内地域生活支援センター“翔(はばたき)”・鶴岡市)
コメンテーター 恩田 隆嗣(厚生労働省社会保障審議会 障害者部会精神障害分会委員・鶴岡市)
事例報告者
根本 俊雄(SANNet青森)
本間 初美(ボランティア たんぽぽ‘98・酒田市)
富樫 禮子(職親 柏戸銀寿司・鶴岡市)
1. ねらい
精神障害者の地域生活を支える活動の実践を学びあい、今後どう取り組んでいけばよいのか考え合う。
2. 話し合いの記録
事例1 たんぽぽ‘98の活動から 本間 初美
保健所主催のボランティア養成講座修了者で結成し、会員13名。保健所デイケア時の活動と所内へのふれあいルーム設置により、外出の機会と交流の場をつくりほっとして帰っていく姿を見るとボランティアとして喜びを感じる。
事例2 精神障害者の職親として 富樫 禮子
寿司屋でランチの丼物の具は31種類にもなり準備に手間がかかるが、こつこつやってくれるので助かっている。「いらっしゃいませ」と言ってくれるとずっと言ってくれるかと期待すると負担になるようだ。それぞれの個性を引き出し、仕事をしてもらえばこちらも助かるし、相手も給料という形で喜びになる。いいとこ探しで付き合っている。
事例3 商店街と当事者とSANNet青森がめざすもの 根本 俊雄
仲間作りを目標として中心商店街に22坪を借りてNPO SANNetを立ち上げた。でも、周りに遠慮していた。
2000年の冬から2001年の春、商店街と出会い「ハートフルしんまち」の作成に関与(2000年12月から2001年4月)。NPOリフトカーサービスとの出会い。
交流と体験の蓄積
割り箸リサイクル。バザー。体験発表。コンサート。
大事にしていること
(1)当事者が当事者を助けて、力をつける(明るい顔と仲間)。
(2)街で生きる(準備なしに社会にかかり、自分に誇りを持つ)。
(3)いろいろな人との出会い(普通のつきあいと出会いの予感)。
恩田氏からのコメント
社会保障審議会の分会委員として、障害者基本計画策定への意見を述べてきた。計画作りには当事者を差別・排除せず、障害を理解することが重要であり、公務員はその先頭に立ちボランティアと連携していく。
すべての障害者に共通して「所得」「住宅」「職業」を確保しないと地域で生活するには難しい。地域に暮らすことで相互理解がすすむ。行政としては、NPO活動などと役割分担が必要であり、施策の方向であろう。
グループ討議
1グループ
・毅然とした態度で接し、怖さはない
・移動についてのニーズがある。公的なニーズもあるだろうが、民間の活動を行政に伝え、情報交換をしていくことが大事である。
・障害者が気軽に集まる場所が欲しい。
→根本さん「サロン立ち上げのきっかけ」
・18歳〜32歳まで24回入退院を繰り返して95%は入院していた。仲間づくりを仕掛けて実施したら入院しなくなった。人との出会い、仲間と出会うことの大事さを知った。みんなで話し合ってものの置き場を決めていくことを大事にした。話し合える雰囲気が大事である。
2グループ
・一人でボランティアだったり職員だったりして稼働している。
・ボランティアが継続していくためにどうしていくのか。・ボランティアの養成、育成を行政でやって欲しい。
・職親に行政や家族が頼りすぎている。職親のサポートシステムがない。障害者の就労支援は3年であり期限を決めるのはどうなのか。
・補助金・訓練とは何か。障害者が訓練するのではなく社会が訓練していくことが大事
・グループホーム補助金の支出について、障害者中心ではなく、制度に合わせた運用である。
・ボランティアの活動を広げるために、活動をしていくために、活動を宣伝していくことで、障害者への理解が広がる。
3グループ
・電話相談ボランティア。精神の相談が多い
・ヘルパーの心がまえ
・親への手紙、作業だけでなくほめることが必要。ほめられて悪い気はしない。
4グループ
・精神障害とは何か−誰にでも起こる病、思春期の心の病 →地域でも学習が必要
・薬が手放せない
・人格障害と精神障害が一緒にされている。
・職場体験ボランティア−子どもの方が融通がきく。大人の方が偏見が強い。
・予防策はないか
・高齢者施設にも障害別があってもよいのではないか
・他の病気とは違い病院に通うのは抵抗があるが、・他の病気同様に普通に病院に通える環境作りが必要。
・服薬。副作用管理が重要。
・障害者手帳に写真がない−本人自身の偏見を取り払うことが必要
・ヘルパーの賃金の確保
助言者より
・グループホームの支払いについて、基準日の考え方について現場と調整することも必要か。当事者のニーズが多様化し、行政主導ではなじまない。よいサービスが提供できない。行政とのパートナーシップを大事にしてほしい。
・心の健康づくり事業
・福祉ホーム、現サービス利用者のニーズをきちんときいてほしい。3障害に分けなくてもよいのではないか
・今一度、障害者自身のニーズ調査で見直しをしていく必要がある。
富樫氏より
・職親の期限付きはない。
・職親への助成金は、3年間は6万円/月→指導者におりる。職親に期限はない。就業者に対する助成金ではないので3年が過ぎた時点で賃金が減るという現象が出てくるのはおかしい。
・ボランティアを増やすにはどうしたらよいか
〔鹿角市の「でねがー」の例〕
アルコールを絶てないメンバーにボランティアを勧めたら、アルコールを絶てた。ボランティアの喜びがそうさせた。そんな方向も今後は必要だ。
根本氏より
・サロンについて−対象者の疾病や年代などでいろいろ考えられる。利用者の年代が違いすぎても考えてしまう。最初のイメージづくりが大事。支援センターに併設か、グループホームに発展できるサロンかなど2〜3年後までのイメージで行う。
・パートナーシップ 権限のあるものが権限のないものにどう権限を移していくか(譲るか)
根本氏から→当事者へ
・単に行政に苦情を言うのではなく、対等な関係をつくっていくかである。
・電話相談−SANNetでも死に傾く人の相談電話を受けることもある。対応に苦慮しつつも、とにかく全力で耳を傾けるようにしている。
・サロンに集まる足はどうなっているのか。
・手帳があると市バスは無料になっている(青森市)。民間バスは1/2。まちの中にあるので来やすい。鬱の時で来にくい時は送迎している。
石川氏
・陳情の時の話を聞いてほしい。
・門前払いをくうことがある。
・当事者の声を聞いてほしい。
まとめ
斎藤氏
・健常者と話したいと願っている。
・ボランティアと接することで生活の仕方を学ぶことができる。
・声を傾聴することが大事で重く受けることが重要。
市民主体のスポーツ振興のあり方を考える
地域スポーツクラブは自立できるか?
コーディネーター 五十嵐 俊道(f-Sports・福島県)
事例報告者
田村 正男(総合スポーツクラブやまがた・山形市)
土岐 一夫(鶴岡水泳連盟・鶴岡市)
1. ねらい
完全学校週5日制の導入により、子どもたちを取り巻くスポーツの環境が大きく変わろうとしている中、市民が主体的に運営する地域に密着したスポーツクラブの必要性が高まって来ている。どのようにすれば市民主体の地域スポーツクラブを設立・運営することができるかについて考えていく。
2. 話し合いの記録
討議に先立ち、先進的な活動の事例発表が行われた。
(1)五十嵐俊道(f-Sports)
私が所属するf-Sportsは昨年の4月に発足し、今年6月にNPOの認証を受けた、できたてのクラブだ。NPO法人となったことで、社会的責任をより強く意識しながら活動している。
現在でこそ総合型地域スポーツという形になっているが、当初からその考えがあって始めたものではなかった。
福島大学付属小学校は広域から子どもたちが通っているが、子どもたちが一緒に遊ぶということが少なかった。子どもたちが一緒に遊ぶ時は保護者が送迎をしている現状であった。やっと友達が来てもテレビゲームをやる子、その横で本を読んでいる子がいる等友達がいても一人遊びに興じる始末だ。
子どもたちが走り回り、ぶつかり合って遊ぶようにするにはどうしたらいいかと考えるようになり、福島大学の黒須先生の指導を受け、勉強会を開催するようになり作ったのがこのクラブだ。
クラブを設立しようと決めてからはすぐに動き出した。12月に規約をつくり、1月には地域への説明会を開催し、4月には設立した。我々は行政ではないので、失敗したらもう1度やればいいと考えた。
クラブの現在の会員は407人で、発足前の指導者も含めたスポーツ少年団4団体時の180人から大幅に増加している。
最近では地域の理解が深まり、老人クラブ連合会なども協力してくれるようになったし、学校を退職した先生がハンドボールの指導をしてくれるようにもなった。
クラブの活動は主として小学生のスポーツ少年団活動であるスクール活動、50歳以上を対象としたラージボール卓球や幼児から高齢者まで参加しているバドミントン教室等のサークル活動に分かれているが、スクール会員でもサークル活動に参加できるようになっている。
指導者に関して言えば、中学校の部活動が縮小化の傾向にあり、現在顧問等で指導している先生方にボランティアで参加してもらえればと考えている。
今後地元への浸透を図って行きたいと思うし、また、行政とのタイアップを進めて一般社会人の参加を図って行きたいと考えている。
また、地域住民の声をクラブに反映させながら、地域住民の交流の場になれるようにしていきたい。
(2)田村正男(総合スポーツクラブやまがた)
総合スポーツクラブやまがたは、はじめからスポーツはビジネスだという位置付けでやっている。
このクラブの発足のきっかけは、ドイツにスポーツ交流事業で2年間交流してきた若者が、行政も民間も協力してスポーツクラブを運営しているドイツの方式を日本でも取り入れて活動できないかと考えたことから始まる。日本でNPOに関する法律もできたし、やってみようかと思ったがだれも協力してくれなかった。そこで、サッカーJ2のモンテディオ山形の植木元監督に相談し、選手を引退した人と2人体制で始め、現在に至っている。
運営に関しては、補助金はもらっていない。補助金に頼った運営をしていると、補助金がなくなったら運営できなくなってしまうからだ。
このクラブは学校や他のスポーツ少年団で活動している子どもたちも受け入れている。どちらで登録するかは強制せず子どもにまかせている。
サッカーは競技性が強いのでそのレベルには個人差がある。小学生・中学生で身につけるスキルが違う。小学生は基礎的なスキルを身につけさせる時期、と保護者にも説明し、理解してもらっているので、他のスポーツ少年団にあるように負けても文句を言われることはない。
日本のスポーツには学校スポーツと企業スポーツがある。学校体育について言えば、社会体育と切り離す事が必要ある。社会体育であれば民間がやるべきであると考える。
クラブ運営の財源については、他に頼らないで独自に確保するしかない。自分たちでお金を生み出す仕組みを直接的に、また間接的に創り出すことが必要だ。
NPO設立にあたっては、次のことが必要である。
・失敗に学べ(どうして失敗したかの現状分析が必要)
・地域型総合スポーツクラブは総論である。まずは各論から入るべき
・最初から目的を明確に(補助金をもらうためではない)
・年功序列封建主義を排除する
・顧客満足度を向上させる
・専門性が必要(プロが教える等)
・走りながら考える(行政に振り回されない)
・指導者等の人的資本を大切にする
(3)土岐一夫(鶴岡水泳連盟)
鶴岡市民プールは、昭和47年に開催されたインターハイに合わせて整備されたプールで、その運営については、鶴岡水泳連盟に委託され、現在に至っている。
鶴岡スイムクラブの活動は、どうやったら市民プールの有効利用を図ることができるか考えたことから始まった。市民プールといえばいつ行っても泳ぐことができるいわゆる「一般利用」が普通であった。これがプールの有効利用につながるか疑問だった。プールの有効利用を図るには、また、水泳の普及を図るには、と考え、鶴岡水泳連盟の事業としてスイムクラブを設立し、水泳教室を開くこととなったのだ。
教室を始めた当初、指導者は比較的時間のやりくりができる自営業者のボランティア数名だった。平成元年、東北初の室内50mプールができた頃は会員も1500人いたので、10名の専従スタッフでの対応となっていた。現在は会員が2800人となり、職員20人、パート職員5人、選手コーチ1人で対応している。
スイムクラブは、2800人の会員の会費により運営しているが、会員が増えないと収益が上がらないので、会員のニーズに応じて教室を増やしていっている。
プールは泳ぐ場所から運動する場所に変わってきており、アクアビクスも取り入れているが、これもその一環だ。
教室に通う中高生については、学校側のご理解をいただき、部活動として認めてもらっている。
30年間教室を続けられたポイントは、次のとおりであると考えている。
・リーダーシップを発揮する人がいること
・継続できる教室があること(年収入が予定できる)
・指導者は計画的に採用すること(教室に合わせて)
・会員が口コミで集まる環境を整えること
・会員にやめられないような配慮をすること
3. 成果
スポーツを取り巻く現状分析、スポーツに関する夢についての討議を行った。
<スポーツを取り巻く現状>
・特定の指導者の負担が多くなっている
・地域にNPO法人設立を支援できる体制がない
・楽しさの追求より競技性が重要視されている
・指導者は多くいるが、自分の専門以外の種目に対し興味を持たない
<スポーツを敢り巻く今後の夢・望むもの>
・子どもたちにスポーツは楽しいものだ、と思わせる環境を整えたい
・やりたいスポーツを自由に選べる環境整備が必要
・生涯スポーツを楽しむ人、競技力向上を目指す人のどちらにも対応できるトレーナー育成が必要
・子どもが一種目だけでなく、多くの種目に取り組めるような環境にすべき
・お金の持つ信用創造機能を持たないいわゆるエコマネーを総合型スポーツクラブで遣えるようにしたい
・障害者も気軽に参加できるスポーツ環境が必要
4. 課題
各地域によりスポーツを取り巻く状況が違うため、NPO法人化に向けた取り組みはこういう進め方がベスト、というものを探ることはできなかった。
また、スポーツNPO法人が全国に少数しかなく、その取り組み方も大きく違うため、どのNPOを参考にするかで違った取り組みになる。
5. 参加者の声
・総合型スポーツクラブヘの取り組みはこれからだが、他地域の状況を勉強することができてよかった
・NPOの具体的立上げについての検討があればなおよかった
・障害者とスポーツとの関わりに関する話は参考になった
・現在地域で活動しているが、今後の活動の参考となった
6. 運営サイドから
地域型総合スポーツクラブに関する分科会は今回の研究集会で初めて開催されたもので、どうなるか心配であったが、無事終了しホッとしている。
地域通貨はボランティア活動を変えるのか?
徹底討論!地域通貨の活用法
コーディネーター 澤田 正文(鶴岡市民活動センター・鶴岡市)
事例報告者
ヘロン久保田雅子(タイムダラー・ネットワーク・ジャパン・愛媛県)
小地沢 将之(アーバンネットワーク・宮城県)
石塚 一晶(鶴岡市民活動センター・鶴岡市)
1. ねらい
全国的に導入、あるいはその検討が急速に広まりを見せている地域通貨。様々なタイプがあるけれど、何が違うの?自分達の町にはどういったものが合っている?そんな疑問を徹底追及する。
前夜祭の分科会交流会にて、エコマネー提唱者加藤敏春氏より、地域通貨の今後の展開のあり方について解説してもらい、当日分科会では日本でタイムダラーを主宰するヘロン久保田雅子氏、「町づくりチケット」や「ザ・ハイカラ」等を手掛けた小地沢将之氏、鶴岡エコマネーの事務局長の石塚一晶氏をパネリストにディスカッションを行う。その後に、参加者全員討論での各自の課題解決に地域通貨の活用法を探ってもらう。
2. 話し合いの記録
タイムスケジュール
9:00〜10:00 事例報告
10:00〜12:00 各地域通貨の設計の違いについて
12:00〜13:00 昼食
13:00〜14:45 参加者の活動における地域通貨の適応の模索
15:00〜17:00 ボランティア活動のツールとしての地域通貨の今後
既に地域通貨を導入し、実践されている3名のパネラーからの事例報告。
鶴岡エコマネーの事務局長をされている石塚一晶氏からは、具体的な地域ニーズがどのように把握できたのか、と言う点で発表があった。
タイムダラーを運営されているヘロン久保田雅子氏からは、介護支援のプログラムから始まったタイムダラーが、地域の課題解決の手段として発展してきた経緯などが発表された。さらにアメリカでのタイムダラーの取り組みを9分にまとめたビデオを紹介いただいた。また、日本や世界各地での地域通貨への取り組みがどのような広がりを見せているのかという点や、地域通貨の歴史についても解説をお願いし、丁寧にお話をしていただいた。
小地沢将之氏は、町づくりに多くの利用者が関わる事を目指して、当初地域通貨という意識を持たずに導入した実践例をお話いただいた。3県15市町村からの参加者が、同じ地域通貨を通じて結び付いている広がりを持つに至った経緯が発表された。
・地域通貨の設計
ここでは、「相互扶助型」地域通貨と「地域貢献形」地域通貨のどちらを自分達の問題解決のツールと捉えて導入を考えるのか?という点についてパネラーの方々に様々な分析をお話いただいた。
「相互扶助型」の地域通貨であるタイムダラーの運営をされているヘロンさんが、コミュニティの再構築・市場経済とコア経済(非市場経済)との橋渡し・人は資源である・仕事を再定義といった目的を目指して設計されている事について解説していただいた。
小地沢さんからは、仙台の町づくりに商店経営者や行政以外の町の利用者が参画するツールとしての地域通貨の設計に関して、解説していただいた。
エコマネーに関しては、前夜祭でエコマネーの提唱者である加藤敏春氏に「相互扶助型」から「地域貢献型」ヘエコマネーは進化するような設計を考えているとの解説をしていただいていた。加藤氏の考えでは、地域通貨は「相互扶助型」を目的に始まりながら、いずれ「地域貢献型」にその目的が変化していく事が望ましいとの事だった。
・参加者の活動における地域通貨の適応の模索
参加者への事前アンケートを実施した結果、導入に対して積極的に取り組もうとの考えの団体から代表しての方がほとんどだった。その中で、もうすぐ実施母体としてのNPO団体設立を控えて参加した横手市の「横手ひらかNPOセンター」の事例を参加者間で議論しました。この団体での地域通貨への期待は経済的な活性、地域の情報交流、と目的が広く捉えてあるようでしたが、当初からあまり多くの目的を設定しすぎると導入目的が不鮮明になりがちで、運用に苦労する危険性が指摘されました。
・ボランティア活動のツールとしての地域通貨の今後
「横手ひらかNPOセンター」の事例でも焦点の一つになった活動経費の捻出を賄う事をどのように計る事ができるのか?という点は、地域通貨をボランティア活動の潤滑油として期待する人たちに共通の課題でもあったようでした。
この点については小地沢氏より、市場経済とボランティア経済の中間に地域通貨を介した経済があり、その地域毎に解決すべき課題にとってどのような仕組みが有用かという捉え方を明確にしていく事の重要性が説明されました。
・タイムダラーゲーム
多くの参加者から、地域通貨による“互酬のシステム”を理解する助けになる、導入のあり方について質問が集中した事を受けて、ヘロン久保田氏から指導していただきながらタイムダラーゲームを実施しました。難しく相互の助け合いを捉えていた人たちに、実践における導入のあり方が伝わったのではないでしょうか?
ゲームにおいてはスムーズに助け合いの輪を広げる事が出来そうとの感触を参加者が感じたところで実践に結び付けるために、実際にどのような工夫がそれぞれの運営において考慮されているのか、を小地沢氏やヘロン久保田氏から紹介いただいた。
「予約会」「例会」「体験会」などゲームでの導入を行い、実際の運用で顔を合わせ、コミュニケーションが成立し易くする事が、実際にうまくシステムの設計に組み込まれている事が参加者に伝わったものと思います。
3. 成果
概要としての地域通貨の知識を持っていたようだが、導入への具体的な示唆を求めている参加者の人たちに、実際に運用に到るまでの経緯やシステム設計における理念形成の持っ意味の重要性を、参加された人たちに伝える事が出来たのではないか、と考えています。
4. 課題
自分たちの生活の場でもあり、憩いの場でもある地域で、その中の問題解決に有用なツールとして地域通貨をどうにか使いこなしていこうと考える人たちに集まっていただいた分科会であったが、分科会前夜祭でのエコマネー提唱者・加藤敏春氏からのエコマネーの発展段階についての解説が、大分理解の助けになったのではないか、と考えています。
抜粋すると、“エコマネーはコミュニティのメンバー間の「相互扶助(交流)」を促進することにより信頼を醸成します。ただ、エコマネーの役割はこれで終わるものではありません。参加メンバーによる「課題発見」を経て「公民パートナーシップによる協働」による新しいコミュニティ作りへと発展していきます。”
当初企画では、各々の地域課題の解決にむかっての地域通貨のタイプを詳細に解説をする事で、参加された人たちが、自分達にあうタイプの地域通貨を、選択がし易いような議論をする予定でいたのですが、むしろそうした発展段階別に、現在の自分たちの地域での課題のあり方を捉えなおししていただいて、どういった地域通貨の仕組みを考えるのか?といった視点での議論をもう少し深めて各パネリストの方々にお話を掘り下げていただくべきだったのかもしれません。
ちょうど「相互扶助型」、「地域貢献型=課題発見型」夫々のタイプの地域通貨を運用されているパネリストの陣容だった事を考えると、切り込み方が甘かったと反省しています。
実際に運用に結び付けていくには運用にかかる経費の問題や、コーディネーターを育成する事などの難しい問題も現時点では必ずしも解決されていない事があり、今後の課題であろうと思われた。
5. 参加者の声
「2日に渡っての長丁場の議論で少々大変でした。」
「導入に向けてもうすぐであるために、実際の運用時には自分たちの目指している問題がどういったものかを今一度確認する必要性を考えさせられた気がします。」「タイムダラーゲームは楽しんで出来ました。それから、参加者を広げるために事前にどういった仕掛けがあるのか、具体的に聞けた事はとても良かったと思う。」
6. 運営サイドから
パネルディスカッションの資料配布がうまくいかず進行が少し停滞した事は運営上反省点であった。
当初企画していた基調講演者が日程調整が甘く、企画変更を余儀なくされたが、その分を前夜祭以後の分科会交流会を研修機会として補えた事で参加者の方からの労苦にお答えできたものと考えています。
パネルディスカッションのパネラーの方々には、コーディネーターの力量不足をカバーし、各々が上手に役割分担しての発表をしていただいた事で、分かり易い内容のある討論をしていただけたと感謝しています。
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