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分科会16 酒田市
自然環境と共生するまちづくりを考える
〜このままでいいの? 子育てボランティア〜
コーディネーター 辻 孝宗(風の学校・北海道)
事例報告者
藤井 信(山王森の緑を育てる会・酒田市)
芦田 博文(山王森の緑を育てる会・酒田市)
 
1. ねらい
 活動が高齢者に偏る傾向があり、いかに地域、青少年の参加を得るか、引き継ぎが出来るか。
 
2. 話し合いの記録
・藤井 信(山王森の緑を育てる会事務局長)
 「古里の森づくりと山王森の緑の保全活動について」
 私たちのフィールドは、市内中心部の丘にある日枝神社の境内で、昔から「山王さん」と呼ばれ、黒松、欅等が茂り、桜の名所の市民憩いの場所である。
 会発足当時は、ニセアカシアが異常に繁茂し、アメシロが大量発生し、住宅の庭木にも被害を与えていた。それに、本間光丘翁植樹の200年以上の黒松も、風雪害による倒木、公害・病害虫による枯死、不法投棄されたゴミ等で藪となり、人が踏み込めない状態であった。
 このような山王森を見て、地域の有志が、往年の「緑豊かな山王森」の復活を目指して、昭和52年7月、会を発足し立ち上がった。
 緑の再生には、ニセアカシアの伐採が第一と専門家の指導を受け、各自道具を持ち寄り、連日、朝仕事で、ニセアカシアの伐採に汗を流した。
 整地し、52年10月から黒松の苗を植え始め、植樹した樹木は120種、1万本以上になっている。
 植樹・清掃等の作業に、多くの市民(ロータリークラブ・ライオンズクラブ・青年会議所・幼稚園・小・中・高校生・老人クラブ等々)からご協力をいただいた。
 新しい公園として、芝生、車椅子用遊歩道、子供用遊具、芋煮会用かまど等も整備し、梅祭り、花見、野点、芋煮会等に利用されて、市民の憩いの場となっている。
 現在は、3月の雪囲い取りから始まり、樹木の管理・環境維持管理、11月の雪囲いまで、20数名の会員で作業をしている。
 私達の会でも会員の高齢化等で、会の継続と発展に課題が山積している。次世代に引き継ぐべき自然環境の一つとして、山王森を緑豊かで、潤いに満ちた街づくりのために、現存する緑の保全と、更に緑を増やして質の高いものにしていきたいと考えている。
 
・芦田 博文(山王森の緑を育てる会会長)の補足説明
 会員の高齢化と後継者、協力者を如何に集めるかが心配である。
 作業は、3月から11月まで、週4回、火・木・土・日の朝6時から7時過ぎまで、おおよそ1時間。高齢者の「山王森で働くことが私の生き甲斐である」と言う言葉を聞き、感激している。
 作業道具類は、市から助成いただいており、照明灯等設備品は、多数の協力者の寄贈である。
 会員は、一般会員130名、特別会員法人等40社。年会費・寄附金で事業を運営している。
 
・中村 勝彦(滋賀県・男性・若者・重傷心身障害児施設)
 佐渡であった森林ワークキャンプに参加し、枝打ちを体験したことがある。
 労働の大切さを学んだが、島内では若者が少なく、後継者がいない悩みを聞いた。行政でいろいろ工夫しているが目立ったものがない。が、何とか地域全体でやっていくしかないと言っていた。
 
・工藤 善一朗(秋田県大潟村・壮悠会)
 壮悠会は、12年前、働き盛りの方の生涯学習の一つとして誕生した。自然環境を護る事を目的として活動している。
 八郎湖の水を如何に綺麗にするかに務めている。八郎湖は、八郎潟の干拓により出来た湖であり、海との水門は閉ざされている。それで、八郎湖の水は淀んで汚れがひどい。有機米栽培をして、幾らかでも汚さない工夫をしているが・・・
 水門を開けば海水が入り水は綺麗になるが、農業に支障が来すので、相反する事になり悩んでいるのが現状である。
 
・コーディネーター
 年代別に役割を分担して行き、切れないで、見える継がりを作っていく。子供達、地域の方々と関わって行き、種を蒔いて行く事だ。
 
・藤井 信(山王森の緑を育てる会事務局長)
 私達の会でも、幼児期や小・中・高校生の課外授業で、または諸地域の団体に積極的に呼びかけてきた。これからも続けたい。山王森には、狸や雉・野鳥が一杯飛んでおり、心が和み、空気が綺麗なので情操教育に最高の場と考えている。
 
・工藤 善一朗(秋田県大潟村・壮悠会)
 水の環境保全策の一つとして、10年前から5.5haの池を作り、子供達と共に植えている。水の浄化と子供達を育てていく事が大きな目的である。
 
・コーディネーター
 暮らしの中の自然体験が大切で、将来、必ず役立つ。常呂町の取組みの話しをします。
 常呂町に綺麗な花が一杯咲くワッカ原生花園があります。近年、4輪駆動車が走り廻り、車輪跡、排気ガス等で自然が大きく汚れてきた。
 町ではワッカ原生花園を守るため、ワッカ原生花園を通る町道25キロを廃止しました。交付金(年間4千万円)が無くなる経済的な打撃はあるが、それよりも自然が大事と判断した。
 観光客が増えると、外来種が入って来るという、新たな問題が生じてきた。自然のまま育てるか、否か?
 今は、高校生が雑草を摘み取って、今のワッカ原生花園を守っている。
「風は人を創る」
「共感、協働、共創」
 
3. 成果
・行政を巻き込み、地域、青少年に、根気よく継続的に目的を持った活動を呼びかけている例が多い。
 
4. 課題
・活動が高齢者に偏る傾向があり、次を担う者の育成が厳しい状況を聞く。
・行政に頼り過ぎない活動。
 
5. 参加者の声
・自分の知らないところで苦労をしている方々が多数おり、感激している。苦労ばかり口説いていたが、反省させられました。
・行政との絡みが、上手くいっている例を聞き、頼るばかりでなく、自分たちの会も自立していかなければと強く思っています。
 
6. 運営サイドから
・冬期間なので、我がフィールドを案内出来るか不安でしたが、冬枯れの山でも案内できて良かったと安堵しています。
 春に、再度お出で下さい。黒松、欅等の緑と梅、桃、桜、山吹、椿、コブシ等々咲き誇っている素晴らしい「山王森」を案内させていただきます!!
 
 
コミュニティと災害
“いざ”に備えるボランティア ―コミュニティコーディネーター養成講座―
ファシリテーター 桑原 英文(市民活動センター神戸・兵庫県)
事例報告者
清水 慈子(静岡県ボランティア協会)
岡部 恵美子(みんなで考えみんなで創る災害への備えWS研究会事務局・酒田市)
 
1. ねらい
 発災直後、互いを守りあえるのは隣近所や町内の住民同士です。しかし、そのための「備え」はいまだすすんでいません。何をどう考え、どうすれば地域の実情にあった「備え」をつくれるのかをみんなで考えます。
 
2. 話し合いの記録
・アイスブレーク 桑原英文氏
・あてはまるものに手をあげるゲーム
 「私は男性である/女性である」・「結婚している/したことがある」など、席に着いたまま10項目以上の質問に対して手をあげる。
 初めて会う人もいるせいか、皆、周りの様子を探りながら手を上げている様子。
・知らない人と5人握手したら席に戻るゲーム
 各々行動開始。自己紹介したり笑いも。指折り数える人もいる。
 このゲームから、日本人は外国人に比べて肌で触れ合う機会が少ないことがわかる。
 この場所が避難所になったとする。もしも隣の家の人がいたら思わず抱き合うだろう。そういうことが日常的にできたら・・・。
・桑原氏 突然机の上からビー球を転がす!
みんなが先を競って拾う。
・・・実はこれが災害の場を想定していたということが桑原氏より明かされる。会場大爆笑!!
<災害>
・人の流れ(内側・近くから身の回りからできる行動)
・遠くにも情報が伝わる(専門家支援・チーム)
・TV(もっと遠くに情報が伝わる)
 
〜自分のところで災害がおきたら3・3・3〜
(3)・・・30分間→自分の命、家族、周りの人の命を救出する。
(3)・・・3時間→安全な場所に避難する。
ファミリーキャンプ(自家用車にキャンプ用具を積んでグランドで生活する事例)
(3)・・・3日間→自分達でなんとか生き延びる。
3日間耐えられるだけのコミュニティを日常的に作ることが重要。
 
<このゲームを通して>
 地域の違いが分かってくる。そこをやりとりする中で、ここが足りないとか分かればいい。
(1)個人として自分がどういう性格なのか。
(2)地域の一人として私から始まるコミュニティづくり
 
・自己紹介ゲーム
 A4三つ折り用紙に自分が好きな色で以下の項目を書く(名前/所属/参加の動機)。
 振り向いて皆に紙を見せながら一人ずつ発表。
 地元参加者では過去に酒田大火を経験した方もいて、当初一人1分の予定だった自己紹介が盛り上がり始める。家族、仕事など話題が沢山。
 
(以下4つのキーワード)
(1)Listen「傾聴」
コミュニケーションが一番大事。話を聞くことが大事。
見えない未来を言っても仕方がない。
(2)Open「自己開示」
自分をどうやってみせて、ひらくか。
(3)Voice「参加する・声をあげる」
民主主義の具現化。みんなで作り上げていく社会をつくる担い手が市民活動・NPO・ボランティアではないか。
(4)Enjoy「楽しむ」
学びがある。
 
・Part1 課題抽出のための事例報告
・清水慈子氏より「災害ボランティア事業」にっいて事例報告。
 静岡県では、平成8年から県の委託事業で災害ボランティア養成講座を開催。当初は基礎講座的なもので平日に開催していた(受講料無料)が、近年は委託事業と自主事業を合同で行い土・日に開催している(参加者受講料負担)。これによって30〜40代の参加が増えてきた。現在までに修了者は全体で890名ほど。この中で災害時にボランティアコーディネートできる人はどのくらいいるか分からないが、東海地震が起きたときの事を考え、14年度は災害時への対応や災害時に向けての活動など「平常時」と「地域」をキーワードに講座を開催している。
 災害時にコーディネートする人、日常から人の顔が見える環境をどう作っていくかを期待。災害ボランティアの体制づくりは始まったばかり。コーディネーター・自治体・自治会など、みんなで考え始め、取り組みが生まれてきている。その大前提は「予防防災」。自分達のことは自分達で守る。身近なところから、地域から「広域と小地域」で考えていくことが大事だと思う。静岡県ボランティア協会では、広域的な情報提供やバイクのグループ、県の石油商組合の協力を得て、災害時には優先的に給油できるような仕組みづくりを行っている。
 
・岡部恵美子氏より「みんなで考えみんなで創る災害への備え研究会」について事例報告。
 現在までに市役所・消防本部・自治会関係者らが参加して5回の研究会を開催してきた。この研究会をとおして見えてきたものは以下。
・行政の取り組みと課題
・自治会の取り組みと課題
・災害弱者の現状と課題
「連携」−“みんな”をつなぐ
・情報の一元化と共有
・情報の蓄積
・クロスセクター、リンクフィールド
「共創」−“みんな”でつくる
・「当事者」の参画
・「問う」ことと合意形成
・「のりしろ」の存在
「互助」−“みんな”でおぎなう
・「不足」の検証と補完
・小さく⇔大きく
・変化への対応
「自助」−“ひとり”から
・「きっかけ」の提供
・「トリガー」の重要性
〜結論〜
 地域は愛着があって楽しくてある程度親密だといえるものがつくれれば、災害時に備えることができるのではないか(予防防災)
 
・Part2 課題解決のためのグループワーク
・ワークショップの説明とグループ分け
(1)色のついたシールを参加者の背中に貼っておく(参加者には何色かわからないように)
(2)全員立ち上がってグループづくり開始。
 手をあげる人、声をあげる人・・・
 赤・青・黄・緑・白の五色のシールを背中にはった人たちがそれぞれ同じ色ごとに集まってグループができたかと思いきや、1人だけパンダのシールを貼られた人が取り残されている。色別だとパンダが仲間はずれになる。→パンダから要望を聞く。
(提案)全部違う色で集まる
(3)参加者はそれぞれ声をあげて違う色の人を探す。五色そろって4グループができる。
<このゲームを通して>
 最初1人だけ仲間はずれが出る⇒「災害弱者」
 「色」というグループで作った⇒マジョリティ(弱者をつくり出す構造が生活の中にあるのではないか)健常者中心の社会⇒ホーリスティックノーマライゼーション(当事者参加の中で創り上げる社会)⇒市民社会
・グループワーク
 「世の中はどうなっているか」シートをグループごとに記入する。問題を読み上げる人、意見を言う人、疑問を投げかける人、鉛筆で書くかペンで書くかもめるグループ、携帯電話で計算し始めるグループ、試験じゃないのであたらなくてもよいと言う人、統計辞書がないとわからないと叫ぶ人・・・。参加者同士すっかり打ち解けた様子でわいわいがやがや作業を始める。
<このシートの数字からわかること>
・高齢化、少子化
・国際化
・ジェンダー
・DV
・青少年問題
・環境問題
・くらしの多様化・・・離婚のスピード化、再婚率の高さ
→問題、孤立化
 これらを踏まえて、自分達ができること考える
 
・グループ発表
 各グループで「災害に備えて日常私たちがすべきこと!取り組むこと!」を発表。
 
3. 成果
・地域を知る仕組み
・ボランティアの参画(新たな公共づくり)
・コラボレーション(協働)(共助)
・ボランティアのネットワーク強化(ネットワーキング)
・家庭内の防災強化(自助)
・命をつなぐ連絡網(安否)
・役割をおぎなう体制づくり(リスクマネジメント)
・参加型学習の機会(ワークショップ)
・コミュニティコーディネーター(つなぐ人・届ける人・運ぶ人)→特別な人じゃない。
・教育⇒民主主義の学校
・開かれた場づくり
・子どもを学習の主体に
・家庭で考える
 
4. 運営サイドから
 桑原さん、清水さん、今日は本当にありがとうございました。この研究会も何も分からず始めたが、やってみることでわかってくる。いろんな関係機関ができないのは当たり前だと思っていたが、わがままなニーズに応えていくことが必要であり、これができるのが民間であると思った。来年はモデル地区を設定し実践していきたいと思うし、行政を市民をつなぎ、また皆さんへ届けたい。
(岡部)
【桑原氏からのメッセージ】
 私たちがコーディネーターの役割をする時、色々な人をつなぐ、届ける、コミュニティのつなぎ役。当事者主体、生活者主体。その解決方法を一緒に考えたり悩んだりすることが役割。緒に手をつないで、歩いていこう!
 自分をいろんな場所に連れていってあげられる場にしよう!
 
 
地域福祉NPOのミッション(志)をボランティアと共に
ミッションを見失わず、事業体として運営するには
コーディネーター 武田 真理子(東北公益文科大学専任講師・酒田市)
事例報告者
石川 耕三郎(山形県職員)
中村 祥子(グループゆう・宮城県)
 
1. ねらい
 誰もが住み良い、豊かな地域社会作り。この課題にむけて取り組むNPOやボランティアが、いかに自らのミッションを持ち続け、活動を続けていくか。このテーマに向けて、先進事例に学び、又、それぞれの課題を出し合い討議をすることによって、自分達の活動を振り返り、今後どう展開していけばよいのかが掴めるのではないか。地域社会作りに関わる立場は様々なものがある。切り口は違っても、目指すものが同じである広い意味での同志との話し合いは、今後の活動を進める上で、お互いに良い刺激となり、地域を越えたネットワーク構築に繋げられるだろう。
 
2. 話し合いの記録
事例報告 中村祥子 氏
 「グループゆう」は、生協活動の中で食生活や環境問題を考えてきた15名の仲間で、誰もが住み慣れた地域で安心して暮らせる地域作りの為に、行政への働きかけだけではなく、自分達が欲しいサービスを、自分達から生み出していく仕組みを作ろうと設立した。
 当初は週1回の食事作りを始めた。食数と回数が増える中で、助成制度が終わると事業継続が難しい任意団体のままでいくのか、団体として自発的に事業を進める可能性のある法人格をとるか話し合いを重ね、さらに地域のニーズに応えて、責任を持った団体となって行く為にNPO法人格を取得した。
 現在は毎日昼・夜週12回、1回100食くらいまで作っている。さらに利用者の状態に個別対応もしている。市内の給食サービスをしている7団体で、ネットワークを組んで行政に働きかけ、食事サービスが制度化された。そこで事業委託を受け1食300円の補助を受けている。他にも地域にあったらいいと思うサービスとして障害者の放課後クラブや地域の憩いの場などを運営している。ミッションの共有は自分たちも日々戦っているテーマでもある。
 自発的に参加する会員の志は必ずしも統一ではない。しかし受け入れ、自分の想いの確認や可能性を学び、知り合った人が力を出し合って、団体の目的である差別のない誰でもが幸せに暮らせる世の中を作りたい。そろそろ、志を感覚で共有するのではなく、自分達なりの就業規則などを社会の制度に適合するように明文化して、多くの人と共有してもらえるような場作りをしていきたい。
 
話題提供 石川耕三郎 氏
・アメリカのNPO
 アメリカは政府が小さいため、行政間の隙間が多く、コミュニティや学校運営、老人福祉などで地域組織が活動しやすい。アメリカでNPOが活発なのは法律、支援体制、行政の関わり、減税がセットになっているから。行政が小さいと税金が安い、足りないサービスはNPOが効率よくやる、産業界もNPOに寄付して節税にもなる。それを法律が規定し、税務機関が、非営利事業の税の減免を認定するという社会のしくみが形成されている。
・マネジメント
 NPOの隆盛にはマネジメントの影響も大きい。全米にネットワークを張ってNPOを支援育成する中間組織に、企業で経営を学んだ人がはいってきた。企業感覚のある人が社会的課題をみつけ、NPOを中心に解決していく。そのためNPOが、社会的起業やコミュニティビジネス振興といった新たな課題に対応する主体となった。
・ISO14001
 地球規模での環境悪化が問題となり、資源の有効活用をめざし1996年にできた世界規格。これはマネジメントの基本に環境側面を付加したもの。同様にマネジメントの基本に福祉配慮を加えれば福祖ISOができるのではないか。まだ福祉側面についての規格はないが、福祉の規格化が成立すれば行政としてもアウトソーシングしやすく他団体との連携も進むのではないか。
・規格づくりはバザーモデルで
 一般企業では経営は、トップからの命令で社員が動くトップダウン(カセドラルモデル)である。しかし環境ISOでは社員ひとりひとりが自ら環境を意識して行動することを目標としている。環境の意識が身につけば企業文化を良くし生産性も向上していく。計画・実行・確認・見直しといったマネジメントの骨格はカセドラルモデルで、細部項目は多くの人がアイディアを出して、自由に参加するバザーモデルでの規格づくりがのぞまれる。
 
〔ワークショップ〕
ミッションについて
・組織として会員に十分浸透するような努力を常にしていく。
・常に原点に立ち返って、ミッションをメンバー内で確認すること。
・ミッションを強化したり修正することも大事。
・社会を変える力になる。
・NPOになり、その上事業体となると、ミッションを持ち続けるための取り組みも必要になる。
行政について
・行政の人は、現場に出てその経験を政策に生かして欲しい。
・行政とNPOの協働が必要。
ネットワークについて
・価値観の共有化を図り、いろいろな分野の人とネットワークを作る。
・行政ではできない部分を、市民サイドで横のネットワークを作る。
・自発的にボランティアに参加する市民を育てる。
・NPOの中間組織を大いに活用する。
マネジメント
・企業感覚が必要になってくる。
・行政との交渉能力を養う。
・活動実績がしっかりしていること。
・活動する喜びを体験することで、ボランティアが増える。
・活動する人達の環境を整えることが大切。これによって自発的に、意欲的に活動できるようにすることが大事。
・NPOは法人格をとってからも、責任ある活動を大きく求められる状況である。
ゲストよりのコメント
・いろいろなプロジェクトの仕掛け方の本の中に「最も効果的な生産的な仕掛けは、遊びモードのときに一番効果的な仕掛けになる」とあった。遊びになった時に自然な形で参加したり、貢献できるということだ。遊びを視野に入れることも、マネジメントでは考える必要が出てきたという感じだ。
・ボランティア団体がNPOという事業型に移行した団体が多いため、労働対価に慣れていない感覚から、労働対価が評価されるようになったために戸惑いがあると思う。また、労働対価が当然のこととして入ってきた後発組の参加者と立ち上がり組とのずれ。お金が絡むことなので心の中にストンと落ちてこない。このあたりが福祉NPOが事業体として運営していく上での課題だと思う。
・福祉NPOは行政の縦割りのやり方と違って、トータルなサポーターとして助け合いの活動も含めて、その人のあらゆるニーズに応え得るサービスの提供ができればミッションは実現していると思う。
・労働対価を求めてもいい労働なのに、今まで労働対価がついていなかったということから自分達がアンペードワークに縛られている。その意識改革をしなければ先に進まない。
・施設で働いていても、行政マンでも各々の労働は全部必要だ。各々の立場を越えて個人に戻った時に、みんな平等という感覚を忘れないで各々力を出し合って市民社会を構築することが大事だ。
・福祉ニーズのある人にいかに適切なサービスが提供できるか。いかにニーズとか地域の声を吸い上げられるか。さらに地域づくり、街づくりをどうしていくかが課題だと思う。
・福祉NPOは様々なバリアをはずして、周りの人の理解を得られるように積極的に活動していけると感じた。
・福祉NPOのミッションは公益という大きな目標があるので、それを生かすにはどうしたらいいかという議論を、ボランティアとかNPOから発信していけるような組織化が必要だと思う。
 
3. 成果
 話題提供のゲストからは、実際に地域作りの団体を立ち上げ、活動を続けながら地域のニーズに応えて活動を発展させて行った経緯と、その途上に起きて来た問題の実際や解決方法などを具体的に述べていただいた。また、もう一つは先進地アメリカでのNPOの紹介と、福社NPO運営上のマネジメント手法としてのシステム規格の紹介だった。実際に活動中で、それぞれの課題を抱え解決方法を掴みたいと思っていた参加者にとって、現場に近い話題と、トップマネジメントの話題の両極端だと感じたかもしれないが、違った視点から、自分達の課題を見つめることができた。午前に話題提供、午後に小グループに分かれてのワークショップで会を進めたことにより、参加者それぞれは自分の想いを吐き出せ、また、情報交換も十分にできた。
 
4. 課題
 地域社会作りに関わるとき、メンバー皆それぞれ違う立場であることが多い。そのためミッション(志・目的意識)の共有が、なかなか進まないところも多いのではないか。本来このミッションに同意し参加・活動しているはずであるが、事業体となった団体には、一労働者として関わる者もいる。どのような立場からの関わりだとしても、事業を進めていく上でミッションの共有は必須の条件である。
 NPOグループゆう中村氏からの話題は、身近な課題から取り組み、どのようにしてメンバー間の共通認識を保ってきたかの事例報告で、また、一方、山形県職員石川氏から、アメリカ+NPOの状況や福祉NPO自らの事業の継続的改善を目指すための、福祉NPOマネジメントシステム規格の紹介があった。
 どちらの話題も今後の課題として、ミッションの共有を強制やしばりのない実現に向けてどう取り組んでいくのか、また、活動団体の自立とレベルアップのために、福祉NPOマネジメントシステム規格などの導入を考えていかなければならないと示唆してくれた。
 
5. 参加者の声
・普段は聞けない貴重な現場の声を聞くことができ、これから行政サイドとしてできることは何かを考察する良い機会となった。
・ボランティア活動の活性化について、他県の状況・工夫・悩みを伺い、今後の良い参考になった。
・ボランティアの立場から、事業体のNPOとの考え方のズレを感じていたが、今後ミッションを持ち続け、活動の方向性を見つけていくことができるのではないかと思った。
・今後もボランティア活動実践者との交流を深め、自分自身を「磨き」、地域活動に務めたい。
・ミッションをわかりやすく、力強く確認し合いましょう。
・全V研に参加して、いろいろな方が活動していることを肌で感じ、視野が広がったように思います。
 
6. 運営サイドから
・現場で実践している方の体験談と、海外でも活躍された方の理論との2本柱があったため、話題の幅が広がって良かった。
・このテーマは、よく反芻しないと問題の解決法が見えない。今回顔を合わせた方たちと、何年後か再会した時には、それぞれお互いに、実践した成果を語り合いたいものである。
・今回は会場の設定状況から、地域に密着した声は聞くことができたとは思うが、全国から参加の皆さんともう少し、話し合う時間が欲しかったような思いが残った。しかし、この「もう少し」という思いが残るからこそ、これからの活動に繋がる部分もあるとすれば、反面よい終わり方だったのかもしれない。







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