今年度の目視観察では、浅場の砂礫底で水草群落の周辺にウキゴリ、ヌマチチブ、ジュズカケハゼ等の底生性魚類やイトヨの群れが観察された。また、東湖(宇樽部)では、環境庁(現環境省)のレッドリスト
8)で準絶滅危惧種に挙げられているマルタニシが確認された。水草群落はこれらの動物の隠れ場や採餌場などとして機能していると考えられる。特にイトヨは営巣のために水草の繊維を利用する
9)ことから、水草群落の消長が種の存続と密接な関係にあるといえる。このように十和田湖の水草及び水草群落は、湖内に生息する多様な水生生物と深く関わり合いながら、十和田湖固有の生態系を構成している。
水草が健全に生育できる環境を保全するためには、水草の種組成の変化と現存量の消長を、湖内環境の変化とともにモニタリングしながら、必要となる保全方針を積極的に進めることが必要である。なお、水草の経年的な消長を明らかにするためには、同一手法によって可能なかぎり長期間のモニタリングを継続し、比較可能なデータを蓄積することが重要である。
青森・秋田両県では2001年(平成13年)に取りまとめた「十和田湖水質・生態系改善行動指針」において、水草はモニタリング項目のひとつとして挙げられ、十和田湖における水草の役割を踏まえた取り組みがすでに進められている。