日本財団 図書館


・ヌマチチブ
 
写真:十和田湖産
全長71.2mm 杉山秀樹氏提供
 
 北海道から九州まで広く分布している。現在、湖内において本種は普通に認められており、個体数も少なくない。頼19)は1978年にチチブを確認したとしているが、これはヌマチチブに該当するものと推察される。
 
・ウキゴリ
 
写真:十和田湖産
全長134.1mm 杉山秀樹氏提供
 
 北海道から九州まで広く分布している。頼19)は、1978年に本種を確認している。最近は、湖岸において大型のものを含め、各サイズのものがごく普通に認められる。
 
・ジュズカケハゼ
 
写真:十和田湖産
全長65.2mm 杉山秀樹氏提供
 
 国内では北海道から九州まで分布している。頼19)は、「おそらくコイ、フナの放流種苗に混入してきたものと思われるが、2〜3年の間に異常なほど繁殖し」と報告している。最近は湖岸において認められるが、その生息量はふくべ網で少量が混獲される程度で、特に多いという状況ではない。
 
・ドジョウ
(参考写真:神奈川県水産総合研究所内水面試験場ホームページ http://www.agri.pref.kanagawa.jp/suisoken/naisui/n_index.asp
 国内に広く分布しているが、特に、水田やその周辺の水路に多い。湖内では、頼19)が1971年に確認しており、その起源について「十和田湖水族館の展示用として搬入されたものが逃逸したものか、遊漁者の持ち込みによるもの」と推定している。最近においても、ワカサギを対象としたふくべ網により、わずかながら採捕されている。
 
・ニジマス
(参考写真:神奈川県水産総合研究所内水面試験場ホームページ http://www.agri.pref.kanagawa.jp/suisoken/naisui/n_index.asp
 疋田・谷口8)は、1900年に中禅寺湖から十和田湖岸の子ノ口のふ化場に移殖し放流され、その後、1919年にも放流されており、「現在も時々獲られて」いる、としている。また、1920〜30年代には、北米産の発眼卵を導入したり、青森県及び秋田県により本種が放流されていた。頼19)は、1973年に本種のアルビノ個体を確認している。最近は本種の採捕記録はなく、十和田湖には定着していないと推察される。
 
・ビワマス
(参考写真:滋賀県ホームページ http://www.pref.shiga.jp/biwako/koai/know/live/live_g3.htm
 ビワマスは琵琶湖特産で、中禅寺湖、木崎湖などにも移殖されている9)。秋田県水産試験場2)は、本魚種の放流記録として、1900年に日光より卵にて購入したものを5,000尾放流したと記載しているが、その後の放流記録はない。また、本種の採捕記録はなく、定着しなかったと推察される。
 
・サケ
(参考写真:神奈川県水産総合研究所内水面試験場ホームページ http://www.agri.pref.kanagawa.jp/suisoken/naisui/n_index.asp
 北太平洋、日本海及び北極海の一部に分布する。国内では、日本海側は九州北部以北、太平洋側は利根川以北に分布する。十和田湖への本種の放流記録は1905年にあるが、増殖に失敗したとされている8)。本種については、天然水域で淡水に陸封(残留)された個体群は知られていない。試験的には4年間の淡水飼育が可能であるが、生残率が極端に低くなる。
 
・カワマス
 本種は北米大陸の東部原産で、日本へは1902年に日光湯の湖へ移殖されたのが最初である9)。十和田湖においては、1900年及び1909年に放流記録がある8)。その後の採捕記録はなく、定着しなかったと推察される。なお、東北地方で川鱒(カワマス)と呼称される魚種は、イワナ属の本種ではなく、サクラマスであることが多いので、注意が必要である。
 
・ブラウントラウト
(参考写真:神奈川県水産総合研究所内水面試験場ホームページ http://www.agri.pref.kanagawa.jp/suisoken/naisui/n_index.asp
 ヨーロッパ原産で、日本へは昭和初期にアメリカ経由で移殖されている9)。十和田湖においては、2000年10月31日にさし網により全長52cm、体重1,970gの1個体の採捕記録があるだけである6)。その後の採捕記録はなく、湖内には生息していないと推察される。なお、十和田湖周辺の釣り堀では本種も釣りの対象となっており、その入手は比較的容易である。
 
・イトウ
(参考写真:青森県水産総合研究センター内水面研究所ホームページ http://www.pref.aomori.jp/suisan/naisuimen/
 本種は国内では北海道、国外では南千島、サハリン、沿海州などに分布する9)ほか、以前は青森県小川原湖や岩手県北部にも生息していたが、現在は絶滅した13)。本種は、1991年に遊漁者による釣獲記録があるほか、2000年にはさし網による2個体の採捕記録があるだけである。いずれも大型の成魚であり、十和田湖に定着していないと推察される。なお、1990年前後には湖畔で飼育されていたほか、現在、十和田湖周辺の釣り堀では本種も釣りの対象となっており、その入手は比較的容易である
 
・コレゴヌス(Coregonus)属
 コレゴヌス属は、ヨーロッパからロシア、北米大陸に分布しており、シロマス、コクチマスなどの和名が付けられている。十和田湖に放流されたコレゴヌス属は種は不明であるが、疋田・谷口8)Coregonus chadary、C. ussuriensis、C. albus、C. clupeaformis、のいずれかであるとしており、1929年及び1930年に放流記録があるとしている。
 丸山ほか12)は、ホワイトフィッシュC. clupeaformisが1929年に北米ミシガン湖産発眼卵が秋田県に50万粒配分されたことを記載している。秋田県3)においても、「農林省より米国産原卵50万粒の無償交付を受けたるを以て・・・中略・・・孵化し魚児324,336尾を田沢湖、十和田湖、及びその他県内適当湖沼に放流したり」と記載しており、同年に十和田湖に導入された魚種はC. clupeaformisである可能性が強い。
 一方、秋田県水産試験場4)は、「農林省の斡旋により欧露湖水産白鱒(C. maraena)原卵」を購入したとし、同書において、1930年2月22日にオホルフスキー第一国立孵化場から白鱒卵25万粒を購入し、その内、十和田湖に8万粒を搬入し63,680尾を放流したと記載している。
 丸山ほか12)によれば、1930年2月17日に農林省の斡旋で敦賀港にソ連邦テエドスコエ湖産及びウオルフォブ河産のC. lavaretus baeri及びC. lavaretus maraenaの発眼卵が導入されている。これらの記載から、この時に十和田湖に導入された魚種はC. lavaretus maraenaであったと推察される。
 これらのことから、コレゴヌス属魚類については2種が放流されたと考えられるが、放流後の採捕記録はなく、両種とも再生産せずに終わったと推察される。
 
・アユ
(参考写真:神奈川県水産総合研究所内水面試験場ホームページ http://www.agri.pref.kanagawa.jp/suisoken/naisui/n_index.asp
 北海道日本海側から南のほぼ日本全国、朝鮮半島、中国大陸沿岸などに分布する。最近、沖縄に生息しているものは別亜種であることが明らかになった。琵琶湖に生息するものは陸封型として知られており、形態的、遺伝的に異なる。十和田湖には1945年に琵琶湖産稚アユの放流記録があるが、その後の採捕記録は無い。
 
・ウグイ
(参考写真:神奈川県水産総合研究所内水面試験場ホームページ http://www.agri.pref.kanagawa.jp/suisoken/naisui/n_index.asp
 琉球列島を除き、ほぼ全国に広く分布する。十和田湖には「移殖された記録があるが、現在発見されていない」8)とされている。一方、頼19)は1975年に体長30cmの個体を確認しており、さし網でたまに漁獲されるとしている。しかし、最近の採捕記録はなく、定着していないと推察される。
 
・ナマズ
(参考写真:神奈川県水産総合研究所内水面試験場ホームページ http://www.agri.pref.kanagawa.jp/suisoken/naisui/n_index.asp
 国内に広く分布しているが、東北地方や北海道に生息するようになったのは明治時代以降と考えられている。湖内の生息状況について、疋田・谷口8)は、「放流記録はあるが現在発見されていないので失敗したのだろう」としている。採捕記録は無く、生息していないと推察される。
 
・ウナギ
(参考写真:青森県水産総合研究センター内水面研究所ホームページ http://www.pref.aomori.jp/suisan/naisuimen/
 日本全国に分布するが、東北地方及び北海道では少ない。1955年に1m、1971年に1.03mの個体が採捕された記録がある19)。疋田・谷口8)は、「かつて放流したことがある」とし、1958年6月に103cmの個体が採捕されたことを報告している。本魚種は湖内での再生産は不可能であり、単に放流された個体が採捕されたり、偶発的に出現した程度と考えられる。
 
・カジカ
(参考写真:神奈川県水産総合研究所内水面試験場ホームページ http://www.agri.pref.kanagawa.jp/suisoken/naisui/n_index.asp
 本州、四国及び九州の一部に分布する。河川の礫底などに生息し、一生を淡水で過ごす。湖内における本種の生息状況について疋田・谷口8)は、「現在も普通に発見される」としている。また、十和田湖ふ化場にも本種の標本があった(この標本は、最近になって廃棄されたという)。しかし、最近は本種の確認事例は無く、常在種ではないと考えられる。
 当時、実際に本種が多く生息していたとすると、何らかの理由によりその後絶滅したことになり、興味深いことと考えられる。ただし、地元ではハゼ科魚類をカジカと呼称しており、これが混同されていた可能性も否定できない。
 
・ヨシノボリ属
(参考写真:神奈川県水産総合研究所内水面試験場ホームページ http://www.agri.pref.kanagawa.jp/suisoken/naisui/n_index.asp
 ヨシノボリ属はほぼ我が国全土に分布している。疋田・谷口8)は、「終戦前、大湊海軍要港部で、琵琶湖のフナを放流した際、この魚種卵が水草に付着して運ばれて、それが繁殖したものである。現在も相当採取されている。」と記載している。しかし、疋田・谷口8)の魚類相リストにおいてハゼ科魚類はヨシノボリだけで、現在、普通に生息が認められているヌマチチブ、ジュズカケハゼなどの他のハゼ科魚類は認めていない。このことから、他のハゼ科魚類の誤認である可能性も否定できない。また、本種は産卵に際して水草を基質として利用することはなく、礫の下面に卵を産み付けることから、この記載内容に関しても疑問がある。
 なお、最近、ヨシノボリ属はトウヨシノボリ、オオヨシノボリなど10種前後に分類されているが、かつて生息していたとされる本属魚類の種名は不明である。現在、本属魚類は認められていない。
 
・アブラハヤ
(参考写真:神奈川県水産総合研究所内水面試験場ホームページ http://www.agri.pref.kanagawa.jp/suisoken/naisui/n_index.asp
 国内では本州のみに分布する。湖内では、2000年10月にふくべ網で1個体が採捕されている。この他に採捕記録はなく、定着していないと推察される。
 
・ゲンゴロウブナ
(参考写真:神奈川県水産総合研究所内水面試験場ホームページ http://www.agri.pref.kanagawa.jp/suisoken/naisui/n_index.asp
 琵琶湖特産であるが、大阪周辺で生産されたものはヘラブナと称され、全国に放流されている。十和田湖では、2003年8月にふくべ網で採捕された1個体が確認されている。本魚種の由来については不明であるが、十和田湖では毎年、フナ類を購入し放流していることから、これに混入していた可能性が強い。しかし、偶発的に確認されたものと推察され、定着していないと推察される。
 
・タイリクバラタナゴ
(参考写真:神奈川県水産総合研究所内水面試験場ホームページ http://www.agri.pref.kanagawa.jp/suisoken/naisui/n_index.asp
 揚子江などアジア大陸東部が原産で、国内には1940年代初頭にハクレン、ソウギョなどの種苗に混入して入ったと考えられている。現在は、北海道から九州まで広く定着している。湖内では1996年6月にふくべ網で複数個体が採捕されている。本種はイシガイ等の淡水性二枚貝に産卵をするが、湖内にはこれらの貝類は生息していないことから、偶発的に採捕されたものであり、湖内では繁殖・定着していないと推察される。
 
・オオクチバス
(参考写真:神奈川県水産総合研究所内水面試験場ホームページ http://www.agri.pref.kanagawa.jp/suisoken/naisui/n_index.asp
 北米原産で、日本には1925年に神奈川県芦ノ湖に移殖されたのが最初であるが、最近は全国で生息が認められるようになった。湖内では1997年11月11日に、目合い3寸のさし網により採捕されている。この個体は全長32.2cm、体重552gのオスで、胃内容物としてスジエビ1個体が認められた11)。その後、本魚種が採捕された記録はなく、生息していないと推察される。







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