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1)調査活動の概要
 
 「しんかい2000」は、世界最深の潜航能力を誇る「しんかい6500」の先駆けとして数々の技術面や運用面におけるデータを蓄積し、提供してきたことはもちろんのこと研究や調査活動の面でも数多くの実績を挙げてきました。例えば、「初島沖のシロウリガイの発見」「伊平屋海嶺での熱水マウンドの発見」「伊是名海穴でのブラックスモーカー*4やCO2ハイドレート*5、それに熱水噴出孔での生物群集の発見」及び「北海道南西沖地震域での海底調査」など、これらどれをとっても第一級の成果ばかりです。
 
調査のイメージ図
 
 
 
 一方、「しんかい6500」による調査では、1999年に日本海溝の6100mの地点で、プレートの沈み込みによって生じたと思われる裂け目を世界で最初に確認したのをはじめ、昭和8年に三陸沖で発生した三陸沖地震の余震域での海底の裂け目や陸側斜面でのバクテリアマット*6それに湧水生物群などの発見をしました。また、1994年10月には、鳥島沖の水深4036mにおいて、クジラの背骨に群がるシンカイコシオリエビやゴカイ類のほか、それに付着するイガイを多数発見しました。これは、後に「鳥島鯨骨生物群集」と命名されました。その後、平成6年には日米共同研究のMODE'94(mid-oceanic ridge diving expedition: 中央海嶺潜行調査計画)では、大西洋、太平洋での潜航を行い、世界最大級の熱水活動などを調査しました。その後も、これまでの調査海域はもちろんのこと、インド洋にも調査海域を広めて調査活動を実施しています。
 
深海底で発見された鯨骨とそれに群がるシンカイコシオリエビの仲間たち。
 
 

*4 海底から噴出する熱水が黒く見えるもの。詳細は『(2)有人潜水船で観た深海底の様子』参照
*5 高水圧と低温によって炭酸ガスと水分が混合されてつくられた半氷状態のもの。
*6 バクテリアが多数の集落(コロニー)を形成し、マット状になって見えるもので、これは、深海底のみならず、私たちの生活環境の中(例えば、ドブ川や湧水口の周辺など)でもしばしば観察することができます。







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