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(2)マルチナロービーム音響測深機(malti narrow beam echo sounder)による探査
 これは、たくさんの細い測深ビーム(音波)で海底の広範囲の深度や状況を知ることができる装置です。従来、海底地形図は、測深ビームが1本(単ビーム)型の音響測深機によって、観測船の真下の測深情報を基に作成されてきました。しかし、1970年代に米国(General instruments社)で、同時に多くの測深データを得ることができるマルチナロービーム型の音響測深機(商品名:Sea Beam)が開発されてからは点から面への測深技術の革新が行われました。
 マルチナロービーム音響測深機は、現在、「かいれい」「みらい」「よこすか」「かいよう」の各船舶に搭載されています。それの装置は、図1に示したような12KHzの多数の送波ビームと狭い受波ビームとの組み合わせにより(たて)2°×(よこ)2°の細いビーム(ペンシルビーム)を形成し、一度に多くの測深データを得ることができるため、水深のほぼ3〜4倍の範囲の海底地形図(図2)を作成することができます。なお、最近は、深海底の沈船や落下物を捜索する際の概査用としても活用されています。
 
図1 シービームの概要
 
図2 シービームによる調査海域の海底地形図
 
(3)サイドスキャーンソーナー(side scan sonar)による探査
 サイドスキャーンソーナーは、海底の物体に影を作って、その大きさと形を知ることのできる装置です。この装置の原理は、図3に示したように、海底からある高度を保って曳航されるディープ・トゥシステム*1(図4)に積まれた送受信装置から薄い扇型のビーム(Fan Beam: 図5)を斜め上方から送波し、海底の凹凸にぶつかって戻ってくる信号の時間から距離を算出し、併せて信号の強度を色の濃淡に変えて、2次元的に表示するものです。そもそもこの装置は、1960年代に米国の原子力潜水艦の沈没事故の調査を行うために開発されたものですが、その後、信号処理や画像処理技術の進歩により、精度や画質が格段に向上したことから、近年、沈船や墜落した航空機の探査などに盛んに使われるようになってきました。
 また、この種のもので、周波数が数+KHz〜数百KHzのものがプレジャーボートでも使用されていますが、この場合の探査幅は、数百m〜数kmで、解像度は、数cm〜数m程度です。
 
図3 サイドスキャンソーナーの原理
 
図4 「ディープ・トウ」システム
サイドスキャンソーナー曳航体
 
TVカメラ曳航体
 

*1 船上から(電力や信号を送る)ケーブルによって吊り下げられて海底附近を曳航し、調査を行うシステムのことです。これには、ソーナーシステム(図4写真左)とテレビシステム(図4写真右)とがあり、それぞれ、調査目的により使い分けられます。







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