本書および写真教材の使い方
はじめに:フォトランゲージとは?
本書はセットになっている写真教材と組み合わせて使うことにより、学校での総合的学習などにおいて国際理解・開発教育をはじめるのにうってつけの教材となります。
写真を通じて世界や自分たちの地域の現状や問題を理解させる教授法を「フォトランゲージ」といいます。この教授法は文字通り写真(フォト)それ自体が、世界や地域の現状や問題を語る言葉(ランゲージ)となります。そして学習者が写真を観察し、そのメッセージを読みとり「これは何だろう」と推理・想像することによって、学習意欲や興味関心が高まります。
このような体験を通じて、世界や自分たちの地域の多様な生活や文化を理解し、またそれぞれの社会が抱える様々な問題を分析しその解決法を考えることによって、主体的な学習能力、問題解決型の学習能力を高めるのに役立ちます。とりわけ、本書および写真教材は中部地域NGO/NPOの実際の活動に基づいてつくられているため、現実性(リアリティ)をもって、地元のNGO/NPOによる身近な活動としてより理解を深めることが出来ます。
本書および写真教材の見方
本書はPART1〜3を通じて、下記のような構成になっています。すなわち、見開きの左ページ側には世界および地域の現状や課題(A「人々の暮らし」、B「直面する問題」、C「NGO/NPOの活動」、D「子どもたちの姿」)を写真つきで解説してあります。また、右ページ側は活動を行っている団体の概要紹介(ダイレクトリー)および活動対象地の概要を記載してあります。
写真教材を使ったプログラム例
ここでは3つのステップに分けて写真教材の使い方のアイデアを紹介してあります。ステップ1は学習の導入として写真に興味を持つ、ステップ2は世界について考え、ステップ3は問題を分析し、解決することを主眼においています。なお( )内の時間はあくまで目安です。
ステップ1:学習の導入
●使い方その1:「仲間捜しゲーム」(10〜20分)
ねらい:アイスブレーキング(緊張をほぐす)、興味を持たせる
使い方:
(1)適当に小グループ(4〜6人)を作る。
(2)ランダムに写真を並べて、グループでどの写真が同じ国のものか考えてもらう。
*人数が16人以下なら、一人1枚ずつ写真を持って同じ国と思う人で集まってもらってもよい。
(3)正しい組み合わせを伝える。
●使い方その2:「国あてゲーム」(10〜20分)
ねらい:アイスブレーキング、興味を持たせる
使い方:
(1)4枚の写真が、A「人々の暮らし」B「直面する問題」C「NGO/NPOの活動」D「子どもたちの姿」を伝えるものであることを知らせる(一部例外があるのでご注意下さい)。
(2)グループでどこの国の写真か考えてもらう。
(3)基礎的なデータをいくつかヒントとして出しても良い。例えば、人口、面積、など。
(4)各グループで答えを発表してもらってから、正解を伝える。
ステップ2:世界について考える
●使い方その3:「お話を作ろう」(40〜60分)
ねらい:共感を育てる、自分の思い込みに気づく、世界について知る、多様な視点で物事を見る
使い方:
(1)各グループ(4〜6人)に写真(A〜D)を4枚渡す。
(2)写真の中の人物になり、4枚の写真の説明をしながら国の紹介や問題点についてお話しを作るように指示する。
(3)各グループがみんなの前で発表する。
(4)発表が終わったら写真の解説を紹介する。
(5)グループで話し合って感想を言ってもらう。
●使い方その4:「写真を描いてみよう」(30〜50分)
ねらい:自分の思い込みに気づく、世界について知る、多様な視点で物事を見る
使い方:
(1)6人程度のグループを作る。各グループに筆記具と紙を渡す。
(2)各グループに1枚写真を用意し、グループの人の見えないところに貼っておく。
(3)グループの中で写真を「見る人」と「描く人」(半数ずつ)を決める。
(4)「見る人」は1人ずつ自分たちのグループの写真を見に行く。1回につき30秒として、プログラムの進行者は時間を伝える。写真を見た人は戻ってメンバーに写真の様子を伝える。「描く人」は話を聞きながら紙に書いていく。
(5)各グループの絵がだいたい完成するまで、何度か同じ事を繰り返す。最後の人には2分間、絵を見てもらう。
(6)グループで話し合って絵を完成させる。絵が完成したら、写真は「何をしているところ」で、「どの国の写真か」を考えて決める。
(7)各グループが自分たちの絵について発表する。発表後、それぞれの絵と写真を並べて貼り出す。
(8)それぞれの写真について説明する。
(9)感想をグループで話し合って言ってもらう。
●使い方その5:「違うね、同じだね」(30〜40分)
ねらい:共感を育てる、世界の様子や人々の生活について知る
使い方:
(1)違う国の同じテーマの写真を4枚並べて、グループで「違うところ」と「同じあるいは似ているところ」を話し合って書き出してもらう。
(2)書き出したものを発表してもらう。
(3)写真の解説を紹介する。
(4)思ったことをグループで話し合って、発表してもらう。
ステップ3:問題を分析し解決する
●使い方その6:「問題は何?」(60分)
ねらい:海外の様々な問題の原因、影響、自分とのつながりを考える
使い方:
(1)「その国の人々が抱えている問題点」を表す写真を各グループに1枚ずつ配布する。
(2)写真の解説を紹介する。
(3)「どのような問題があるのか」「その問題が起こる原因」「問題が及ぼす影響」「問題と自分とのつながり」解決のためにできること」をグループで考えてもらう。それぞれのグループが異なる国について考えても良いし、全てのグループが一つの国について考えても良い。
(4)各グループの発表を聞く。聞きながら、思ったことを話し合う。疑問点がでたら書き出していく。
(5)疑問点や発表の内容に関して、プログラムの進行者が補足説明することがあれば説明する。疑問点を今後の調べ学習などの課題とする。
●使い方その7:「どんな活動?」(40〜60分)
ねらい:国際協力の様々な形を知り、その特色や背景に気づく。
使い方:
(1)「団体の活動内容」を表す写真をグループに配布して、どのような活動をしているのか想像する。グループで考えをまとめ、他のグループに説明する。
(2)(1)で感じたことを個人で1件につき1枚のカードに書き、グループでそれぞれのカードを模造紙にカテゴライズ(分類してまとめる)。まとめたものを全体で共有。
(3)(2)で分かったこと、もっと知りたいことを個人で書き出した後、グループで共有。出された「もっと知りたいこと」ついてグループごとに数点ピックアップして、調べ学習などにつなげる。
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