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第5回ヒューマンファクター調査研究委員会
(議事概要)
1. 日時 平成15年12月19日(金) 午後2時から午後4時40分
2. 場所 高等海難審判庁 審判業務室
3. 出席者 加藤委員長、久保田、今村委員 を除く各委員
4. 議題
(1)英国、ノルウェー海難調査の現状報告
(2)事故調査報告書に関する米国沿岸警備隊(USCG)からの回答
(3)インシデント等の危機情報を共有化し、有効活用するために必要な環境整備の構築の検討
(4)ヒューマンファクター概念に基づく海難・危険情報の調査活用等に関する調査研究 最終報告書(案)について
5. 資料
(1)座席表
(2)英国、ノルウェー調査報告書
(3)米国沿岸警備隊(USCG)からの「海難調査手続」、「事故調査報告書」に関する回答
(4)インシデント等の危機情報を共有化し、有効活用するために必要な環境整備の構築の検討
(5)ヒューマンファクター概念に基づく海難・危険情報の調査活用等に関する調査研究 最終報告書(案)について
6. 議事概要
(1)事務局から委員の交代について報告があり、村田委員と交代した伊東委員及び増田委員と交代した半田委員を紹介した。
(2)英国、ノルウェーの海難調査の現状報告
 海難審判協会小西理事長から資料「訪欧調査報告書」に基づき報告した。これに対して次の質疑応答、意見があった。
◎彼らもこの10年ぐらいの経験のようだから、日本もそんなに悪くないところに来ているかなと思って聞いた。
◎ノルウェー、イギリスともに審判への取り組みとして、ヒューマンファクターの概念に基づいた海難調査をするという報告であった。具体的なものとして何かわれわれの参考になるものはあるか。
○特に具体的なものは出ていない。非常に学問的なところで終わっていて、実際に具体的になると実例を取り上げてやっていくよりしょうがないのではないかなと思われる。
○175ページのところにその点についてフレームされている。「海運界では、全般的に(中略)ヒューマンファクターエレメントの正しい知識体系が確立されていないのが現状である」というご指摘がある。これも頭に入れながら、今後われわれとしてどうするかということを勉強していくということにさせてもらいたい。
○Southampton大学を訪問した際、MAIBのインスペクターが勉強に来ており、会う機会があった。この人は漁船関係の事故を専門にやっていて、202ページに書いてある「『漁船員が見張りを十分に行わなかった』のは、『何かが漁船員をしてそうさせたのである』から、直接の原因の背後には、『漁船員をある行為に駆り立てる何かがある、すなわち、漁業界の安全文化に鍵があるのではないか』」ということで、ヒューマンファクターの観点から勉強していた。英国のMAIBでもヒューマンファクターをまだ取り上げたばかりで、職員がほうぼうに勉強に出かけていって研究に取り組んでいるという状態である。
(3)米国沿岸警備隊(USCG)からの「海難調査手続」、「事故調査報告書」に関する回答
 資料「米国沿岸警備隊(USCG)からの「海難調査手続」、「事故調査報告書」に関する回答」については、質問があれば事務局へ連絡することとした。
(4)インシデント等の危険情報を共有化し、有効活用するために必要な環境整備の構築の検討
 事務局から資料「インシデント等の危険情報を共有化し、有効活用するために必要な環境整備の構築の検討」に基づき説明した。
 これに対して、次の質疑応答、意見等があった。
◎特にインシデントという問題は、海難審判庁は事故についての審判をしているところであり、いわゆる事故の前の蓋然性の範囲の問題については、もともと非常に取り扱いの難しいところである。従って、2(1)のところに「第三者機関を使って共有するデータ云々」ということが書いてあるが、こういうことが適当であるかどうかというご意見もいただきたい。
◎民側の役割、官民の役割というフローがついていますが、民側の役割という項目がある以上は、官側のフローもつけたほうがバランスがいい。
◎先ほどの報告にあるように、欧米はすでにアメリカあるいはノルウェーで新しい制度が始まった。日本も同じように、やる気で制度改革をやろうということとして皆で相談しましょうというアジェンダと心得てよいか。そういう方向であればその方向で議論に参加したいが、「いや、やはりまだいろいろ難点があって難しいですから、ある程度現状のままでいくしかありませんね」という言い訳的な会議になるのか。そのへんをはっきりしてもらいたい。
○現状肯定という考え方に立ってこういう委員会を開いても、あまり意味がない。やはりいいところはいい、悪いところは悪いということをはっきり指摘して未来像に迫るという基本姿勢が必要ではないかと思う。
○踏み込むべきである。
○やはり踏み込めという意見のようである。踏み込むということは具体的にどういうことかということ、1つの形をつくること、つまり仏をつくって魂の部分をどうするかという話になろう。魂ということになると、そう簡単には魂は入らないのではないか。しかしこうあるべきだという理想像はある程度クローズアップさせなければ委員会の最低条件は満たさないと思う。できるだけ限りなく魂に近づくということは当然だろうと考える。
○最低でも「べき論」は述べておかなければいけないのではないか。
○航空・鉄道事故調査委員会の方は、法改正によって実現したという説明が先ほどあったが、海難審判庁のほうも、やはり法改正とかそういう手続きを伴わないと一歩踏み込めないのかどうかも確認させてもらいたい。
○制度部分にいては、ヒューマンファクターとどの程度関係するのかはなかなか難しい。ヒューマンファクターの概念を裁決の中に取り込むという話と、組織論の話がどの程度結びつくかよく分からない。今の段階では、裁決に関して委員の知恵を借りながら、ヒューマンファクターの要素を入れて考えていこうということで、一歩、実現しようとしている。それからもう一歩、勧告制度についても、審判庁として検討会を立ち上げようではないかということで考えている。それから国際協力に関しても、海難調査に関して今までやっていない国と協定を結んだり、IMOに対して働きかけていこうという動きをしている。そのようなことで、いわゆる海難審判に関わる原因究明と再発防止に関して、制度上どこまで変えるか、その制度がどこを指しているかはなかなか難しいと思うが、審判庁としては、今述べたように、行政を遂行していくに当たってのいろいろな知恵を出して改善を図りつつあるという状況である。
(5)ヒューマンファクター概念に基づく海難・危険情報の調査活用等に関する調査研究 最終報告書(案)について
 事務局から資料「ヒューマンファクター概念に基づく海難・危険情報の調査活用等に関する調査研究 最終報告書(案)について」に基づき説明した。
 これに対して、次の質疑応答、意見等があった。
◎議題(3)及び(4)につきましては非常に大事なところであり、意見もたくさんあろうかと思う。なかなか言い尽くせない側面もあると思われるので、意見等について本日の会議時間ではとてもやりきれないということもあり、ファクス、メールで事務局へ連絡いただき、次回の委員会において対応するということで処理したい。
◎資料に「水産界」という言葉がいくつか出てくる。これは非常に重要なところで、漁業界なのか、水産界なのか、特に海難審判との関係でいくと、水産界というのは言葉としては適当ではないと思われる。水産という場合は漁船、漁業だけを指すのではなくて、極端なことをいうと、冷蔵庫まで入ってしまうのが我々の概念である。
◎今回の報告書の原案全般を見ると、前回よりは相当よくなっていると思う。インシデントについては、今後、海難審判庁が審理の対象にするような方向にもっていくのかどうか。
○審判庁では従来どおり、重大インシデントに相当する事件についてはやるが、それ以外の一般でいうインシデントは難しいだろうという考え方で整理している。
◎最後のまとめA3版のフローチャートはカラーで大変分かりやすく1枚にまとめてあり肯定的に見たいと思う。ただし、文脈でもう少し強調してほしいのは、最初の人的要因からオレンジ色で非常に太く矢印が下に出ているが、これと同じ色で同じ太さで、いちばん下の海難の減少までつなげてほしい。そうすることによって見る人は非常に理解しやすくなると思う。
(6)その他
(1)トライポッド因果関係モデルによるヒューマンファクター分析手法の紹介
 事務局から資料「人的要因への取り組み(UK P&I Club東京セミナー)」を紹介した。







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