日本財団 図書館


27. 目標は留学と1級合格
湖北汽車工業学院 834 高橋良江
 昨年9月に入学した「外語中心日本語班」の学生27人が1年3ヶ月の学習を終えて、この11月授業を終了しました。そして現在、また新しい出会いが始まっています。この学生達の最終目標は日本の大学、語学学校への留学と日本語能力試験1級合格です。
 授業内容としては、9月〜翌1月まで標準日本語初級上下、2月〜6月まで中級上下、新年度9月〜11月まで中級、上級で学ぶテーマ別日本語の全てのテキストをこなします。現在、私の担当は、精読と聴解です。5人の日本語の教師がいますが、授業の進め方に関する話し合いはありません。最終11月の10日頃授業が終わり、試験までの1ヶ月、自宅で学生達と受験準備をします。
 大学の方は一般教養で日本語を学習しますが、4ヶ月サイクルなので、余り進むことができません。でも、今年9月から現在まで学習を続けたいとの申し出があり、個人的に教えています。汽車系の学生ですから、他の教科の合間を縫ってのことで、なかなか効果はでませんが、スムーズな日本語での会話を楽しみにがんばっています。
 その他培訓の学生が15人います。この学生達には毎時間、会話を中心にしたオリジナルプリントを作成しています。中には会社の上司が日本人であったり、日産自動車からの電話応対に日々日本語が必要であったりする者もいて、とても熱心です。
 私の方は本校3年目ですが、学生は毎年入れ替わっています。でも、共通して言えることは、どの学生達も、休み時間になると、自分の知っている限りの日本語を使って、必死に話しかけてくる姿がとてもほほえましいことです。
 
28. 広大な敷地に移転中
南平師範高等専科学校 1000 榊 藤利
 本校は名前は南平師範ですが、本年度から福建省武夷山市に移転を始めました。現在、外語系(英、日語)を含め4学科が移転を完了しています。市郊外の原野の、丘を削り低地を埋めて造成した広大な敷地に、続々と新しい建造物が出現しつつあります。総てが完成すると、現在の10倍の規模になるのだそうです。
 日本語科は今年度新設されたばかりで、学生は1学級・50名です。中国人教師が3名いますが、うち1人は英語科の二外専任なので、私を含め3人で専門教科を担当しています。私の担当は週4時間の「語音」です。教科書はありません。目下、「標準日本語」を使用出来るよう申請書を提出して交渉しているところです。他に英語科の二外を週6時間担当しています。来年度1年生が入学して2学級になったら、日本人教師は日本語科専任にしてくれるよう要請しているところです。
 次年度も、学生は日本語は白紙の状態で入学してきますし、新設学科ですから上級生は通訳をしてくれるほどの力はありません。私は中国語が少し出来るので別段苦労はしませんでしたが、本校では英語の先生の方が却って有利かも知れません。
 学生は素直ですし、日本語科の授業は、毎時間楽しくやっています。
 
29. 学生の何人かは市内の日語培訓塾でバイト
福建師範大学福清分校 907 望月景子
 現在1年生の会話2クラス、2年生の聴解、3年生の視聴、それに日本語コーナーを担当している。今年度から1年生が1クラス30名になり、大変やり易くなった。学生も意欲的であるので「しんにほんごのきそ 1」に語彙を補充する工夫をしている。
 2、3年生の視聴覚教材はやや乏しい上に、持参のビデオ(VHS)が見られなくて残念だが、日本からのDVDやこちらで個人的に借りたものでつないでいる。
 学校は4年生大学への移行をすすめている。3年生の教育課程には「国際金融」や「国際投資」などが新しく組み込まれた。それを負担にかんじるのか、10月からもう実習に入る学生もでてきている。難しい理論より社会体験や日本語能力を・・・というところか。
 福清は特別に日本語の需要の大きいところである。それは、1980年代日本への出稼ぎで潤った人が沢山いて、今なお、その夢を追っている人が多いからである。市内には日本語を特訓する塾「培訓」の文字があちこち目につく。学内にも培訓クラスがあって、中国人の日本語教師7人の殆どがそのクラスで教えている。そして、日本語科3年生の何人かは市内の培訓でアルバイトをしている、というのが現状である。
 
30. 親切で礼儀正しい学生たち
延辺大学農学院 992 原 史江
 大学に付属している外語センターで、1年から3年まで3クラス94名の会話を担当している。まず最初に驚いたのは、中国の若い日本語教師8名の日本語の上手なこと。そして親切で礼儀正しい学生たちの人懐っこいこと。
 同じアジア人ということだろうか。退職して6年になるのだが、時間と空間がふっとどこかへ飛んでいって日本の学校で生徒たちと暮らしていた生活の続きをやっているような錯覚を覚えたりした。こちらが中国語が全くできず、不器用なおばあさんのまま、ただ夢中で読ませたり言わせたりやっていて、かえって世話になっている事実の反映かもしれない。
 そういう中で抱えている問題としては、日本語の能力や意欲に差があるということである。質問に対してすばやく答える人のいる一方で、質問の意味が分からない人がいる。多少の差があるのは、日本の学校で経験済みなのだが、日本語を学んでいる3、4年目の人と全く初めての人を前に、こちらは日本語だけで問いかけているので、工夫が足りないと反省しながら悩んでもいる。が、先輩の先生や若い先生方、優しく健気な学生たちにもいろいろ教えてもらって、熱い思いだけはあるつもりなので、何とかやって工夫しようと思っている。
 コピーは頼めばすぐやってもらえるそうだが、自分のプリンターを使っている。
 重宝しているのは「教師と学習者のため−日本語文型辞典」である。
 
31. 教材は日本で準備
河南大学 900 山田節子
 今年は拡大募集で1年生は31名と多く、更に聴講生が常時8〜9名いる。3年生は本科生22名に聴講生3〜4名である。私の担当は3年生については、「作文」「日本映画鑑賞」の2コマであるが、殆どの学生が12月の日本語能力試験1級を受験するので、補講として「聴解」1級の過去問を1コマ使ってやっている。希望者としているが全員参加している。1年生は「会話」、「視聴覚」2コマ、「日本の礼儀社会通念」と計4コマである。特に大学として、はっきりとした各学年の授業のカリキュラムといったようなものはないようである。中国人教師とは一番初めに挨拶程度に話し合うぐらいで、授業について等すべてまかされている。
 3年生の「日本映画鑑賞」は昨年4年生にした科目の一つであるが、今年は聴解力という点を考慮し、前期はNHK「こころ」を教材とした。せりふだけでなく、文化面(動作、服装e.t.c.)にも注意させて見せた。1回終了毎に質問を受けたり、したり、同じものを3回見せ、最後に全員一言感想を言わせた。大変好評であった。また、感想から話題が発展しおもしろかった。
 1年生全員がゼロからのスタートである為、1コマを「聴解」を主に、3コマを初級文法をやりながらの「会話」にしている。「しんにほんごのきそ」を参考にやっているが「精読」で使っている「新編日語」の内容との関係もあり、すべて柔軟にやっている。
 今年から、理系学部の一部が別の敷地に建設の新校舎に移転。二つのキャンパスになる。現在、教師、学生は大学のバスで行き来している。大学の建物は古いものもあり、いつもどこかで工事中である。しかし、落ち着いた緑の多いキャンパスで、散歩しても気持ちがいい。学生も礼儀正しく素直である。
 教材については大学にはないので、日本で準備していく方がよい。また、パソコン、プリンター、電子辞書、日本語文型辞典、日本語文法ハンドブックは役立っている。
 
32. “投げ入れ教材”が使えない
烟台師範学院 977 泉 勝夫
〈担当教科〉 2年生会話、3年生会話、作文、文学選読、合計17時間。
〈授業内容〉 2年生会話は初〜中級程度、3年生会話は中〜上級程度。
 作文の宿題を週1回課し、学生も大変のようだが添削作業も大変。しかし「会話」では得られない学習効果があり、楽しんでいる。極めて、中国語学習者らしい誤用がめだつが、回を重ねるに従って上達してきている。
 選読は中国で出版されたテキストを使い、日本の高1程度の作品を取り上げている(小説)。次第に韻文なども扱ってみたいと考えている。必ず感想文を課している。作文と共に、これも大変だが、面白い。
〈困難点〉  印刷機がなく、新聞なども含め、多様な“投げ入れ教材”が不可能。文学作品等についても扱いたい作品が多いが、できない。持参した本は全く使えない。
 LL教室は立派なのがあるが、空きがなく、日本語科にまわってくることは極めて稀。
 図書館は超デラックスなものが完成したが、日本語の書籍、新聞、雑誌など皆無に近い。
 
33. いい環境、私は幸せ
長春工業大学 946 高木晶子
 当大学の外国語学院が出来て3年目を迎える。1年生42名(2クラス)2年生38名(2クラス)3年生(11名)である。3年生は日本語学習8年目でよくできる。2年生、1年生は大学で初めて日本語を習う。全寮制で、朝早くから夜遅くまで自習に時間が設定されている。しかし大学生活を楽しんでいるようで努力しているようにはみられない。機会ある毎に勉強の必要性を説いている。その度に学生は「先生ありがとう。がんばります。」と感謝して言う。日本の学生にありがとうと言われた事はない。素直、純真そのものである。本科生の中国人教師は大卒1年目、2年目、3年目の3人と35歳の主任である。学校も新しいために、これからいろいろ計画を立てていく段階のようである。指導方法を訊かれるので私も真剣に考え、役立てようと努力している。先生や学生から文法や、語句の使い方などを訊かれるので、「日本語文型辞典」「新明解国語辞典」は必携となっている。
 私は1、2、3年生の会話だけで週13時間、留学希望生に4時間教えている。会話ではあるが現代日本事情が含まれていて専門外の「税について」「住宅事情」「ゴミの処理」「自然破壊」・・など社会科資料のお世話になっている。学生は人なつこく明るく親切で、よく気を使ってくれるし、日本語教師はもちろん、他の学部の先生方も好意的で親切である。そんな所で毎日過ごしている私は幸せである。ただ、印刷費が出ないのは残念である。
 
34. 前途洋々か、前途多難か
西蔵大学 968 日高 明
1, 中国語の読解・聴解・会話は必須で、日本語学科新入生の授業は中国語でなければ、成立しない。学生たちは、この日本語は中国語でどういうのか、とよく聞くし、紙に中国語で書いて、意志の疎通を図ろうとする。内地でも、1・2年生は、中国人が担当すると聞いている。
2, 学習意欲、熱意の較差は著しく、既についてゆけそうもない者も現れ、一方では積極的に日本語、日本に関することを知りたがっている者もいる。語学には暗記が付き物なので連日、課題を出し、小テストで語彙力を付けさせようとしたら、出席しなくなった学生もいた。
3, 本学における、日本語学科の位置付けは微弱で、日本語教育についての専任教官はいない。第二外国語の日本語を担当している中国人教師と私との二人で、よく言えば、フロンティアとして学生の指導に当たっている。前途洋々と言うべきか、前途多難というべきか。
4, 教具等として、パソコン、プリンタ、スキャナ、デジカメの4点セット及び、好みの色のチョーク、ラーフル、クリーナーは必需品である。インク、フォトペーパーは大量に持ち込んだ方がよく、現地のは品質劣悪で使えない。中日・日中入りの電子辞書も極めて便利である。







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