19. パソコンが大活躍
武漢理工大学 981 久保待子
本校は2000年に3校が合併し編制設置された学校数4万人を超える国家重点大学である。日語系はまだ発足2年目であり、教師陣は学生や科の将来を期して意気込んでいる。
授業は中国人教師が文法中心に行い、私は本科1、2年生と第二外国語として選択した研究生の発音や会話を担当している。他に随時、学生向けには「日本文化」「日本事情」講話・生花実演。日本語教師に対しては「日本文学」講話・作文添削の補助・教師が書いた日本文の添削等の仕事が入ってくる。持参のパソコンは検索で資料不足を補ったり、Eメールで日本の友人に調べものを依頼したり、あるいは日常の娯楽にと大活躍している。
今のところ、教科書に沿っての授業であるから、プリント等の作成の必要性は少ないが、将来はどうであろうか。コピー代は学生負担であるが、勉強のためだからと、彼らの金払いは悪くない。
持参した「日本の歌」のCDを毎授業時、聞かせている。学生はこれを楽しみにしており、「夕やけこやけ」は皆大好きになった。自分で買ったラジカセをかついで、宿舎から徒歩30分、街中にある17階建て新校舎に通勤している。
20. 施設・設備は完備、これからが正念場
曁南大学 728 西田 孝
華僑の大学として名を馳せる大学だけに、台湾、香港、マカオだけでなく朝鮮からの学生たちが日本語学科にもいる。昨年度までは、マレーシアからの学生も在籍していた。もちろん、中国本土の学生もいるが、全員日本語はゼロからのスタートである。一年次は珠海、二年次からは広州市内のキャンパスで起居、学習に励む。初級からの学習になるので、基礎段階での指導は油断できない。とりわけ、五十音を軽んじ、調音点、調音法の指導をおろそかにすると、後まで響く。私の担当は三年の「写作」と四年生の「文学」だが、提出されたレポートや作文を見ると「た」・「だ」の区別のつかない学生が多い。
各教室には、OHPが据え付けられ、視聴覚教室には、コンピューター制御の装置が完備。CD、VCD、テープ等あらゆる教材が自由に利用できる。用紙も潤沢にあり、自由に使える。学生の学習態度、真剣。ただ、婉娩聴従型に陥りやすいのが、やや難点。とはいえ、日本語教師として赴任した自分自身の責務は大きい。いかにして効果的な指導ができるか、これからが正念場である。
21. 試験と就職活動の重圧感
佳木斯大学 901 大高キク枝
2年目になる今年の授業は、4年生が主で、何と月曜から金曜までの8時〜10時の時聞帯が連日4年生の授業(精読6H、日本文学4H、共に2クラス合同、階段教室)である。学生にしても教師の身にとっても恐ろしいほど濃厚な触れあいであり、時に苦言も呈し、氣を取り直しての前進である。
4年間の集大成となる12月の日本語能力試験を目前にした今、全般的に素直で真剣に学習する彼らが「毎日毎日ニホンゴ日本語で、少し休みたいです」とも言う。この重圧と緊張感は今後に続く就職活動と相俟って、察するに余りある。偶には気分転換になればと、おにぎり等作って細やかな文化交流を実践してみるが、こんな策しかないのがもどかしくもある。
他に、2年生の会話4時間。こちらは週1回だけ、と少ないのが難点である。クラス(24名・25名)毎の授業で、どちらのクラスも元気一杯、無邪気さが新鮮である。願わくばこの元気でエネルギッシュな大学生活の終結が国際能力試験合格であって欲しい。
押し迫って、欠課して必死の取り組み、授業に出ても心は問題集から離れられないという切迫感を解消できたらと切に思う昨日、今日である。
22. ソフトの充実が今後の課題
青島濱海職業学院 830 長 実
当学院は創立11周年を迎えた。教室も全室完備、昨年学院礼堂と称する大ホールも完成。柿落としには青島海洋交響楽団を招いて交響楽が豪華に演奏された。学生寮も狭いながら完備、学生数約12000人を数える私立学園。キャンパスは青島市の黄島地区の小高い丘に偉容を誇って聳え立っている。
設置学科は、英語系・応用外語系・経済管理系・国際商学系・信息工程系・機電一体化系の6系があって、日本語科は応用外語系に含まれている。
11年かかってハードの部分は概ね整ってきたかと思われる。が、教育はむしろソフトが肝心で、ソフトの充実がこれからの当学院の課題という点は変わらない。
(1)教師の定着率がよくない。少なくとも日本語科においてはこの傾向が顕著である。それの原因は学院管理職側に教師を大切にする態度が乏しい。
(2)収容学生に、高職学級と学歴学級の2種類があっておなじ日本語を専攻していても前者は指導体制・学習環境などに好条件が揃えてあるが、後者には差が大きい。
(3)多くの教室を持ちながらそれが統一的に管理されていない。
(4)教科書の選択が適切でない。進級しても2年間同じ教科書を使わせたり、校正が不十分で間違いの多い教科書をそのまま使ったり、興味関心を引きにくい教科書がそのまま使われたりして学生の学習意欲を刺激しにくい現状がある。
(5)日本語教育の本学の方針や全体像が曖昧で統一的な形で提示されない。
(6)言語学習に視聴覚教材は有力な力になるはずであるが、先ず視聴覚室が自由に使えず、視聴覚機器はクラスごとの学生の負担で購入し、ソフトも学生が持っているもので間に合わせるという行き当たりばったりの現状がある。だからソフトに段階性、系統性がなくテレビ観覧の時間になっている。
(7)教材の印刷が何人ものサインがなくては印刷までたどり着けないという億劫さが教材作りの意欲を減殺させている。
(8)学生数の割りに食堂が少なく食事時には学生の殺到が解消されない。
まだまだ挙げればたくさんあるが、今回はこれぐらいにしておこう。
23. 省の経済発展が教育環境にも投影
桐郷市外国語学院 757 志賀洋子
日本語学科は3年前に新設され、現在学生数は138名である。
詳細は3年生(35名)1クラス、2年生(A班30名、B班28名)2クラス、1年生(45名)1クラス、計4クラスを担当し、本年度募集は50名ほど予定されていて、教科は「会話」「聴解」「読解」と週10時間の指導を行っている。(1コマ40分)
日本語科の学生は概ね熱心で、その努力と熱意に好感が持てる。
さて、各種教材コピーは、学校の印刷室に直接足を運び、その場で注文することができ大いに助かり、その迅速な対応に注目する。
学習面で副教材のコピーは必要不可欠で、安心して授業に専念できる環境に感謝している。またその製品は日本製のコピー機と印刷機であり、印刷機は「RISO GRAPH GR 2700」1台、コピー機は「XEROX VIVACE 338」1台が設置されていて驚いた。
絵やカード、文字、語彙、の縮小・拡大も自由自在で鮮明な文章の仕上がりも満足できるものである。
2000年版省レベルの経済指標(1人当たりのGDP 中国統計概況)では上海市、北京市、天津市を除いて、浙江省が第1位を示し、その著しい経済発展は、教育環境、生活環境においても浙江省(桐郷市)の側面を実感させられることが多い日々である。
24. 中国人日本語教師のレベルも高い
中山大学 958 上原和子
日本人教師は私と現地在住中国人と結婚した日本人女性の2人。担当は会話(2年4時間、3年2時間、4年2時間)と作文(3年2時間、4年2時間)の計12時間。一応教科書は、会話「流暢日語会話」「臨場模擬日語会話」と作文「新編日語写作」は与えられているが、何をやっても自由と言われているので平行して自主教材を使用している。
日本語科の中国人教師たちのレベルは高く、全員が日本留学経験者である。授業は一年のごく初期の期間を除いて全部日本語で進められる。一、二年の間は珠海のキャンパスで日本人との接触は皆無(除二年生の週4時間会話授業)という状態にありながら、三年になって広州キャンパスに移ってきた時でも、会話聴き取りに問題はない。
広州では同じ敷地内に住んでいる日本人留学生との交換学習を積極的に行うため、一段と上達する。
珠海キャンパスは学習環境はすばらしいのだが、孤立しているので外国語の実践には不利である。学生達は日本人教師の週1回の来訪を大切にして待ちかまえているのだが、教師の側からすれば、泊まりがけの出張で、授業の前も後も長時間指導することが殆どなので、かなりの負担になる。
25. 答案をボールペンで 中国方式か
無錫南洋職業技術学院 967 松村 燎
1998年創立の私立大学で、外国語コースには、英語、韓国語、日本語の3コースがある。外国人教師は韓国人と小生の二人。同じ敷地内に幼稚園から高校までの全寮制の南洋学校がある。「学校」と「学院」の人的交流はない。学生たちによると「学校」の生徒の家庭は裕福だが、「学院」の家庭は普通だという。だが大半の学生はケイタイを持ち、毎月の使用料は1,000元を越えるという。日本語コースの中国人教師は4人で、小生と同じ研究室にいてよく質問を受ける。現在2年と3年の会話と听力を週16時間担当している。学生たちは、学習面で集中力に少し難点があるが、性格は素直で人なつっこい。男女比はほぼ半数で、3年生は日本語能力試験2級を目指している。学生たちの日本語運用能力にはかなりの差がみられる。
学習環境は全体によい。LL教室は完備しており、夏冬はエアコンが使用できる。研究室にはパソコンがあり、WordやYahoo Japanが使用でき、e-mailもできる。コピーは係職員に頼むと無料ですぐやってくれる。試験問題も原稿を渡すと、係が印刷してくれる(余談だが、学生たちは、中国方式なのか、答案はボールペンを使っていて驚いた。)
26. 中国人教師とは電話で相談
福建師範大学 969 井上進夫
授業は4年新刊選読・古典文法・日本文学史、3年作文、2年会話を12時間(45分授業)教えている。5種類の教材なのでその準備と教材研究に時間を取られるが、学生たちはすごく真面目で積極的に取り組むので、その期待に応えるためにこちらも自然と力が入る。
日本語の細かな使い分けに理論的説明を求められ、即答できないことがあり、「日本語句型辞典」が手放せない毎日である。
学生数は35人前後(聴講生がいるので特定できない)2年生だけが2クラスに分かれて各20人位で授業をしている。平素私に愛想の悪い(?)学生が実は日本語に自信がなくて話しかける勇気が無かったのだとわかった時など、我先に次々に質問してくる学生だけでなく、みんなに声を掛ける大切さを痛感する。
日本人教師は私だけで後は中国人の日本語教師が10人以上いる。教師の特定の部屋が無いので日常の交流は全くなく、必要な時には電話で連絡をして相談している。
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