10. 能力試験合格数を倍に
青島濱海学院 985 藤延倫史
8月31日に青島に着いた翌日からここ濱海で3年生の授業を始め、ようやく授業のペースも慣れ、生徒の名前(約100名)も覚えたところ、急に11月からスケジュールが変わりました。(この辺が中国流です)現在は当代日本語会話という本を使って2年生を2クラス週4時間づつの8時間教えています。(26名のクラスと38名のクラスの会話担当)。そして、私が30年間受験指導をしていた関係で、日本語能力試験対策の為の1級听力(聴解)クラスを週4時間教えています。
このクラスは青島濱海では一番出来る生徒が集まっており、レベルが揃っているので非常に教え易いです。準備は大変ですが、毎週木曜日の授業が終わると、四〜五人の生徒と食堂で一緒に昼ご飯を食べながら会話練習や将来の事などを聞いたりしています。
彼らは既に2級は合格している生徒が多いので、会話も弾みます。そしてあと2時間は中国人の日本語教師の為のクラスを受け持っています。時々、彼らの会議で中止になりますが。約20人の先生方が熱心にメモを取りながら、私が日本から持ってきた資料・教材を紹介しながら教えています。彼らの発音そして特に外来語は不得手のようで、自然な日本語を話す為の助詞の使い方指導とともに重点的に今後も教えようと思っています。
ここ濱海学院は巨大なキャンパスに生徒総数13000人、そして日本語科の生徒は1100人います。昨年の能力試験2級に60数名、1級に11名が合格したらしいですが、私がいる間に、その数字を2倍にはしたいと思って一生懸命準備しながら楽しく教えています。(私は3年いるつもりなのでその点も宜しくお願いします。)
11. 日語専攻学生は英語の約1割
長春師範学院 984 長井朝彦
長春郊外の比較的静かな環境にある。学生数1万人を超える大きなキャンパス。教育施設に問題はない。外人教師室にパソコンはあるが中国語対応。コピー・印刷は自分では出来ないが学校を通せばやってくれる。日本語図書は日本の某財団寄贈の多くの図書があるが日本語指導教材は期待できない。学生は全体に学習意欲があり教師の指示には忠実である。日語科は1、2学年は2クラス(中・高校から日語を学んできたクラスと、大学で日語を始めたクラス)、3、4年は各1クラス(3年次に1、2年次の2クラスが統合)。私の担当学年・講座は2年(読解、聴力、会話)、3年(読解、聴力、日本概要)。教科書・教材は学校からあてがわれたものを使用しているが、必ずしも適切ではない。自分なりに一通り用意しておくのが無難。学生の殆どが日本語能力試験1級を目指す。特に3年次に賭けている(資料は用意した方がよい。実力的には無理な学生も多い)。教員養成大学であるが一般企業等への進路を考えている学生が多いのも一因であるようだ。本学外語学院は英語専攻生と日語専攻生の2種。ちなみに日語専攻学生数は英語のそれの約1割。外国語として日語選択する中・高校は減少しているようだ。中国日語教師との交流は少ない。
12. 主任は「教科書を教えてくれ」と言う
黒竜江東方学院 963 小林敦子
2年生本課42名がいわば私の担任クラスで、精読8時間、会話2時間を持っている。ほかに、3年生本課と2年生専科2クラスの会話各2時間づつで、合計16時間。
教科書は「新編基礎日語」「日語口譯教程」。適切な教科書とはとても思えないが、選択の余地はなく、主任からは「教科書で」ではなく「教科書を」教えてくれ、と言われる。
視聴覚教材や機器はなく、学校の印刷設備は使えず、補充教材のプリントは自前である。パソコン、プリンターは必需品。42名という、語学のクラスとしてはむちゃな大人数に加えて、中学・高校で日本語を学んできた学生と、この大学で初めて日本語を学び始めた学生が混在しており、授業はとてもやりにくい。易しい言葉を選んでゆっくり話すようにしているが、それでも私の話が聞き取れないし理解できない学生も多い。非常に熱心な学生がいる一方、学習意欲のあまり感じられない者もいる。しかし、全体にまじめで純真、親切で、かわいい。私立大学であり、経済的には豊かな学生が多いようである。学部のお祭りに、日本語劇をと頼まれた。小学校用の学校劇集などを持ってくればよかったと思う。
13. 日本語を暗記させる
長春師範学院 957 矢部博光
一年生は会話と発音、聴解(リスニング)、四年生は日本文学、写作(作文)、日本の新聞・雑誌の閲覧を担当しています。
持ち時間は週16時間です。同じクラスの四時間続きの授業でも、なんとか授業は成り立っています。
一年は二クラスで、そのうちの一クラスは中学・高校で日本語を習ってきたクラスで学生数は23名です。もう一つのクラスは大学で初めて日本語を習うクラスで41名います。四年生は日語本科が38名で一クラスです。四年生は欠席が多いです。
日語主任が決めたテキストを使用しています。四年生の中には一流の大学院入学希望者がいて、過去に出題された入試問題を持参し、自分がやった答があっているかどうか見てください、と言ってきた学生もいました。その中には、日本の大学の入学試験問題のように難しい問題もありました。又、中国人の日本語の先生から日本語の文法などについて質問されたこともあり、日本語(国語)の勉強が必要であると思いました。
14. “学院”へ昇格申請中
龍岩師範高等専科学校 850 平山禮二郎
現在は、師範高等専科学校という3年制の短大で、学生は4年制大学を希望していたが、学力不足でこの学校へ入学した者が多い。従って、この学校へあまり誇りを持っていないように思う。しかし、短期間の日本語の勉強で、昨年度は36名の3年生中の28名が日本語検定の2級に合格したところをみれば、学生の質はそんなに悪くはないと思う。
ただ、少数だが中にはルーズな学生もいる。毎週1回、日本語のテープのディクテーション(dictation)を宿題として出しているが、自分ではテープを聴かず、友達のものをコピーして出す者もいる。試験時のカンニング同様、情けない気持ちになる。
この学校は、日本語科ができてから4年目だからか、各教科の授業にレールが敷かれているというわけではない。教科書・視聴覚教材など自分の授業で使うものは自分で選択して準備している。どんな教材を使って、どんな授業をするか任せられているので有難い。今、この学校は4年制の“学院”への申請をしており、施設設備やティーチングスタッフ等の充実を図っているから、いつまでも現在のようにマイペースで授業ができるとは限らないかもしれない。
15. 学生の熱意に応える努力
龍岩師範高等専科学校 909 鈴木吉彦
この学校の日本語学科は、修業年限が3年で、今年2003年に初めて卒業生を出したということで、まだ若い。これから成長していく学科である。聞くところによると、3年生に関しては、冬休みが終われば、就職活動に入るので、事実上冬休み前で授業は終わり、実質的な日本語学習期間は2年半と言うことだから、現実は厳しいと実感する。
現在、学生数は3年生56人(1、2班各28名づつの別授業)、2年生40名、1年生40名であるが特に「会話」、「ヒアリング」のように実用的科目の場合、40人は多過ぎる。多くの地域がそうだろうが、中・高で日本語を学習している学生は皆無だから、すべてゼロからの出発である。そこでせめて1年生だけでも、と先任者の発案で「会話」を2班に分けて試行している。私は会話の他に「新聞選読」「日本概況」「作文」の科目も担当しているが、なんとかそれらを会話に繋げる道はないかと、難しいことだが思案している。学生たちの多くは素直で一途によく勉強する。彼らの日本語学習に対する熱意に、いささかなりとも応えられるよう、在り来たりだが、微力を尽くし、智慧を絞って頑張るしかないと思っている。
16. 小人数授業が一番
運城銀海外語学校 861 西村 要
本校は山西省人民政府によって創設された中等専門学校で、生徒は山西省内各地の中学校を卒業したばかりの者が中心であるが、中には他の学校あるいは職場から進路変更して入学してくる者もいる。運城学院に付属する学校であり、日本語科の生徒はほとんど学院内の宿舎で共同生活をしている。
生徒数は英語科(全学年でおよそ1400人)に比べると日本語科は少なく、現在1年67名(2クラス)、2年35名(1クラス)、3年5名、4年4名とアンバランスである。語学学習は何と言っても、3、4年のような少人数が一番である。生徒数の多い1、2年の中には学習意欲に欠ける者も若干おり、学校としてもその対策に苦慮している。
生徒は日本語能力検定の資格を重視し、今年は4年が全員2級を、3年と2年の一部が3級を受験する。
授業は1年2クラスの会話が週8時間、2年の会話が4時間、3年と4年の検定対策がそれぞれ2時間づつ。それに4年の作文が2時間の計18時間。
1、2年の会話は「しんにほんごのきそ」を使用しているが、これは研修生用なので「みんなの日本語」の中国出版本があればいいなと思っている。
17. 構成法を考えるべきだろう
青島濱海学院 972 小野智恵子
現在、日本語の学生は1000人位。一学級が50人以上である。私は1、2年の会話を担当している。会話は2年生のみ選択制で1クラス30名前後。1年2時間、2年4時間だけで、3年になると会話の授業はない。
入学前にすでに3年から6年も日本語を学習した学生も混じっていて、学力差が大きい。しかも1年生は大人数のため、初期の発音練習もできないままやる気をなくしていく学生もいるようだ。逆に既に学んできた学生も能力を伸ばせないでいる。せっかく選択制にするなら、その構成法を考えるべきだろう。
一般に文法重視で会話はほとんどできない学生が多い。しかもきょうざいは「当代会話」で、2年になると日常のくだけた調子の会話例が多く、「〜ちゃった」「じゃ、またね」などの語を教師に対して使うなど、学生は混乱している。進度が早いことが良いとする、学部長の方針もあり、学生が消化しないまま先にすすむので、会話力も伸びない。学習意欲もいまひとつで、日本人教師の家へ会話練習に来る学生も少なくない。
18. 日中の学生がコンピューター上で意見交換
北京大学国際関係学院 867 赤松 衛
国際関係学院の学生は北京大学の中でも優秀であると言われている。私は大学院の1年と2年を担当している。学部時代は他の大学に在籍していた学生もいて、地方出身者がほとんどである。今年度、北京出身者は1人である。1クラス10人程度、2クラスを担当。英語の成績等で選抜されて来ている為、1年生は「あいうえお」から教えている。学生の質は高く、学習意欲に燃えている。試験の折、カンニングする学生は1人もいない。
学生達は日本語科の学生のように日本語で職業につこうとは考えていないようである。日本語を学ぶ目的は、2年生終了時1ヶ月程日本を訪問することが決まっていて、その折、修士論文作成の資料収集に困らないように、ということである。1年生終了時、優秀な学生2名が、1年間新潟大学に留学する。3年終了後、選抜されて5名が早稲田大学の博士課程へ進むことにもなっている。
2001年9月より私の学生と早稲田大学のFegan教授、Muehleiser助教授の学生とでCUSeeMe Sessionを開始した。週1度90分程度、コンピューター上で相手の顔をみながら意見交換するものである。日本との時差が1時間である為容易に実施できる。しかしながら、今年度はFegan教授の病及びMuehlesen助教授の新学部設立のための校務により、未だ実施できずにいる。12月には是非とも再開したいと考えている。英語によるsessionではあるが、現在の同世代の学生が何を考えているかを理解する。日本理解には有効である。さらにHuehlesen助教授の提案によるテレビ会議も計画中である。
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