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新規範発見塾 レクチャー・メモ vol.16

 事業名 先駆的情報の創出・発信事業
 団体名 東京財団政策研究所 注目度注目度5


親とのつき合いがない子供たち
日下 まだ時間がありますが、ご質問はありますか?
― 教育の話がでてきましたが、「インテリジェンス」が日本人に欠けている理由として、今の教育もその原因をつくっているでしょうか?
 
日下 そう思います。自分の足で歩かないとインテリジェンスは身につきません。虻になるだけです。根本的な例を挙げてみましょう。
 予備校の先生から聞いた話ですが、子供が勉強できない原因は、親から捨てられているからだと言うのです。頭が悪いわけでない、親の愛情欠乏症が問題で、ただただ「勉強せよ」とムチ打たれてふらふらと予備校へ来ている。かわいそうな子供たちだから、それを救うのが先だと言って、彼は愛情をもって何時間でも雑談につき合ってやる、そうすると勉強ができるようになる。すると親が深く感謝してくれるというのです(笑)。
 いくつかの大学で教えてみてわかったことは、親とのつき合いがまるでないということです。二十歳直前のその年まで、親とのつき合いがまるでない人たちがどーっと大学へ来て「ああ、これからはもう親に何も言われなくて済む。今から四年間、ようやくゆっくり休める。その行く先は就職で地獄である。だからこの四年間、せめてゆっくり親と会社の間で休ませてくれ」といった感じです(笑)。
 これはせつない願いですね。もう本当に人間回復です。言い換えれば、学生は皆子供だということです。そんな子供の親代わりをさせられては身が持ちませんので、どうしても親と会話をさせてやろうと思って宿題を出しました。「きょう家に帰ったら、親にこういう質問をしなさい。宿題です」と言うと親と話をするのです。
 ある事件をコピーで渡し、「ある会社の中でこういう事件が起こりました。お父さんの会社ではこういう事件が起こったとき、どういうふうに処理するか。それを聞いてレポートに書きなさい」という宿題を出した。すると親に聞く。
 終わりに感想が書いてあって、「父親と久しぶりに話した。おやじも案外偉いということがわかって嬉しかった」とか。親からは「いやあ、嬉しかった。ああいう宿題をどんどん出してください。娘と何年ぶりかで口をきいた」というお礼の言葉をいただきました。
 喜んでもらえたのは良かったが、しかしこれは大学なのかどうか。まるで幼稚園ですね。でも、そこからやらないといけないのです。愛情抜きでは教育になりません。子供は勉強する気にならないし、頭に入らない。
 皆さんのお子さんは何歳か知りませんが、もう手おくれでしたら、お孫さんを相手に頑張ってください(笑)。
 
自立していない大学生
 要するに言いたいことは、大学生が全然自立していないということです。
 そもそも頭が良いとはどういうことでしょうか? 学者という暇な人が一〇〇年前からだんだん増えまして、心理学とか何とか学とか自分のすることに自分で名前をつけて独立していきます。その中のひとつに発達心理学があって、賢いとはどういうことかを測定して定量化しようとします。最初は記憶力で、これは量ではかれるからやりやすい。それから、スピードも測定しやすいですね。いろいろなテストをやって、総合いたしまして、この子は賢い子となるわけです。
 しかし、そんなことが本当の賢さかどうかは、常識豊かな人であればすぐにわかることです。量やスピードも賢さではありますが、あくまで賢さの一部にすぎないことは言うまでもありません。
 やがて、ある学者が、もうそういうのは面倒くさい。それよりも総合的に判断するのに、十歳の子供が十二歳並みのことを言えばこれは二割増し。だから知能指数一二〇ということにしようじゃないかと考えた。これは要するに、ませているというだけなんです。「ませ度」とつけるべきものを、「知能指数」と名前をつけた。これがばか当たりに当たって、日本中に流行しまして、ませた子供を一生懸命、無理やりつくりました。
 そんなモノサシで計られたのでは、独自のインテリジェンスが育たないのは当然です。最近は知能指数に疑問が出て、何でも早く詰め込めばいいというものではないぞと揺り戻しが起きているのはご承知のとおりです。メッキが剥げてきました。
 結局、以上をひと言で言えば、自分の頭で考えているかどうか、思想が独立しているかどうかですが、日本の教育の現状は先ほど申し上げた状態ですから、インテリジェンスを養うためには心もとない状態だと思います。
 むしろ、学校などへ行かないほうが良いかもしれませんね。冗談ではなく、かなり本気でそう思っています。
 ちょっと余談を申します。東大に入ってみてこんな経験をしました。昭和二十五年のことですが、駒場の寮は一高時代の空気が残っていました。一高生がそのまま「新東生」(=新制東大生のこと)になって、頭からフトンをかぶってドイツ語やフランス語の勉強をしていました。
 あるとき、木村健康という教授が教室で“自分は村一番の秀才だった”と自慢したことが話題になると、寮生は口々に“そんなことを言えば、自分だって村一番の秀才だった”と言って笑いました。
 その意味は“そんなことは当然のことで、大人になってまで言うことではない。大人になってからは世界を相手にどんな活躍ができるかが問題だ”というもので、その意気込みには感心しました。
 つまり、知能指数や偏差値は問題でなく、将来の活躍が問題だというわけで、成果主義を言っているのでした。十八歳や十九歳にしては偉いものです。そういう気構えでなくてはインテリジェンスは育ちません。たとえあっても発現しません。そういう意味では旧制の教育はすぐれていました(ただし、私はそのとき皮肉なことを考えていました。それは一高や東大の看板に依拠して言っているのであれば空虚だということです。私の父が三高・東大だったので、実力錬磨の烈しさと看板依存の空虚さの両方を知っていました)。







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