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表紙説明
名詩の周辺
 
逸題(山内容堂)
高知・高知市
 山内容堂は江戸時代末期の土佐藩主。容堂は号で名は豊信(とよしげ)です。山内家は初代一豊が織田信長、豊臣秀吉に仕え、関ヶ原の戦いでは東軍に属し、土佐二十四万石を領有しました。容堂はその土佐藩の十五代目藩主に当たり、藩主になるや、吉田東洋を起用して藩政を刷新。精励して政治を行ないました。将軍継嗣問題では一橋派として福井の松平春嶽らと一橋慶喜を推し、敗れましたが、この時春嶽をはじめ伊達宗城、島津斉彬と交わり、公武合体、雄藩連合を唱えるようになります。安政六年、大老井伊直弼によるいわゆる安政の大獄で隠居謹慎を命ぜられ、江戸品川鮫州の別邸に隠居します。しかし、文久二年謹慎を解かれると、勅使東下のなかで活動を再開し、将軍後見職の一橋慶喜に朝幕間の調和を説き、公武合体に奔走しました。その後、時勢を注視していましたが、幕府の衰退を洞察、また武力討幕の方向がたかまったのを見て、慶応三年、「大政奉還」の建白書を幕府に提出し、公議政体による平和改革を建策しました。王政復古と同時に議定に任ぜられ、新政府で要職を歴任しましたが、明治二年橋場の別荘に隠居、酒と詩文を楽しみ、自適のうちに明治五年生涯を終えました。享年四十六。開明的藩主として、大政奉還に尽力し、また後藤象二郎等の逸材を育てたことでいまも、高知では大いに尊敬されています。
(高知城=JR土讃本線高知駅から徒歩約15分。山内神社=高知駅からバス県庁前下車、徒歩約3分)
 
取材――株式会社 サークオン
 
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水六訓
一、あらゆる生物に生命力を与えるは水なり。
 
一、常に自己の進路を求めてやまざるは水なり。
 
一、如何なる障害をも克服する勇猛心と、よく方円の器に従う和合性とを兼ね備えるは水なり。
 
一、自から清く他の汚れを洗い清濁併せ容るの量あるは水なり。
 
一、動力となり光となり、生産と生活に無限の奉仕を行い何等報いを求めざるは水なり。
 
一、大洋を充し、発しては蒸気となり、雲となり、雨となり、雪と変じ、霰と化してもその性を失わざるは水なり。
 
 水を心とすることが平和と健康と長寿の妙薬であります。
笹川良一
 
明日への提言
ハンセン病元患者宿泊拒否問題は“ホテル側の全面謝罪で決着”とのニュースに安堵しました
河田和良
 
 
 今年の初詣の人出は、全国で八千九百万人近くで、これまでの統計では最多であったようです。穏やかで暖かかったこともありましょうが、不況脱出や世界平和への祈りなど、お願い事もたいへん多かったのではないでしょうか。
 本誌昨年十一月号からお呼び掛けをしているハンセン病回復者自立支援事業の募金口座には、全国各地の吟剣詩舞関係者の皆さまから、昨年末現在で百万円を超える募金が寄せられました。早速のご協力に対し、厚くお礼を申し上げますとともに、引き続き、ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。
 また、本誌一月号の本欄でお話しました熊本県・黒川温泉のホテルで起こったハンセン病元患者宿泊拒否問題は、一時は熊本法務局が同ホテルを旅館業法違反容疑で告発を準備するまでの動きがあったようです。しかし、幸い、昨年十二月二十日、ホテル側が同県の国立ハンセン病療養所を訪れ、全面的に非を認め謝罪するとともに、元患者の皆さんも、この謝罪を受け入れられ、和解が成立し、一件落着したとのニュースを聞き、一安心しました。関係の皆さまも、スッキリとしたお気持ちで、新年をお迎えになられたこととお慶び申し上げたいと思います。
 併せて、一月六日には、坂口力厚生労働大臣が、今回の問題に関連して、ハンセン病の「元患者」という呼び方を「回復者」に改めるなど、イメージアップのための新たな呼称を検討することを記者会見で発表しました。財団創始会長笹川良一先生がお口にされた「何が幸いするかわからない」という言葉の効能はまだ続いているようです。
 
笹川鎮江二代会長のご遺志を継ぐ、決意も新たな少壮吟士たち
「出航(ふなで)二〇〇三」
第五回大分県民芸術文化祭協賛事業
青少年吟剣詩舞道育成基金協賛
第十八回少壮吟士
吟詠チャリティーリサイタル
■平成十五年十二月二十一日(日)
■大分県立総合文化センター・グランシアタ
主催:西日本少壮吟士会
後援:財団法人日本吟剣詩舞振興会
 
会場を埋め尽くした聴衆からは一題ごとに大きな拍手
 
財団を代表して挨拶される河田和良会長
 
主催者を代表して挨拶される辻島鑑霊少壮吟士
 
釘宮磐・大分市長が来賓として挨拶された
 
青少年吟剣詩舞道育成基金寄付目録を受ける矢萩保三・財団事務局長。贈呈者は辻島吟士
 
 開演の午後十二時半には満席となる盛況ぶりを見せた第十八回少壮吟士吟詠チャリティーリサイタルは、それだけ多くの人が関心をもち、また舞台に対する期待も非常に高いものがある証ではないでしょうか。
 チャリティーリサイタルは式典から行なわれ、国歌斉唱、財団会詩合吟とつづき故笹川鎮江二代会長と故深田光霊先生を偲んで黙祷が行なわれました。主催者挨拶では辻島鑑霊少壮吟士が壇上に立ち、笹川鎮江二代会長の偉大さを称えるとともに、そのご遺志に報いるためにも、決意も新たにさらなる精進を誓っていました。そして、チャリティーリサイタルの趣旨である青少年育成のための青少年吟剣詩舞道育成基金目録が辻島鑑霊少壮吟士から矢萩保三財団事務局長へ贈星されました。矢萩保三事務局長はチャリティーリサイタルの起こりから今日までを話されたあと、お礼の言葉とともに有効に活用させていただく旨を話されました。
 財団代表挨拶では河田和良財団会長が、笹川鎮江二代会長のご逝去という悲しみを乗り越え、少壮吟士の方々には一層がんばっていただくようにとエールを送っていました。来賓挨拶では釘宮磐大分市長が壇上に立ち、芸術文化の創造に吟詠の果たす役割は大きく、大いに期待をしているとの挨拶がありました。そのあと、来賓紹介、祝電が披露され、式典は滞りなく終了しました。
 式典のあとに上演される演目は二部に分かれており、第一部では少壮吟士愛吟集が披露され、第二部では西日本少壮吟士実行委員による企画構成吟「大楠公」が上演されました。
 第一部少壮吟士愛吟集は、はじめに少壮吟士OBである(出演順に)有森芳由、大野壮洲、陶山昇霊、藤河賀久清、幡地滄月、八代輝霊の各氏が吟じ、さすがOBといえる渋みのある吟詠を聴かせてくれました。つづいて、少壮吟士になりたての第二十五期から吟詠がはじまり、最後の秀平克泉第三期少壮吟士まで、吟界を牽引するにふさわしい実力の高さを余すところなく披露してくれ、訪れた愛吟家を楽しませてくれました。
 第二部の企画構成吟「大楠公」は、南北朝時代に七生報国の心を唱えて泡沫のごとく消えた楠木正成にスポットを当てたもので、当代随一の剣詩舞家の賛助出演もあり、華麗で勇壮な舞台を楽しむことができました。舞台は少壮吟士全員で吟じた「楠公を詠ず」からはじまり、同じく全員で吟じた「青葉茂れる桜井の―桜井の訣別―」まで聴き応えがあり、しかも美しく流麗な吟と舞を堪能することができました。愛吟家、剣詩舞愛好家の期待にも十分応えた舞台といえるでしょう。
 笹川鎮江二代会長も、少壮吟士のがんばりに天国からきっと目を細めてご覧になっていたことでしょう。これからもさらなる精進によって、吟剣詩舞道界の発展、そして後進の育成に奮起していただきたいと思いました。
 
企画構成吟の幕開けで「楠公を詠ず」(日柳燕石作)を合吟する少壮吟士の皆さん
 
藤上南山氏の剣舞、田邑嘉風氏の吟詠で「稲叢懐古」(太宰春台作)







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