合吟コンクール“出場”に大きな意義
――平成十六年度全国吟詠合吟コンクール出場団体募集――
独吟や連吟では味わえない、おおらかな魅力、仲間と共同で詠いあげた達成感が堪能できる合吟。その全国コンクールが今年も第三十七回武道会の冒頭に開催されます。毎回のように出場される団体が多数ある一方、出ても良い成績は望めないから・・・と躊躇される団体も多いとか。勝敗は時の運、とにかく武道館の舞台を経験されることをお勧めします。
合吟コンクール開催について
第三十七回全国吟剣詩舞道大会日程
平成十六年十一月十四日(日) 午前九時〜午後四時三十分
合吟コンクールは大会開会直後から概ね正午まで実施され、続いて当年度吟詠・剣詩舞優勝者演舞、記念式典、特別企画吟剣詩舞の後、午後四時頃、合吟コンクール入賞団体発表と表彰が行なわれます。
(1)会場
日本武道館 東京都千代田区
北の丸公園二―三
電話〇三(三二一六) 五一〇〇(代表)
合吟コンクール出場団体募集要項
(1)目的
吟詠の普及奨励と芸術的向上を目的とします。
(2)募集期間
平成十六年一月二十日から同年六月二十日
(3)応募資格
財団公認都道府県吟剣詩舞道総連盟に加盟している会、またはその連合であること。
(4)募集区分
次の六区分とし、いずれも男女混成による出吟はできません。
A・・・男子
B・・・女子
C・・・学生男子
D・・・学生女子
E・・・総連盟連合男子
F・・・総連盟連合女子
★募集区分等に関する注意事項
(1)募集はA〜F各区分ごとに行ないます。同じ区分には一団体につき一組のみ申し込むことができます。別の区分であれば各一組の申し込みができます。
(2)幼年(十一歳未満)グループは特別参加扱いとし、コンクール審査対象外として発表していただきます。
(3)コンクール出場の機会と底辺を広げるため、過去五年間の優勝経験団体が応募する場合は、新しい出吟者のみでお申し込みください。優勝時の出吟者は出場できません。
(4)少壮吟士は出場できません。
(5)申込定員と出吟人数
各区分とも申込定員は五十五名です。コンクール本番には五十名(最低出吟者数)から五十五名の間の人数で出吟していただきます。
(6)申込書への記入事項
(1)吟題=平成十六年度合吟コンクール指定吟題(別掲)の中から選び、作者名とともに記入。
(2)申込区分
(3)申込団体責任者氏名、住所、電話番号など
(7)出場団体の決定
八月上旬に最終決定し、出場団体には、合吟コンクール代表者会議開催案内とともにご通知いたします。
(8)決定後の手続き
出場が決定した団体へは「プログラム記載事項届出書」を送付します。次の事項を確定して記入し、九月二十日までに財団宛お送りください。記載事項の変更は原則としてできません。
(1)出場団体の正式名称と応募区分、所属都道府県連盟
(2)本数
(3)伴奏曲目=財団指定「吟剣詩舞道伴奏集」の何曲目かを選んで記入する
(4)吟題、作者
(5)出場者五十五名全員の氏名(雅号。楷書ではっきりと)
(9)出吟順の決定
九月四日に開催予定の合吟コンクール代表者会議で、公開抽選により出吟順を決定します。
(10)応募方法
申込書様式は
(1)財団公認都道府県吟剣詩舞道総連盟(または地区連協書記局)備え付けの合吟コンクール出場申込書に所定の事項を記入、出吟責任者が署名押印したもの
(2)返信用封筒(返信先を記入、80円切手貼付)の二点を、所属する都道府県総連盟事務局へ六月二十日までにお届けください。
各公認都道府県総連盟では出場者申込書をとりまとめ、六月末日までに財団へ届くようお送りください。
(11)競吟方法
歌い出しは先導者が一節を独吟し、繰返さず、次の句から合吟に移るものとします。
平成16年度合吟コンクール指定吟題
絶句編
日本刀を詠ず 徳川光圀
夜墨水を下る 服部南郭
三樹の酒亭に遊ぶ 菊池渓琴
弘道館に梅花を賞す 徳川景山
勧学 木戸孝允
磧中の作 岑参
夜受降城に上って笛を聞く 李益
秋思 劉禹錫
山行 杜牧
海に泛ぶ 王守仁
続絶句編
絵の島 菅茶山
芳野に遊ぶ 頼杏坪
奥羽道中 榎本武揚
山中問答 李白
中秋月を望む 王建
出吟者の服装など
(1)出吟者の服装は、申込区分A(男子)およびE(総連盟連合男子)は黒または紺系の背広上下、もしくは和服・袴を着用してください。
B(女子)およびF(総連盟連合女子)は和服を着用してください。
C(学生男子)、D(学生女子)は学生服で結構です。
(2)旅費、宿泊費、その他の経費につきましては出吟者のご負担でお願いします。
(3)こんどの大会も前回同様「高松宮妃癌研究基金奉賛大会」として開催されます。合吟出場者の皆様には合吟席券(三、〇〇〇円)の購入をお願い致します。合吟出場者以外の方には、座席当日指定入場券(四、〇〇〇円)の購入をお願いしています。
(4)出場決定団体の皆様は、全国吟剣詩舞道団体の代表にふさわしい合吟をめざして練習に励んでください。
大観衆と、大会役員、出演者などに祝福され表彰される合吟コンクール上位入賞団体(中央) |
2. 各論
原案 少壮吟士の皆さん
監修 舩川利夫
(4)発音=7
鼻音
「ン」(鼻音)について
二回にわたり「鼻濁音」の勉強をしました。鼻濁音は呼気を一時的に鼻へ通す音、つまり通鼻音の一種です。これに関連して調べておかなくてはならない音の一つに鼻音(全部の呼気を鼻へ通す)「ン」があります。
読み下し最後の「ン」は閉唇で
普通の母音や子音は呼気の全部あるいは一部を口から出す音だが、「ン」は呼気の全部を鼻へ通してつくる、ちょっと毛色の変わった音ということができる。撥ねる(はねる)ような音色を持つことから「撥音(はつおん)」とも呼ばれる。口を開く音(開口音)に比べ、大きな音量を出しにくい。しかし吟詠にとっては重要な役割をもっていて、特に詩文の最後、読み下しの部分にくる「ン」(例「我は薪を拾わん〜」など)は吟の締めくくりとして、どのような余韻を残すか、他の子音などと違い、父音、生み字の母音の区別がないだけに、発音の仕方で大きく違ってきたりする。「ン」の発音の作り方は大きく分けて三種類あり、後で記すようにそれぞれ特徴を持っている。財団が「ン」の詠い方について出している共通見解は「読み下しの最後にくる『ン』は唇を閉じて発音する(仮に閉唇の『ン』という)」という点だけで、その他に関しては、詩文の前後との関係で自然な発音を、との立場をとっている。
三種類の「ン」
“自然な発音”とは、言い換えれば“普段あなたが話したり、歌ったりするときと同じ発音”ということである。だから読み下し最後の「ン」を閉唇にする以外は、特別に勉強しなくても吟詠に不便をきたすことはないかもしれない。従って以下に記すことは、「ン」について微妙な情感の違いを表現したい、あるいは一応理屈として抑えておきたい、という要望に応えるためのものと思っていただきたい。
大別して三種類の「ン」はどのようにして作られるか。また、それぞれどのような音質を持っているのか。
「ン」の音を作るためには、口へ行こうとする呼気をどこかで止めなくてはいけない。それを止める場所の違いによって違った種類の「ン」ができあがる。(【図】参照)
〔図〕「ン」の発音で、呼気を止める3カ所
(1)上あご・舌の奥で止める
上あごの奥(軟口蓋)と舌の奥を密着させて呼気を遮断する方法は鼻濁音の発音の仕方で観察した「連吟(れんぎん)」の「ぎ」の前にある「ん」と同じ要領。この例で解るように、この「ん」は「山岳(さんがく)」「雲外(うんがい)」などガ行鼻濁の前と、「嬋娟(せんけん)」「千古(せんこ)」などカ行音の前にある「ん」のときに使われる。裏を返すと、次の音に移りやすい「ん」を形作るということで、その意味では次の(2)も(3)も同じ理屈ということができる。
(2)上歯の付け根と舌の先で止める
会話などではこれがごく自然に使われる「ん」で、「剪定(せんてい)」「吟断(ぎんだん)」「院内(いんない)」など、主としてタ行、ダ行、ナ行の前にくる「ン」はこの発音となる。
なお、「軍営(ぐんえい)」のようにア行の前にくる「ン」は、(1)と(2)の中間、つまり上アゴ、舌ともに真ん中辺で遮断する。
(3)上下の唇を閉じて止める
最初に例示した読み下しの最後の「ン」はこれを使う(mの記号で表される)。現代感覚での「ン」は唇を閉じない(nの記号で表される)が、もともと語尾の「ン」は「いかにせむ」「生まれけむ」のようなときには「ム」を使っていた。吟詠の場合はその名残りに加え、文末、読み下しの「ン」をまぎれなく、はっきりと発音するため、さらには強い意思を表現する必要などから閉唇を標準発音としている。
末尾で伸ばす「ン」以外にも、「粉粉(ふんぷん)」「三宝(さんぼう)」「連綿(れんめん)」などのようにパ行、バ行、マ行の前にくる「ン」は閉唇の「ン」となる。
少し細かくいうと、閉唇の「ン」にも三通りあることが分かる。なぜなら(1)のように軟口蓋と舌の奥で止めながら、同時に閉唇もできるし、(2)と同じ上歯と舌の先で止めながら同時に閉唇もできる。これらは閉唇の「ン」といっても、実質は(1)および(2)の「ン」と同じことになる。吟詠の実際ではそこまでは問題にしないが、音を響かせる効果からいうと若干の違いが出るので、覚えておくと役に立つ。
読み下しの末尾で「ン〜」と伸ばす場合、軟口蓋で呼気を止めた音は余分な響きを排除する感じで、硬いながら強い気分を表す。反対に閉唇だけでアゴや舌など口中の力を抜き、下アゴにもゆとりを持たせた「ン」は、口中の共鳴を使い、柔らかな響きが出る。これを参考に詩情に合わせた発音を選ぶとよい。また柔らかな響きは他の音とよく混ざり合う性質があるので、合吟のときなどに応用できるのではないか。
「ン」の発音での最大の注意点は、呼気の全部を必ず鼻へ通すこと。少しでも唇から発音されると「ウ」になってしまう。「ン」の声は吟者自身、小さい声に感じられるので、強い音を出そうとして「ウ」になることが多い。また“必ず閉唇で”と教え込まれた弊害として、どんな場合でも閉唇の「ン」を使い、例えば「軍営」が「ぐムえい」に近く聞こえたりすることがあり、これなどは“過ぎたるは及ばざる”である。
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