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2 実践例について
(1)保育園開放
 地域の親子の交流と仲間作りや子育ての情報交換の場を提供するために、「もりのひろば」と名付けて保育園開放を行っています。保育所地域活動を行っても、育児講座や行事のときだけに保育園に来るのは難しいという意見が多くあった為、定期的に保育園に来てもらって、保育園の職員とも交流を図ってもらえるようにと思い実施しました。
 実際の取り組みとしては、0歳から1歳6ヵ月までの子どもの親子には火曜日に保育室を開放し、1歳6ヵ月から3歳までの子どもの親子には木曜日に園庭を開放しています。また、3歳以上の子どもの親子には、育児サークルヘの参加を勧めています。担当の保育士は3名でその内1名は開放の時だけの非常勤です。また、必要に応じてボランティアの方に協力をしてもらっています。
 開放の時間はどちらも10時から11時30分までの1時間30分としています。10時に受け付けをして、保育園で用意した親子それぞれの名札を付けてもらいます。自分の名札があることがとても嬉しいようで、春のお別れの際に記念としてプレゼントして喜ばれています。保育室開放では、保育士が用意した玩具などを使って各自が自由に遊びます。保育士もなるべく家庭では用意できないような大きな玩具や木の玩具などを準備するようにしています。また小さい赤ちゃんの為には畳のコーナーを用意して、いつでも寝かせたりおむつ替えが出来るようにしています。お母さんたちは子どもの遊びに合わせて移動しながら色々な親子の様子を見たり話し合ったりしています。保育士はその様子を見ながら、その場に応じて声掛けをしたり一緒に遊んだりします。園庭開放の時は屋外の遊具や砂場で自由に遊んだり、園庭を散策したりしています。11時からはお茶の時間として保育室に集まるようにしています。お茶を飲んでもらいながら、保育士は気になった親子に話し掛けて様子を聞いたり、自分から相談してくるお母さんの相手をしたりします。
 保育園の開放を実施して感じることは、地域のお母さんたちは家庭以外に“出て行く居場所”を求めているということです。そして受けとめてもらえる安心できる居場所が必要だということです。お母さん方の話を聞くたびに、何気ない集まりに見えるこの「もりのひろば」の必要性と重要性を強く感じます。地域の方々と保育園の交流ができればと始めたことですが、保育園開放の場でこそ受け入れ態勢をしっかり整え、細やかな配慮をして親子に接していかなければならないと思っています。
 
(2)保育所地域活動事業
(1)育児講座
 子育て中のお母さんは、自分一人で過ごすまとまった時間がなかなかとれません。興味や関心があったとしても講演会に出向いてお話を聞く機会も、趣味等を伸ばす時間も制限されることが多いのです。“何かを学びたい”、“育児の疑問を専門の先生に聞きたい”、“子どもを長時間誰かに預けるのはまだ心配だし、罪悪感もある”等のお母さんたちの声を聞いて、保育園で講座を実施することにしました。子育てに楽しく豊かな気持ちで向かい合ってもらうようにしたいと考えて内容を検討しました。講座というからには、一度きりの講演会のようなイベントではなく、何回か連続して受講して頂くという形にしました。お母さん方にも、勉強するという気持ちを持って、予定を立てて参加してもらうほうが良いと思ったからです。また、講義だけではなくおもちゃの製作などの実技を中心にしたものも実施し、その際には子どもは別にお預かりするようにしました。また、体操やリトミックなど親子で参加する形のものも取り入れてみました。平成14年度には11月から12月の間に3回、1月に3回実施しましたが、15年度には6月から2月までに6回行うように計画して、保育園の行事と重ならないようにゆっくりしたペースで実施するようにしました(内容については別表に記載しました)。
 親子で参加する体操やリトミックは毎回大盛況で、講師の方から、子どもの成長に合わせて気軽に遊べる応用術などもお話して頂き、嬉しそうに「家でもやってみます」というお母さんが多くいました。製作の実技では、久しぶりに子どものことを気にしないで集中して取り組むことができたと満足そうにしていました。講義の時には、日頃の子育てに対する不安や疑問をお母さん方に話してもらうようにしました。参加者の中には、講義のあと皆の前で思い切って日頃の悩みを話すことができて良かったという人もいました。子どもと離れて、お母さん同士がゆっくり話をし、それを受けとめる人がいる場所と時間を提供するための託児付きの育児講座の必要性を改めて強く感じました。
 参加したお母さんからは「育児で不安だったことを聞くことが出来ました」とか「参加してとても気が楽になりました」という声が多く聞かれます。この講座がお母さん達の学ぶ意欲に応え、子育ての疑問の解消に役立っていることがわかります。保育園で続けて講座を行なうことによって、参加する人同士も顔見知りになり気軽に声を掛け合ったり、お互いに子どもの話をする姿もみられ、地域の親子同士の連帯感も徐々に強くなってきました。講義だけで年に6回行なおうとすると内容もかたくなりがちですので、講義と実技を半々ぐらいにして、実技では親子一緒にできるものも行なっています。こうして、この講座は色々なことが学べる場として毎回とても楽しみにして頂いています。
 
(2)世代間交流等事業
 当園のそばに老人保健施設「四季庵」が開設されたことから、なにかの形で交流が出来ないかと考えました。一方で音楽教室の先生から、「大正琴教室」の参加者の方達と交流しませんかとのお誘いを頂いたことから世代間交流等事業に取り組むこととなりました。
 「四季庵」との交流については、園の行事に招待したり、「四季庵」の「誕生会」に参加して、ダンスや楽器の演奏をしたりしました。しかし、「四季庵」の利用者の方々が園の行事に参加することが難しいことや、「誕生会」に毎月参加することは園児にとっても負担が大きかったため、見直しをすることとなりました。そして、現在では補助事業にはなっていませんが、「四季庵」の夏祭りに参加してダンスをしたり、年に2回程「誕生会」に参加したりして、交流を行っています。
 「大正琴教室」との交流については、大正琴の購入や保育士の練習等の準備をした後、「教室」の方々と園児が一緒に演奏することを目標にして取り組みました。「大正琴」は保育園ではあまり知られていない楽器でしたが、「教室」の方々に教えて頂いて多くの子どもが演奏できるようになりました。そして、「教室」の発表会に園児も参加して、演奏したり踊ったりして楽しむことが出来ました。現在では、指導は保育士がしていますが、園児たちは「大正琴」の演奏に取り組んでおり、「教室」のかた達とも時々交流をしたりしています。
 
(3)異年齢児交流等事業
 地域に開かれた保育園として地域の親子が気軽に保育園に来ることができるようにするための最初の取り組みとして、保育園の行事に地域の子どもたちが参加できるようにしてみました。
 対象の行事としては、6月の薩摩芋の苗植え、7月の夏祭り、9月の運動会、10月のいも煮会(芋掘り)、12月の餅つき、2月の節分(豆まき会)、3月のひな祭りとなっています。現在の参加者は、一時保育の利用者、育児サークルの会員、保育園開放の利用者、児童クラブの小学生、小学校低学年児童の受け入れ事業の小学生等となっています。小学生は全ての行事に参加していますが、その他の子どもは保護者の方が行事を選んで参加しています。参加の仕方は、幼児については、その年齢のクラスの子どもと一緒にするようにして、小学生についてはいくつかのグループにして適当なクラスに入ってもらったり、小学生だけのグループにしたりしています。又、行事によって親子で参加したいという希望がある場合には、親子のグループで行なうようにしたりもしています。
 保育園の行事に地域の子どもたちが参加することによって、行事の目的に子ども同士の交流ということが加わります。企画や準備をする段階での配慮は色々と必要になりますが、実際の場面では子どもたちは自然に一緒になって参加しています。保育園の子どもたちも地域の子どもが加わることによって、いつもとは違ったお友達とのかかわり方をしたりする場面も見られるなど、新鮮な気持ちで行事に参加することが出来るようです。
 
(3)放課後児童の保育
(1)小学校低学年児童の受け入れ
 当園を使用している「梨花の里児童クラブ」については後で述べますが、その児童クラブを利用できない卒園生を対象に、地域活動事業の小学校低学年児童の受け入れを実施して、放課後児童の保育をしています。この事業は、一時保育の場を利用することとなっていますので、一時保育を担当するパートタイマーを一名増員して小学生を担当してもらっています。補助金だけでは人件費が足りないので、その不足分とおやつ代を保護者の負担としています。登園については、各小学校から当園まで徒歩では通えないので、担当者が車で迎えに行くようにしています。帰りは保護者の方が迎えに来ることになっています。
 現在は、1年生5名を保育しています。定員が5名で、1年生を優先することとしているため、2年生3年生は利用できない状態になっています。2、3年生の保護者の方の希望は強いのですが、1年生の間に保育園以外での生活の方法を考えてもらうようにしています。児童クラブは3年生まで利用していることを考えると、3年生までの保育が必要だとは思うのですが、場所と費用の面で受け入れが難しい状態です。登園後の生活は児童クラブの子どもたちと同じようにしています。又、お迎えが遅くなるような場合には、延長保育の担当者がみることもあります。
 
(2)梨花の里児童クラブ
 当園のなかに、放課後児童健全育成事業(放課後児童の保育)を行なう「梨花の里児童クラブ」があります。この児童クラブの運営は、法人ではなく、地域の保護者を中心とする運営委員会が行なっています。社会福祉法人が運営する児童クラブの場合は、敷地内に別棟の建物を建設しているようですが、「梨花の里児童クラブ」の場合は、保育園の余裕教室を使用しています。又、園長と事務職員が運営委員会の役員として、運営についての助言等を行なっています。子どもがクラブに来るときは原則徒歩となっていますが、小学校からの距離があることと狭い道路が多いことから、安全の為に保護者会で車での迎えを行なっています。帰りは必ず保護者が迎えにくることとなっています。
 現在の在籍数は1年生8名、2年生5名、3年生6名の合計19名で、指導員1名で保育する体制になっています。クラブに来た後は、まず宿題を片付けてから遊ぶようにしています。指導員一人で宿題をみるのは大変ですが、家に帰ってからでは取り組むのが難しいようなので、児童クラブで宿題を済ますように指導しています。宿題が終わった子どもから自由に遊ぶことになりますが、晴れた日にはほとんどの子どもが園庭で遊んでいます。又週に一回、皆で集団で遊ぶことを目的として、講師を招いて体操教室を実施しています。4時30分位に「おやつ」の時間を設けて、その後全員で保育室の掃除をします。学校でも掃除をしているので、ほとんどの子どもが自分の分担をきちんとすることが出来ます。掃除の後は、お迎えが来るまで室内で自由に遊んでいます。土曜日や学校の休業日には、午前中は低年齢児が園庭を使用しているので室内で過ごして、午後からは3歳以上児と同じ園庭で遊ぶようにしています。又、保育園の行事にも積極的に参加するようにしたり、老人保健施設「四季庵」の夏祭りに参加するなど地域との交流を図るようにしています。
 部屋の面積や指導員数、保護者の負担する費用との関係で、定員を19名としています。この為、梨花の里保育園の卒園生だけで定員になってしまい、他の保育園に通っていた子どもまで受け入れることが難しい状態です。又、1年生の人数が多いと2年生3年生に退会してもらわなければならない状況になることがあります。児童クラブとしては定員を増やしたいところですが、保育園内に設置されていることを考えると、これくらいの規模がちょうど良いようにも思います。これからも、少人数の家庭的な雰囲気を活かしながら保育園との連携を図り、放課後児童の保育を進めて行きたいと考えています。







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