資料2
保育士定数内・外のかかわり方の比較
質問事項 |
保育士定数内 |
保育士定数外 |
入園時面接にかかわっている |
61.1% |
75.9% |
保健所との連携にかかわっている |
22.2% |
40.6% |
医療、療育機関との連携にかかわっている |
37.0% |
61.9% |
定期的に嘱託医や保育士など他の職種と話し合っている |
53.7% |
66.9% |
必要時、保健的立場で保育を行っている |
50.0% |
51.1% |
保護者への対応にかかわっている |
64.8% |
70.0% |
全くかかわれない |
7.4% |
1.5% |
|
気になる子どもの存在と配慮
診断名があり障害児と認定された園児とは別に、診断はされないが「気になる子ども」が数多く存在しています。言葉の遅れ、視線が合わない、こだわりが強い、多動、自傷行為、暴力行為、体が小さい、転びやすい等など、アンケートから一三九園に二三四件の配慮をしている「気になる子」がいるとの記載がありました。
子どもは大なり小なりジグザグの発達をします。各年齢の発達を正しく理解した上で、個性として捉えるのか、環境から来る偏りか、発達障害を念頭に置いた保育が必要なのか経過観察すると共に良かれと思われる働きかけを日々続けていきます。保健職としての役割は十分にできているのか自間自答する毎日になります。「気になる子ども」へ、どのような配慮をしているのかアンケートから資料3にまとめたところ、配慮点は外部機関との連携、園内の取り組みと大きく二つに分けられました。外部機関からなんらかの判断や指導を九七件が受け、園内では多い順に、丁寧なかかわりをする、担当保育者を決める、詳細な個人記録をとる、園全体で取り組む、保護者と連携をとる、経過を観察するなど個人を大切にした保育が行われていることがわかりました。
長崎の幼児誘拐殺人事件から
保育にかかわる私たちは、家庭裁判所が発表した処分理由から、教訓を読み取り配慮していくべき内容を思い浮かべ、身の引き締まる気持ちを抱いた方も多くいらしたのではないでしょうか。「仲間関係の樹立ができず情緒的表出も不適切。幼少のころから手先の不器用さや運動機能の発達の遅れが見られ、言語性知能と動作性知能の間に極端な差がある。広汎性発達障害と解する」「幼稚園時代から他者との意思疎通に難があり、さまざまな特異行動が見られた。特異な行動傾向を踏まえ、社会的に望ましい行為や望ましくない行為はどのようなものであるか、一つ一つ丁寧にねばり強く教育していくことが不可欠」。
対人関係に問題があるものの診断されない子どもの場合、巡回指導等で詳しい援助方法を聞く機会もなく、保育の糸口がなかなか見つけられないことがあります。診断されないゆえに保育の見通しも立ちません。他児へ暴力行為をする子どもの理解のために、園医に相談し、心理職をよんで学習、個人記録を作成し、担任から非常勤職員までもが講習会のはしごをした年もありました。
資料3
発達上気になる子どもの配慮点
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配慮点/年齢 |
0歳 |
1歳 |
2歳 |
3歳 |
4歳 |
5歳 |
合計 |
外部 |
専門機関と連携 |
4 |
4 |
11 |
27 |
14 |
22 |
82 |
保健所と連携 |
|
1 |
1 |
1 |
2 |
1 |
6 |
児童相談所と連携 |
|
1 |
|
1 |
3 |
1 |
6 |
心理判定 |
|
|
|
2 |
|
|
2 |
ことば相談 |
|
|
|
1 |
|
|
1 |
園内 |
丁寧な関わり |
|
2 |
14 |
17 |
11 |
17 |
61 |
担当保育者を決定 |
|
2 |
8 |
10 |
3 |
1 |
24 |
記録 |
|
4 |
5 |
3 |
4 |
3 |
19 |
園全体で取り組む |
1 |
1 |
3 |
3 |
3 |
3 |
14 |
保護者と連携 |
|
|
1 |
3 |
4 |
2 |
10 |
経過観察 |
1 |
4 |
1 |
|
1 |
|
7 |
赤ちゃん体操 |
1 |
1 |
|
|
|
|
2 |
合計 |
7 |
20 |
45 |
68 |
45 |
50 |
234 |
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私たち保育者にできること
友達にすぐ手が出る子どもへの対応を例にとると、その子の思いを、ひとつひとつ言葉に出して代弁し「遊びに入れてほしい?」「いれて、って言おう」・「じゃまなの」「どいて、だよね」・「ちょうだいな、でしょ」とおだやかに正しい接し方を示し続け、落ち着いて来たこともありました。「だめでしょ!」「やめなさい」の否定言葉は決して使わない、あるべき方向を示した言葉と対応は、受け止める感性の幅が狭い子や鋭すぎる子にとって、感情の爆発が抑えられ、生活の見通しに大きく影響していると実感しています。耳よりも目からの情報が伝わりやすい子にはジェスチャー、アイコンタクト、絵カードも効果的な場合もあります。ひとつひとつ確かめながら関係をつくっていきます。「気になる子どもの配慮点」における丁寧な関わりの基本的姿勢といえるでしょう。
担任はもとより園長、保健職は医療・療育機関からの情報を集め学びます。職員全体で担任をバックアップしていける職員集団になってはじめて統合保育が円滑に行われているといえます。見通しが持てる保育、ここを伸ばして行きたい、こんな統合保育集団でありたいと目標を持ち生活できたらすばらしいと思います。保護者とスクラムを組んで、必要がある時は小学校との連携にも配慮できたら、子どもの未来がさらに一歩進むのではないでしょうか。保健師、看護師は専門職として、必要に応じより的確な保健的視点を示し、二次的障害、生活障害を与えないよう保育をすすめると共に、生死にかかわるような危険の回避を行い、科学的に保育を支え連携につとめたいものです。
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