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―子どもと食生活(41)―
幼児期からの和食の奨め
―健康面からごはん食を考える―
武蔵丘短期大学学長 実践女子大学名誉教授 藤沢 良知
 
はじめに
 私達の子どもの頃と比べて、最近は豊かな食物、色とりどりの加工食品に囲まれ、感覚的には豊かさや満足感を与えているように思われる。
 しかし、現代っ子は果たして幸せか、生活習慣病の時代といわれるが、子どもの食事は健康的かと考えると、問題の多いことに気づかれておられることと思われる。
 今回は、日本型食生活を特色づける米を中心に、食の在り方を考えてみたい。
 
一、最近の国民栄養の姿
 物の豊かな時代、子ども達は好きなものが食べられる時代となった。
 子どもの好きなものというと、決まってカレー、シチュー、ハンバーグといった洋風の脂肪分の多い、カタカナメニューが多い。また、噛みごたえのないやわらかいものが多く、噛む力が衰え、歯の健康にも悪い影響を与えている。
 もっとも昭和三〇年代の日本人の食事は、炭水化物に偏って、脂肪摂取量が少なく、「もう一匙の油を」といったスローガンのもとに食生活改善運動が進められてきた。その後漸次改善され、昭和五〇年代の食生活はPFCエネルギーバランスは最も優れていたが、食の洋風化は一層進んできて、現在では脂肪エネルギー比が適正範囲を超えている。
 国民栄養調査による脂肪摂取量は、昭和三五年には、国民一人当り二四・七gであったが、平成十四年は五四・四gと二・二倍にも増加している。
 動物性脂肪の摂取量は、昭和三五年の八・六gが平成十四年で二七・二gと三・三倍にも増加している。脂肪摂取量の目安は、脂肪エネルギー比で小児期は二五〜三〇%、成人期で二〇〜二五%とされている。
 国民平均でみると、脂肪エネルギー比は昭和三〇年代に入って増加し、昭和四〇年代後半には二〇%台へ、平成十三年で二五・二%、平成十四年で二五・一%と、これ以上脂肪はとりすぎないことが大切である。
 平成十四年調査から幼児期の栄養摂取量をみると、脂肪エネルギー比は二八・三%であるが、カルシウム、鉄はかなりの不足、また、平成十三年から調査された微量栄養素では、銅の不足も目立っている。
 
二、主食・主菜・副菜を揃えて
 平成十二年に文部省、厚生省、農水省三省合同作成の食生活指針に「主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを」の項目がある。
 この考えは、日本に昔から伝えられてきた独自の献立づくりの知恵であり、これを現代風にアレンジして献立づくりを考えたい。
 主食として用いられる米、パン、めん類はでん粉中心のエネルギー源として、炭水化物の割合を適正に保ち、食物繊維を供給したり、栄養バランスを保つ上で大切である。
 ところが、近頃の子ども達はおかずばかり食べてごはんやめん類を食べないような食事をしているのを見掛けるが、栄養素バランスを保つ上で問題である。穀類エネルギー比は幼児期で少くとも三〇%程度は確保したい。
 主菜は、おかずの中心となるたん白質を中心とした魚・肉・卵・大豆製品等で、たん白質のほか、脂肪やビタミン、ミネラルの給源としても役立つ。毎食どれか一品は必ずとれるような献立を考えたい。
 副菜は、主菜に付け合わせてとる。野菜、果物、いも類、海藻など、主食、主菜で不足するビタミンやミネラル、食物繊維を補う面で大切な役目を果たしている。主菜との相性を考えて選ぶようにしたい。
 また、毎食ごはんなどの主食は一定量をきちんととるようにし、主菜「副菜はなるべく多種類のものを取り合わせるようにしたい。
 最近は加工食品、調理済食品が多く出回っているが、あくまでも調理の素材と考えて、手作りの心をもって、野菜類など添えるなど付加価値のついた献立づくりを考えたい。
 
三、米の摂取量
 食料需給表により、米の年間一人当り消費量をみると、ピーク時の昭和三七年度には一一八・三kgであったが、平成十四年度は六二・七kgと四七%減となっている。
 国民栄養調査で、米の摂取量をみると、国民平均でピーク時の昭和三四年には三四六gであったが、平成十二年には一六〇gと五四%減となっている。もっともエネルギー摂取量が総体的に減少していることもあろうが、米の摂取量の減少はあまりにも急激である。
 米類、野菜類の摂取は、食の洋風化を抑え日本型食生活のすばらしさを維持する上でも、また、生活習慣病予防上も極めて重要である。世界的にみても米の良さが見直しされて日本食のブームが広がっている。
 
四、ごはん食・和食の魅力
 平成十二年の食生活指針の第四項目に「ごはんなどの穀類をしっかりと」として、(1)穀類を毎日とって、糖質からのエネルギー摂取を適正に保ちましょう、(2)日本の気候・風土に適している米などの穀類を利用しましょう。の小項目が示されている。
 最近の日本人の食事は、脂質のとりすぎ、カルシウム、鉄の不足など栄養バランスの乱れがみられる。昭和五〇年代頃の食事は、世界各国の食事と比べて、PFCエネルギーバランスがよく、日本型食生活として評価されている。(図1)
 
図1 PFCバランスの推移(%)
資料:国民栄養調査成績による平成14年の( )内は適正値
 
 国民栄養調査から、米の摂取と他の食品摂取との相関関係をみると、正の相関関係にある食品は魚、大豆、野菜類で、米と相性の良い食品であることがわかる。負の相関関係にある食品は、肉類、牛乳、乳製品、砂糖や脂肪の多い食品である。
 ごはんをしっかり主食の座に位置づけ、米と仲の良い魚・大豆・大豆製品・野菜類を組み合わせて食べることで、和食の良さ、日本型食生活のすばらしさを伝承していくことができよう。
 子どもは食習慣の形成期・子どもの時からごはんを中心とした和食のすばらしさを、しっかり舌に覚えさせることが、幼児期からの生活習慣病予防の食習慣づくりとして極めて重要である。
 
五、米の栄養価
 精白米の成分を、五訂日本食品標準成分表でみると、一〇〇g当たり炭水化物七一・一g、たん白質六・一g、脂質〇・九g、エネルギーは三五六kcalである。(図2)
 ごはん軽く一杯分(一二〇g)でみると、エネルギーにして二〇二kcalと低カロリーである。かつて、ごはん食は太るといった俗説があったが、ごはん食は低エネルギーであること。加えて粒状のごはん食は、粉食に比べて咀嚼回数が多く、ゆっくり消化吸収することになり、血糖値をゆっくり上げるという利点がある。
 また、体脂肪の合成を促すホルモンであるインスリンの分泌を刺激しないため、ごはん食はむしろ太りにくい食べ物といってよい。
 このようにごはん食は栄養バランスがよく、子どもが成長して成人に達したとき、肥満、糖尿病、循環器病など、生活習慣病の予防に役立つことになるのである。
 
図2 精白米100gあたりの栄養価
資料:5訂日本食品標準成分表による
 
まとめ
 日本は平均寿命・健康寿命とも、世界一を誇るまでに至った。その要因は何かと考えた場合、日本人の食事のすばらしさが大きく影響しているように思われる。
 食が変われば、病気も変わる、寿命も変わる、また普段の健康状態も変わるのである。ごはんを中心として、魚・大豆・大豆製品、野菜類を組合せた和食の基本に乳類、肉類等加わった低脂肪の食事が健康長寿の立役者のように思われる。
 WHOは一九九〇年「小児期からの循環器病予防に関する専門委員会報告」で、生活習慣病を引き起こすリスクファクターは、幼児期に確立した生活行動様式で決まると指摘している。そして小児期からの健康教育の重要性を述べている。
 幼児期からのしっかりした、食習慣づくりが、ひいては生活習慣病予防につながる食生活の基本であることを再認識したい。
 
参考資料
一、M・A・F・F 食料の安定供給と美しい国づくりに向けて、農林水産省
二、平成十四年度食料・農業・農村白書のポイント、農林水産省
三、食生活指針ガイド、(財)日本食生活協会・農林水産省
四、平成十四年国民栄養調査成績の概要
 
 
 
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51 第2回21世紀出生児縦断調査の概況−その2− (厚生労働省大臣官房統計情報部 H15.12) 10
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14 平成14年 人口動態統計(確定数)の概況 (厚生労働省大臣官房統計情報部 H15.08) 19
22 平成12年 国勢調査 第2次基本集計結果 結果の概要(総務省統計局 H14.1.31) 14
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38 認可外保育施設の状況について (H14.3.31) 1
48 平成12年度 人口動態職業・産業別統計の概況 (厚生労働省大臣官房統計情報部 H15.08) 23
 
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44 平成16年度幼児教育関係予算(案)の概要 H15.12 1
 
 
 
太田 象
 
 年が改まったが、未だにコートは着ない。数年前東北に赴任して当地の冬の寒さを経験したこともあり、また生来の無精も手伝ってか、風邪をひくまでコートを着ないというパターンが多い。筆者が地方にいた頃、お世話になり薫陶を受けた保育所関係者は、引き続きご活躍されている方もいれば、引退された方もいる。かつて保育所がたくさん作られた時代の経営者が、そろそろ交代期に入ってきているのを感じる。その次の世代となると、やや空白の感があって、四十代以下の若手が保育界では目立つような気がする。日保協青年部の大切さもそんなところにあって、先月号では生硬な印象をうけたと書いたが、反面、団体としての主義・主張とは離れた議論を重ねる時期もあっていいのかなと思ったりする。
 地方にいたとき、筆者の目からみて、日保協というものがどのように映ったか書きたいと思う。筆者のいた県には、日保協の支部と社協の保育協議会の二つの集まりがあった。保育所は公立、私立あわせて全部で三五〇くらいあったが、日保協支部には六〇あまり加入していたと思う。社協の保育協議会には、公立も含めて、ほとんどの保育所が加入していた。もともと社協の関係は、児童だ、障害だといったことを越えて、社会法人としての集まり、社会福祉施設全体としての集まりの性格もあるから、その関係に引っ張られて社協の方には自ずとほとんどの保育所が加入することになるのだろう。言い方は不適切かもしれないが玉石混淆の集団である。社協の保育協議会に入っていれば、最低限の情報は伝わってくるから、致命的な遅れは防げる。最低限、制度の動きについていける。年に一回くらい研修会があって、専門家、行政県庁の担当者などが招かれて説明が行われる。
 一方、日保協県支部はどうか。これは、県内保育所の精鋭集団である。保育所経営を取り巻く環境の変化、将来の動向に敏感で、情報も中央から伝わり、早く、しかも直接的である。ときに県庁の保育担当者よりも早く情報をつかんでいるくらい、新しい動きに敏感で、取組も早い、積極的である。
 筆者が地方にいた時代は、延長保育や一時保育といった特別保育の普及が急務であった(今もそうだと思う)。措置費だけでは、やっていけない時代、毎日保育所に通っている子どもの家庭だけでなく地域の子育て支援拠点としての役割が保育所に求められているということを県支部のメンバーはよくわかっていて、積極的に取り組んでいたと思う。
 行政に対する働きかけも強力で素早く、自治体の担当者がうるさく思う反面、頼りにするのも日保協支部のメンバーの保育所だったように思う。市町村も県も、三年〜四年が標準的な人事異動のサイクルで、担当者がどんどん変わっていく。保育所実務はもちろん、地元の事情に精通し、しかも最近の制度の動向にも強いから、何か、わからないことがあったら、彼らに聞くということも多かったようだ。
 
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