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保育界(平成16年2月号)

 事業名 保育活動の推進
 団体名 日本保育協会 注目度注目度5


―ルポルタージュ(33)―
神奈川県の第三者評価事業
 福祉サービスの第三者評価事業について、各自治体ごとの取り組みが進んでいる。神奈川・横浜・川崎の三自治体も、昨年十二月、相次いで検討状況を明らかにし、合同のシンポジウムも開催した。県は、評価機関を認証し、第三者評価事業を推進するための仕組みづくりを検討し、利用者や事業者、評価機関などで構成する「神奈川県福祉サービス評価推進機構(仮称)」の設置構想を打ち出している。横浜や川崎は独自の評価基準案を作成し、それぞれに試行事業に取り組む。今回は、神奈川県で進む、第三者評価事業の取り組みについて紹介する。
 まず、神奈川県では、県の福祉サービス第三者評価あり方検討会(委員長=川廷宗之・東海大学教授)が昨年十二月二十五日、検討会の報告書(素案)をまとめた。評価機関を認証したり、評価調査者を養成するなど、第三者評価事業を推進するために、「神奈川県福祉サービス第三者評価推進機構(仮称)」を民間主体の合議型の組織として設立、同評価推進機構が共通評価目標を設定することなどを提言している。
 都道府県単位で評価機関を認証する組織として、東京都は外郭団体に福祉サービス評価推進機構を設け、大阪府は関係者が参画する組織として「福祉サービス第三者評価システム推進支援会議・大阪」を設けている。素案に盛り込まれた評価推進機構は、大阪府のタイプと言える。
 評価推進機構については、(1)第三者評価が、事業者の主体的な改善の取り組みを支援するもので、行政の行う指導監査とは異なる(2)利用者、市民、事業者、評価機関などが互いに福祉サービスの質について情報交換を行う、話し合う場として機能することなどが求められる―といった点から、「民間が主体となった合議型の組織として運営していく」よう提言している。
 評価推進機構の事業内容としては、(1)評価機関の認証等(2)共通評価項目や評価項目の研究等(3)評価機関及び評価結果等の情報提供(4)評価調査者の養成研修(5)第三者評価の普及啓発(6)評価機関相互の連携―などが挙げられている。メンバーとなるのは、福祉サービス利用者、事業者、学識経験者、市民、評価機関など。
 評価推進機構内には、この組織の運営に携わる「福祉サービス第三者評価推進委員会」を置き、個別の事業を担当する各種委員会を設ける。各種委員会としては、評価項目についての情報交換や評価の目標などの設定・見直しを行う「評価項目研究委員会」、評価結果や評価機関情報、事業者情報などの公表内容を検討し情報提供する「評価結果公表委員会」、評価機関の認証要件の設定と認証、評価結果に対する苦情に対応する「評価機関認証・苦情処理委員会」などが想定されている。
 評価推進機構の委員となる利用者や事業者などが、各種委員会の運営に参加しながら、評価事業を進めていくことになる。関係者らの合議によって運営するという特長を生かして、評価機関の認証基準の設定や評価結果の決定などに当っても、透明性が高い運営が期待されている。
 今後の課題としては、先行的に検討が進んでいる横浜・川崎との連携が挙げられそうだ。神奈川県では、評価推進機構の評価項目研究委員会が、これから共通評価項目を設定するのに対し、横浜・川崎ではすでに独自の評価項目を策定している。それだけに、共通認識が図れるよう、評価推進機構の場で情報交換を進めて研究する必要がある旨が指摘されている。
 素案については、現在、県民からの意見を求めているところで、最終報告は二月中旬にもまとめる予定にしている。保育所については、来年度から第三者評価事業を実施する予定となっている。他の福祉サービスについても順次スタートする。評価事業の本格実施に先立ち、二月から、神奈川県社会福祉協議会が、県の委託を受けで評価調査者の基礎研修を始める。研修期間は五日間、修了試験も実施される。評価調査者となるには、さらに評価推進機構が実施する養成研修を受ける必要がある。
 同県のこれまでの評価事業の取り組みとしては、平成十二年度から、児童養護施設、乳児院などの児童福祉施設に対して、県立総合療育健康センターが「児童サービス評価」を実施。介護保険については、全国に先駆けて平成十三年度から、かながわ福祉サービス振興会が「介護サービス評価プログラム」を実施してきた。それらを踏まえ、昨年八月に同研究会が発足した。
 横浜市では、「横浜市福祉サービス第三者評価検討委員会(委員長=橋本泰子・大正大学教授)」が昨年十二月三日、保育所や特別養護老人ホームなどに対する評価基準の原案を策定した。一月まで、市民からの意見を募ったところ。すでに、検討委員会委員が評価者となって、公私立保育所四園で第三者評価のモデル事業に取り組んでいる。パブリックコメントの結果も踏まえて、平成十六年度から保育所の第三者評価事業を本格実施する。
 同市の評価基準原案は、(1)本人が満足し、家族も安心できる(2)職員が自信と誇りをもって提供できる(3)第三者の目からみて了解・納得ができる―を基本的な考え方として策定している。評価の手法としては、(1)利用者調査・家族アンケート(2)事業者自己評価(第三者評価と同じ評価シートを使用)(3)評価調査者による評価―によって総合的に実施する。
 具体的な評価基準の構成としては、評価項目ごとに「『横浜における福祉サービスの質はこうあるべき』という期待基準」を判断基準として示しているところが特徴だ。さらに、施設独自の工夫例は特記事項として説明できるようにもしている。
 保育に関しては、「利用者(子ども本人)の尊重」「サービスの実施内容」「地域支援機能」「開かれた経営」「人材育成・援助技術」「経営管理」の五領域に分かれ、六十八の評価項目を盛り込んでいる。
 評価基準の特色としては、「利用者本人の尊重」を重要な視点とし、人権擁護の観点から保育分野では虐待の早期発見に対する取り組みを評価できるようにしている。また、障害児や外国籍の子ども、アレルギー疾患のある子どもへの取り組みなど、特に配慮を要する利用者への対応についても考慮している。
 さらに、保育分野については「子どもの発達にとって重要な位置を占める『遊び』に焦点をあて、遊びを通して総合的な保育が行われるよう、遊びに関して詳細に評価」することを謳っている。具体的には、「遊びが一斉活動に偏らないよう配慮しているか」といった評価項目などが盛り込まれている。
 利用者アンケートとしては、「園の遊びに、お子さんは満足していると思いますか」「遊びを通じてお友達とのかかわりや、お子さんと保育士との関係が十分に育まれていると思いますか」「園長や職員に対して不満や要望を気軽に言うことができますか」などの四〇問近くの設問に対し、四段階で評定するようになっている。
 川崎市では、同市児童福祉審議会(委員長=小林育子・聖セシリア短期大学名誉教授)が十二月五日、「川崎市の保育所における第三者評価のあり方」について意見具申をまとめ、市長に提出した。「川崎らしさ」を盛り込んだ評価項目「川崎市保育所第三者評価」を作成するとともに、川崎らしさを生かすために評価機関の選定を同審議会が行うことを提言している。
 「川崎市保育所第三者評価」は、国の評価基準を参考としながら、同市の公立保育所が早くから障害児保育に取り組んできたことや、こどもの権利条例を制定するなど人権保障に取り組んできたという地域性を踏まえて作成。具体的には、指導計画を年二回以上見直すことを基準としたり、多様な表現活動の項目の中に「自分の思いを言葉を使って表現」することを盛り込んでいる。また、食育の工夫や、健康管理などの面についても、これまでの蓄積を踏まえた評価項目にしているという。
 答申では、県が創設する評価推進機構の活用を視野に入れつつも、川崎市らしさを生かすために、同審議会が評価機関を選定することを提言している。
 さらに、評価機関の要件として、(1)評価機関の構成員が、保育所の構成員と重なっていない(2)法人格を持っており、その形態と、評価に従事する職員体制や履歴を確認(3)評価者の研修履修状況、評価機関の事業内容、倫理規定、苦情・不服申し立て窓口、責任者の設置など整備されているか確認(4)評価者の専門性や習熟度、川崎市の保育事業に関する理解度、また、川崎の評価項目により評価が行えるか確認―などの観点を挙げている。
 また、評価結果の公表については、保育所の了解を取ることを原則として求め、(1)評価を受けた保育所の基本情報(2)評価機関の基本情報(3)訪問調査実施年月日(4)評価結果−を公表するよう提言している。
 さらに、評価を実施する際の要望として、(1)川崎市保育所第三者評価の活用促進(2)評価費用の助成(3)公正・中立、専門性の高い評価機関の選定(4)保育所の周知徹底(5)市民への周知徹底(6)評価結果の迅速な公表―を求めている。このうち、評価費用については、川崎らしさを活かした「川崎市第三者評価」による第三者評価事業を求める場合には、評価費用を市が助成するよう求めている。
 同市は、今年度中に公立保育所二園でプレテストを行い、平成十六年度には公立保育所七園、私立保育所三園の計十園での評価事業の施行を予定している。
(山田)
 
 
 
木を使ったぬくもりのある保育環境を
林野庁林政部木材課 需要開発班担当課長補佐 小林 重善
 
 仕事柄、保育、教育関係者と接触する機会が多いのですが、私を林野庁関係者と知ってか、誰もが口にするのは、「幼児、児童を包む空間には、是非木を使いたい」ということです。木は湿度の調節を行い、ダニや菌類の発生を抑制するほか、木造の学校はインフルエンザに罹る率が低いなど、健康的でぬくもりのある空間をつくる優れた材料です。林野庁は、このような木の良さのPRを行っており、それが相当に浸透してきているのではないかと手応えを感じるわけです。
 しかしながら、現実はやや違うようです。保育所は、毎年の建設件数のうち二割ぐらいが木造とされておりますが、私の子供の通った二つの保育園はどちらも鉄骨によって造られたものです。学校に至っては、木造の占める割合は、床面積で七%ぐらいの水準に過ぎません。
 このため、林野庁と文部科学省は、「木の学舎」の実現のために、情報交換の場を設け、互いに木造校舎の建設に障害となっている点を分析し、推進策をいろいろと練ってきており、その結果、木造校舎の占める割合は数年前の倍ぐらいに増えてきています。
 特に、注目すべき点があります。木造校舎を建てる場合は、コンクリートなどの建物を壊したり、別の場所に移転して建てなければならないわけですが、今あるコンクリートなどの校舎を壊さずとも、フローリングや壁の一部(腰板)など、児童が寝転がったり、走り回る遊びの空間には木をふんだんに使うようになってきています。聞くところによると、調査した学校の九割以上の学校施設が床や壁に木材を利用しているそうで、私たちも驚いております。
 さて、林野庁では、木による公共空間を実現できるよう支援するため、「木造公共施設整備事業」を実施しております。この事業は、木の良さを理解していただくため、不特定多数の方々が利用し、展示効果やシンボル性の高い公共施設に地域の木材を使っていただくことが、大きな波及効果を生むとの考えを基本にしております。こうした施設は規模や構造が様々であり、設計や部材調達など地域の木材を使用する上で工夫を要することが多くあります。このため、地域材の利用を促進する上で、特に効果的な公共施設についてモデル的に整備を行うものです。
 支援の内容は、(1)都市と農山村の共生対流を促進するための公共施設の整備、(2)児童福祉施設等における木製遊具の整備、(3)学校に関連した公共施設の整備、(4)先駆性のある木造公共施設の整備であり、これらを実施できるのは地方公共団体で、(2)については、厚生労働省と調整し、社会福祉法人も実施できることとしております。
 (3)の学校関連の事業については、文部科学省と調整し、伝統文化活動や地域住民などとの交流を行うため、学校内の余裕教室の木質内装化や複合型の施設の整備などにも支援しています。このほか、文部科学省などが中心となり行っている、環境を考慮した学校施設を「エコスクール」と称し、エコスクール・パイロット・モデル事業として学校施設整備の支援を行っており、この一環として、林野庁としても既にRC造で建てられた校舎などの木による内装の整備に支援を行っております。
 また、先進的な都道府県では、それぞれの独自の事業として、保育園や幼稚園の木造、木質化に対する支援を行っている例があります。林野庁としては、このような事業を行った際には、県に対し、一定の応援ができるような仕組みを用意し、これを推進しております。現在把握している県は、数県ありますが、都道府県によって助成の内容が異なりますので、それぞれの県から、次号以降でご紹介していただこうと考えております。
 
山東幼稚園(滋賀県山東町)幼稚園と
地域交流を併せ持った施設です
 
 
 
心と体の栄養
−保育園で一日の大半を生活する子どもに大切なこと−
 
 閉鎖的な環境の保育園等で暮らす子どもにとって様々な人と関わる機会は少ない。特別な時を除いては、クラス担任のみとの関わりに限られるという話を聞いたこともある。確かに塀で囲われている施設で、クラスも年齢別に分けられていることも多く、クラス単位で活動することも多い。クラス交流でもやっていなければ、クラス間の行き来も少ない。
 子どもの人格形成の過程において、多くの人と触れ合って刷り込みを受けることは社会化(コミュニケーション機能発達)にとって大切なことといわれている。保育においても、保育士以外の多種多様な技術や特技、知識等を持った様々な人が子どもたちに関わる機会を出来るだけ多く作っていく必要がある、ということも言われはじめている。
 ここで一つの実践例を紹介する。そこの園では、保育とは畑違いの東大で農学を学ぶ院生が、その専門的な知識を生かして園庭の植物の世話をしている。保育に参加していく中、園で給食を作っている調理師と子どもの食について意見を交わすうちに、畑作りが提案された。この調理師も数か月前まで一般のレストランで働いていた経歴の持ち主で、子どもたちは彼を慕って「シェフ」と呼んでいる。院生とシェフはお互い協力して、園庭の片隅に小さな畑を作り野菜の栽培を始める。子どもたちと一緒に土を耕して、野菜の苗を植え、直接自分たちが畑で栽培したものをやがて収穫して食べる―こうして食育の原点への取り組みが始まった。
 レストランでは厨房から出ることのなかった料理経験豊かなシェフが保育園で子どもの生活の要である食事に注目して、食べる人の顔が見えて結果が判る給食というものを大事にしていく。すなわち子どもたちの食に関して本物を提供し、子どもたちが子どもの時期から、自分たちが食する料理の素材を知り、調理の過程までも見ることによって、子どもたち自身が参加体験をする。例えば鮭の料理(チャンチャン焼き)では在園の親子が実際に川の簗場へ行き鮭を捕獲するところを見学する。そしてその時に漁師から分けて貰った鮭を保育園に持ち帰り、子どもたちに形や鋭い口先や大きな目玉を触らせて、鮭という魚の感触や特徴を理解させる。それから良く切れる包丁で、鮭を切る音や捌くところを見せてから、子どもたちが捌いた魚の腹にいろいろ味付けした具を詰める。その後に職員が園庭に作ったカマドでアルミホイルに包んだ丸ごと一匹の鮭を焼く、煙たくても我慢して焼きあがるのを待つ子どもたち、焼き上がった鮭はシェフが昼食時に、子どもたちに取り分けるサービスを実演して見せる。鮭は取り分けられて、アッという間に皆の口に運ばれる。
 このように視覚・触覚・聴覚・嗅覚・味覚の五感を使って、参加体験して、実際に素材から料理するということを、理解させる試みが出来る。それは保育園の中に調理室があり、調理職員が配置されているからこそ出来ることで、保育園の最も重要な特色ある保育の必要条件と言える。また、このような例は園が普段から、地域と様々な多くの人々が出入りできる環境作りや、受け入れる姿勢づくりに努めていたから、この様なシェフや院生が保育園に来ることができたのだと思う。子どもの発育にとって栄養計算に裏付けされた優れた献立給食も、子どもたちが実際においしく食べて初めて身となり栄養になる。
 子どもの心の栄養ともいえる「人とのかかわり」は保育園の保育に様々な人が関わり携わることによって実現する。子どもが保育中に触れ合った多くの大人から、心の栄養として様々な愛情を注いでもらい大きく自己を成長させていく。保育園として多くの関わりの場を創造していく、そんな心の料理人(シェフ)としての役割も保育者として担っていければと思う。
(らっこ)







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