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図3.1.5.1.2 Fault tree to loss of ships
(corresponding to "LS" in the event trees
 
3.1.5.2 STEP 2 リスク解析
3.1.5.2.1 リスク評価の手法
 リスク評価は、事故統計の調査・分析・整理及びハザードの同定から絞り込んだ事故シナリオについて、事故事例分析に基づいて定量化を行った。なお、バルクキャリアのリスクを求めるにあたっては、以下の2段階に分けて分析作業を実施した。
■近年導入された、ESP(検査強化プログラム)やSOLAS XII章等の各種対策の効果は過去の事故事例の中には含まれていないとの前提で、事故事例分析に基づく導入前のリスクレベル評価を行う。
■事故事例ごとに、これら対策の効果を事後推定することにより、導入後のリスクレベルを推定する。
 
3.1.5.2.2 ESPやSOLAS XII章等のRCO導入前のリスクレベル評価
3.1.5.2.2.1 事故事例の分析結果(F-N CurveおよびPLLを含む)
 事故事例を分析した結果、1978年から2000年8月迄に1126人の乗組員が死亡していることが判明した。死亡者数の内訳を事故シナリオ/グループ毎に見ると図3.1.5.2.1のように表すことが出来る。これはこれ以外の原因による死者も加えた総数2067人の死者数の約54%を占めている。
 これから、バルクキャリアの構造損傷及び浸水事故による死者数を問題にする場合、事故シナリオ/グループNo.1が重要であることが分かる。詳細はAnnex 5に報告したとおりであるが、Senario1-1の事故は208件あり、そのうちの約半数である95件が全損にいたっており、これが死者数が多いことに対応している。Deck Fittings Failureとして特定できたものは9件あるが、全損に至ったものは1件のみである。Securingを含めたHatch Cover関連の損傷に起因する事故は20件あり、8件が全損に至っている。
 
図3.1.5.2.1 事故シナリオ/グループ毎の死亡者数の内訳
 
3.1.5.2.2.2 事故データに基づくETA(Event Tree Analysis)
 事故データの調査結果を考慮して、重大事故につながる典型的な事故シーケンスやイベントの進展について、イベントツリーを構築した。10,000DWT以上のすべてのバルクキャリアについて、主に船体構造損傷のシナリオに注目したものを図3.1.5.2.2に、ハッチカバーやその他閉鎖装置等の事故に特化したものを図3.1.5.2.3に示す。
 
3.1.5.2.2.3 事故データに基づく全損事故の要因分析
 全損事故の発生を表した定性的なFT(Fault Tree)に対応して、過去の事故事例を分類整理した。結果を図3.1.5.2.4に示した。これから、全損事故に至るには逐次浸水(Progressive Flooding)がおきるかどうかが最も重要で、次いで単独の貨物倉浸水が全損に寄与していることが分かる。
 
図3.1.5.2.2 
Event tree diagram with casualty breakdown (10,000dwt+)
(拡大画面:152KB)
Note: 1) 
図の右端に表示のEvent No.のうち奇数のものは高比重貨物(1.78t/m3以上)を積載した状態で起きた事故を表す。
2) 
イベントツリー中の各分岐の肩に、それぞれのイベントで分岐した事故件数を表す。
3) 
浸水したHold No.が判らないものについては、専門家判断により浸水Holdを想定した。したがって、イベントツリー中に表示の損傷件数及び死者数は、本研究の中で推定したそれぞれのシナリオの損傷件数、死者数とは必ずしも対応していない。
4) 
Event No.39&40(本検討の対象からは除外したケース)については、以下のBreakdown Diagramにその詳細を示す(図3.1.5.2.3参照)
Findings: 
ラフな解析ではあるが、バルクキャリアの重大事故において、No.1貨物倉の浸水に関連の人命損失率が比較的高いように見受けられる。この傾向は、ハッチカバー関連の事故においてさらに顕著である。
 
図3.1.5.2.3 
Event tree diagram with casualty breakdown with regard to hatch cover failure
(Failure of hatch cover or other closing device as initial event)
(拡大画面:104KB)
Note: 1) 
図の右端に表示のEvent No.のうち奇数のものは、Fore endあるいはNo.1貨物倉に関連の事故を表す。
2) 
Event No.21に分類されている44人の死者を出した事故は、広く知られているM.V.Derbyshireの事故である。
Findings: 
ハッチカバー関連の事故のうち、締付に関する不具合による重大事故発生率は、構造損傷による重大事故発生率と同じである。しかしながら、ハッチカバーの締付に関する不具合の結果失われた人命の数は、構造損傷による人命の損失数に比べて著しく多い。
 これは、締付不具合(クリートの構造損傷、人的要因等も含む)の場合、ハッチカバーが流失または開いてしまい貨物倉が一度に大きく暴露してしまうことに原因があると、単純に想像できる。恐らく、これが200人もの死者を出した理由であろう。
 事故データ分析から判断すると、貨物倉浸水に対する一次バリヤとしてのハッチカバーパネルの強度よりも、むしろハッチコーミングも含めたハッチカバーの締付装置(機械的、人的要因の両方を含めて)の健全性が、人命損失事故と密接な関連があると見受けられる。
 
 
 







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