4. ガンビア
4-1 概要
4-1-1 一般事情
(1)面積:11,295km2
(2)人口:148万人(2003年推定)
(3)首都:バンジュール
(4)人種:マンディンゴ族、ウォロフ族、ジョラ族、セラフリ族
(5)言語:英語、各民族語
(6)宗教:イスラム教80%、アニミズム10%、キリスト教10%
4-1-2 政治体制
(1)政体:共和制
(2)元首:ジャメ大統領
(3)議会:一院制(50議席)
(4)政府:首相職なし
(5)略史:
1965年英国より独立。1970年共和国となり、ジャワラ大統領就任。1982年に隣国セネガルとセネガンビア国家連合を設立したが、1989年には連合解体。1994年にはクーデターが発生し、ジャワラ大統領はセセネガルへ亡命。民主化移行期間を経て1996年大統領選挙でジャメ大統領就任。
(6)内政:
1994年7月、ジャメ中尉を中心とするガンビア兵は、1970年に共和制への移行以来安定した内政により長期政権を維持してきたジャワラ大統領(当時)を無血クーデターで追放し、軍事政権を樹立。同中尉は大統領に就任した。新政権による2年間の民主化移行期間を経て、1996年9月の大統領選挙の実施によりジャメ候補が当選した。さらに、1997年1月に国民議会選挙が実施され、国民議会の召集により民政移管を完了し、国際社会との関係を改善した。5年間の大統領任期を経て、2001年10月の大統領選挙で再選を果たしたジャメ大統領は、2002年1月の国民議会選挙での同大統領率いる与党「再指針と構築のための愛国同盟」の圧勝により、安定した政治基盤に基づく政権を維持している。
(7)外交政策:
ジャワラ前政権は、穏健な非同盟主義を基調としつつ、英連邦加盟国としての西側諸国との友好的関係維持、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)内における発言力強化に努めてきた。1994年の軍事クーデター発生以降、西側諸国より新規援助停止を含む厳しい措置をとられてきたが、1996年以降民主化プロセスの進展に伴い1990年代後半に援助は再開された。なお、1998年1月より2年間、国連安保理非常任理事国に選出され、1998年3月には議長国として活動した。また、カザマンス問題(2-1-2(6)参照)においては、セネガル政府と分離独立を主張するMFDCとの和平プロセスの進展に向けての仲介努力を積極的に行っている。現政権はECOWAS諸国等近隣諸国との関係維持に努めている。なお、1998年1月以降2年間、国連安保理非常任理事国に選出されている。
4-1-3 経済
一人当りのGNI320米ドル(2001年)の後開発途上国(LLDC)で、GMIの約30%、労働人口の約80%を農業が占める農業国。換金作物として生産される落花生が輸出収入の約70%を占めているが、近年の一次産品国際価格の低迷に加え、これらの生産は不安定で、旱魃、虫害等の影響による生産減が経済発展の阻害要因となっている。現在、世界銀行・国際通貨基金(IMF)の支援の下、マクロ経済政策と広範な構造調整を実施しているが、数年にわたる貧困消滅努力にもかかわらず、経済状況は依然として厳しい環境となっている。
主要経済指標(EIU2003年見通し)
(1)GDP: 4.01億米ドル(農業:38%、商業:49%)
(2)実質GDP成長率:2.5%
(3)国民一人当たりGDP: 330米ドル
(4)物価上昇率:9.0%
(5)失業率:不明
(6)国際収支:
・輸出総額(商品):1億2,900万米ドル
・輸入総額(商品):2億2,000万米ドル
・経常収支:-2,400万米ドル
(7)主要貿易品目(EIU、2000年)
・輸出:再輸出(1億400万米ドル)、落花生製品(1,000万米ドル)魚介類(310万米ドル)、
・輸入:食料品、製造品、機械・輸送機器、鉱石・燃料
(8)主要貿易相手国(EIU、2001年)
・輸出:仏(21.6%)、英国(18.8%)、伊(10.9%)、独(7.6%)
・輸入:中国(25.7%)、セネガル(9.5%)、ブラジル(7.9%)英国(6.7%)
(9)外貨準備高:1億700万米ドル(金を除く)
(10)対外債務:5億960万米ドル
(11)債務返済比率:7.3%
(12)通貨:ダラシdalasi(D)、1米ドル=29.9D
日本との経済関係
対日関係は良好。日本政府は、1994年7月のクーデター以前は、食糧増産援助、水産分野、水供給分野等における無償資金協力及び水産分野等での研修員受入等の技術協力を中心に実施し、1990年度及び92年度には、ガンビアの構造調整努力を支援するため、合計6億円のノン・プロジェクト無償援助を供与した。
しかし、1994年のクーデターを機に、1994年9月、日本政府はODA大綱を踏まえ、緊急的かつ人道的性格を有する援助を除き、原則として新規の援助を停止した。1996年に入り一連の民主化プロセスが進展したことに鑑み、ODA大綱を踏まえ、1997年3月、同国に対する援助の再開を決定した。また、1998年2月には無償資金協力及び技術協力に関する政策協議を実施した。今後は、当面、即効性が高く広く国民に裨益する食糧援助及び食糧増産援助や民主化を促進しガバナンスの構築に資する支援等につき検討していく方針。
(1)対日貿易(2000年)
対日輸出:3億8,800万円
対日輸入:6億5,000万円
(2)主要品目
対日輸出:軟体動物(いか、たこ等)、魚(冷凍)
対日輸入:鉄鋼板(メッキ)、貨物及び乗用自動車
(3)日本からの直接投資
1951〜1999年まで累計で、4件、180.2万米ドル投資されている。
4-2 海事事情
4-2-1 港湾
ガンビアは西アフリカの西端に位置し、三方をセネガルに囲まれている。ガンビア川の河口に位置した同国は、ガンビア川に沿って東西400kmに及ぶ低地の大陸部と、沖合のセントマリー島からなる。ガンビア川は10月〜5月の間、主に欧州からの旅行客で賑わう西アフリカでも屈指の観光航路である。ガンビアは大西洋に面した45kmの海岸線があり、主要港は、首都のバンジュールにある。
バンジュール港
1993年に開始されたバンジュール港拡張計画により、ガンビア港湾局はここ数年順調な収益を獲得している。拡張計画により、それまでの4隻から7隻の船舶を扱えるようになり、通常月に800コンテナーを処理できるようになった。その間、1994年にはCFA(アフリカ金融共同体)フランの切下げにより、セネガルのダカール港への貨物の手数料徴収が不可能になり、さらに1999年には、不正取締と税関収入改善を目的にPSI(pre-shipment inspection)体制が敷かれた。しかしPSI体制は、輸入全品からCIF(運賃保険料込値段)の1.4%の手数料を徴収し、不必要に時間がかかることから、バンジュール港の取引は22.5%減少し、隣国に流れていった。結局PSI体制は翌年廃止された。取引量は2000年以降回復しているが、以前のレベルには依然として戻っていない。
トレード・ゲートウェイ計画(Trade Gateway Project)
世界銀行の貸付機関と国際開発協会(IDA)は、ガンビア政府に対し、トレード・ゲートウェイ計画資金として1,600万ドルの融資を承認した。このプロジェクトは、競争力のある輸出センター(加工、パッケージ、積荷)の建設を公共、民間セクターの資本参画により進める。4つのプロジェクトの内、バンジュール港に地域間の積荷集中センターを設置することにより、自由貿易港として発展させるプロジェクトが含まれている。
4-2-2 海運
船舶の平均使用年数
(単位:%)
国名 |
船舶の種類 |
0〜4年 |
5〜9年 |
10〜14年 |
15〜19年 |
20年以上 |
耐用年数 |
世界全体 |
船舶全体 |
22.0 |
20.9 |
15.6 |
13.2 |
28.1 |
12.6 |
タンカー |
26.9 |
18.5 |
21.1 |
9.5 |
24.0 |
11.6 |
ばら積貨物船 |
19.7 |
23.9 |
12.8 |
17.8 |
25.8 |
12.7 |
貨物一般 |
9.4 |
13.6 |
9.8 |
16.7 |
50.6 |
17.0 |
コンテナー船 |
31.1 |
33.9 |
13.1 |
10.0 |
11.9 |
9.1 |
その他 |
14.9 |
13.1 |
13.4 |
9.4 |
49.2 |
16.0 |
アフリカ・サハラ以南 (オープンレジストリー国を除く) |
船舶全体 |
2.7 |
1.3 |
2.4 |
5.5 |
88.1 |
22.1 |
タンカー |
2.6 |
0.0 |
0.6 |
0.0 |
100.0 |
23.5 |
ばら積貨物船 |
5.3 |
3.5 |
0.0 |
0.0 |
91.2 |
21.8 |
貨物一般 |
1.0 |
1.4 |
5.5 |
17.9 |
74.3 |
21.3 |
コンテナー船 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
100.0 |
23.5 |
その他すべて |
4.7 |
5.2 |
5.2 |
7.8 |
77.0 |
20.5 |
ガンビア |
船舶全体 |
0.0 |
30.7 |
0.0 |
2.9 |
66.4 |
18.2 |
その他すべて |
0.0 |
30.7 |
0.0 |
2.9 |
66.4 |
18.2 |
|
アフリカ全体の海運状況は、2-2-2 海運(セネガル概要) 参照。
4-3 日本政府によるODA実績
4-3-1 日本の援助実績
日本のODA実績
(単位:百万ドル)
|
贈与 |
政府貸付 |
|
無償資金協力 |
技術協力 |
計 |
支出総額 |
支出純額 |
合計 |
1996年 |
0.09 |
0.01 |
0.10 |
- |
- |
0.10 |
1997年 |
0.16 |
0.06 |
0.21 |
- |
- |
0.21 |
1998年 |
0.17 |
0.41 |
0.58 |
- |
- |
0.58 |
1999年 |
1.67 |
0.56 |
2.23 |
- |
- |
2.23 |
2000年 |
2.64 |
0.61 |
3.28 |
- |
- |
3.28 |
2001年 |
2.04 |
1.07 |
3.10 |
- |
- |
3.10 |
|
出典:「日本政府の政府開発援助、ガンビア」
200年度までの累計
・有償資金協力:0円(交換公文ベース)
・無償資金協力:87億4,800万円(交換公文ベース)
・技術協力:9億8,700万円(JICA実績ベース)
研修員受け入れ(1998年度までの実績):82人
専門家派遣:5人
調査団派遣:74人
機材供与:1億790万円
年度別・形態別実績
年度 |
無償資金協力 |
技術協力 |
90年度までの累計 |
42.71億円 |
6.09億円 |
研修員受け入れ |
51人 |
専門家派遣 |
3人 |
調査団派遣 |
30人 |
機材供与 |
95.1百万円 |
91年 |
11.88億円
地方飲料水供給計画(1/4期〉/沿岸零細漁業振興計画/食糧増産援助 |
0.56億円 |
研修員受け入れ |
6人 |
専門家派遣 |
1人 |
調査団派遣 |
14人 |
機材供与 |
1.6百万円 |
92年 |
8.06億円
地方飲料水供給計画(2/4期)/ノンプロジェクト援助/食糧援助 |
0.44億円 |
研修員受け入れ |
2人 |
機材供与 |
2.7百万円 |
93年 |
12.00億円
地方飲料水供給計画(3/4期)/沿岸零細漁業改善計画/食糧増産援助 |
0.80億円 |
研修員受け入れ |
7人 |
専門家派遣 |
1人 |
調査団派遣 |
9人 |
機材供与 |
3.4百万円 |
94年 |
なし |
0.37億円 |
研修員受け入れ |
1人 |
機材供与 |
3.2百万円 |
95年 |
なし |
0.18億円 |
機材供与 |
1.9百万円 |
96年 |
0.29億円
緊急無償民主化支援(UNDPを通じた供与)/草の根無償(2件) |
0.01億円 |
研修員受け入れ |
2人 |
97年 |
0.22億円
草の根無償(4件) |
0.10億円 |
研修員受け入れ |
6人 |
調査団派遣 |
5人 |
98年 |
1.65億円
食糧増産援助/草の根無償(3件) |
0.76億円 |
研修員受け入れ |
7人 |
調査団派遣 |
16人 |
99年 |
5.67億円
食糧援助/食糧増産援助/草の根無償(6件) |
0.53億円 |
研修員受け入れ |
11人 |
調査団派遣 |
4人 |
機材供与 |
18.0百万円 |
2000年 |
267万ドル
食糧増産援助 |
61万ドル |
開発調査 |
2件 |
2001年 |
204万ドル
南コンボ地区水産振興計画/食糧増産援助 |
107万ドル |
開発調査 |
2件 |
|
注)「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力については交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベース
|