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4-3-2 海事関係のODA実績
ガンビア沿岸漁業開発計画
<案件概要>
1. 援助形態:無償資金協力
2. 協力金額:3.24億円
3. 協力年度:1990年
4. 相手国実施機関:ガンビア漁業省
5. 協力内容:ワークショップ(作業所)等の建設。これまで十分に活用されていなかった沿岸の水産資源を活用してガンビア国民の蛋白源とするとともに、食糧自給に資するため、ガンビア漁業局の指導能力の向上を図る。
 
<評価要旨>
(1)効率性
 ガンビア漁業省内にワークショップを建設して国内の各漁業組合のメンバーが育成されており、限られた予算のなかで成果を上げている。
(2)目的達成度
 当初計画どおりにワークショップが建設され、国内の各漁業組合のメンバーを継続的に育成している。
(3)インパクト
 つぎの2点で大きな波及効果が見られた。(イ)魚類加工、流通等の関連産業の育成、(ロ)ガンビア人の食生活の向上。なお、バカオ地区では、多数の関連雇用が創出され、地区の一大産業に成長している。
(4)妥当性
 ガンビアの開発政策に沿ったもので妥当である。
(5)自立発展性
 本件ワークショップ建設後、日本への幹部職員派遣や、漁業局敷地内に独自に魚類試験センターを設立する等の例に見られるように、供与された施設を有効に活用している。
(6)環境への配慮
 漁船(カヌー)制作や「くん製」の製造に際して木材を多量に使用しており、FRP船の導入や鮮魚としての出荷を推進させる必要も考慮すべきであろう。(1999年3月、在セネガル日本大使館)
 
「南コンボ地区水産振興計画」に対する無償資金協力
(1)日本政府は、ガンビア共和国政府に対し、「南コンボ地区水産振興計画(Project for Improvement of Artisanal Coastal Fisheries in the Kombo South District)」の実施に資することを目的として、8億8,200万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が2001年12月11日、セネガル共和国のダカールにおいて、古屋在ガンビア日本大使(セネガルにて兼轄)と先方バイ・ウスマン・セッカ在セネガル・ガンビア共和国高等弁務官(Mr. Bai Ousman SECKA, High Commissioner of the Republic of Gambia in the Republic of Senegal)との間で行われた。
(2)ガンビアでは、漁業は国民への重要な動物性タンパク質の供給源であるのみならず、雇用機会の提供等同国経済を支える重要な産業であり、水産分野の開発・振興が国家開発計画の優先項目の一つとなっている。
 しかし、沿岸零細漁業分野においては、水揚げ場における流通・加工関連施設が未整備のため、水揚げされた漁獲物が有効に利用されていない。同国沿岸漁業最大の水揚げ地であるグンジュールを中心とした南コンボ地区は、加工・流通施設の不足・老朽化が著しく、約30%の漁獲物投棄が発生しているとともに、漁業関連施設・機材も未整備な状況にある。
 このような状況の下、ガンビア政府は、水産物流通拠点としての機能を整備するとともに、流通事情を改善し、水産物の品質保持、安定供給等を目的とする「南コンボ地区水産振興計画」を策定し、この計画実施のための水産物流通施設の整備に必要な資金につき、日本政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
 
4-3-3 既供与船舶の現状
現地調査実施機関:ジェトロ・パリ・センター
現地調査実施期間:2003年11月17日〜26日(セネガル、カーボヴェルデ、ガンビア3ヵ国)
 国内を東西に流れるガンビア川により国土を南北に二分されているガンビアにおいて、人・物資の移動はガンビア川に沿った南北2本の幹線道路によって行われており、南北幹線道路はガンビア川河口と国土中央部の2ヶ所でのみフェリーボートで結ばれている。河口に位置する航路がBanjul-Barra航路、国土中央部にあり首都バンジュールから川沿いに約100km内陸に入ったところにあるのがTransgambia航路である。今回の調査対象であるTransgambia航路は、最も車両の交通量が多く西アフリカを横断する交通網の一部として重要な位置にあり、1986年にガンビアからの要請を受け、我が国より150GT型河川横断フェリーボート2隻(「James Island」号、「Barajally」号、1988年引渡し)が供与され、今日まで公共輸送の主力を担ってきた。
 今回の調査では、係留中の「James Island」号の状況検分及び現在就航中の「Barajally」号に乗船し運航状況調査を行った。
(1)「James Island」号は、首都バンジュールのGPA(ガンビア港湾局)に隣接するBanjul Shipyardのドック内に係留中で、JICAフォローアップの実施連絡を待って上架される予定。したがってメンテナンス開始の目処はまだ立っていない模様。
 2003年1月のJICA予備調査時点では「Barajally」号がBanjul Shipyardで上架・メンテナンス中で、本船は就航中であったため、予備調査では船底外板の調査が行われていない。今回、完全な上架はされていないものの、ドック内の泥地部に船首部が陸揚げされた状態であったため船底を含め船体全体を確認できる範囲で目視調査したところ、船体全般にわたる損傷、特に船底外板の衰耗が著しく、左舷側プロペラは欠損している状況。前後ランプは損傷激しくランプ昇降機についても修理が必要である。主機、発電機は既に取り外されており操舵室内の計器類も殆ど撤去されている。
 目視調査では、過大な輸送需要に対応するため十分な維持管理を行う余裕もなく酷使し続けたことにより、供与後15年としては損傷の度合いが著しいとの印象であった。Banjul Shipyardでの現行の維持管理状況を鑑みるに、仮にフォローアップにより一時的にリハビリを行ったとしても、従来の2隻体制(「James IsIand」号+「Barajally」号)による長期間の運航には耐えられないと思われる。
(2)「Barajally」号については、実際の貨客運航中に乗船調査を行った。
 主機、発電機、操船計器がメンテナンスされ、プロペラ軸を交換したとのことで、当初設計に近い状態での運航が行われている。船上より、車両・乗客の乗・下船を見ていると、前後のランプの損傷が激しいこと、フェリーターミナル(スリップウェイ)が事実上機能していないことから作業は困難を極めている。特に、Yalitenda(南岸)側のターミナルの損傷が激しく、満潮時にはスリップウェイが完全に水没。このため、乗客は水浸しになりながら乗・下船することになり、また、冠水した未舗装道路からランプに乗り上げる際、スリップした車がランプからずり落ちる光景は、過積載されているトラックが転倒する恐れもあり、早急に船着場の改修工事が必要であると思われる。
(3)「James Island」号係留中の補助船「Baddibu」号
 「James Island」号の補修を待つ間の補助として、小型の「Baddibu」号がTransgambia航路に投入されており、現在は「Barajally」号とあわせて2隻体制で運航している。
 「Baddibu」号はトレーラーやトラックを運搬せず、あくまで乗用車、カール等のバスを運航しているため、トレーラーやトラックが順番待ちの長蛇の列を作っている。特に、Yalitenda(南岸)側では一晩をフェリー待ちすることも少なくない状況である。
 「Baddibu」号は2002年8月にTransgambia航路に投入された模様であり、それ以前はガンビア川北岸のKerewan(ガンビア川支流)で運航されていた。台湾の援助で橋が整備されて以来、Transgambia航路に配置転換となった。なお、KerewanからTransgambia航路の玄関口である北岸の街Farafenniまでは、未舗装道路が続く悪路である。
(4)維持管理体制
 修理造船所は約100km下流の河口にBanjul Shipyardがあるが代替船がないため定期保守点検が行えず、修理作業は夜間の就航終了後にしか時間が取れないことから、故障箇所の修理だけである。また、運航現場には小さな修理工具ハウスがあるのみで修理ドックはない。軸系等の修理は据え船状態で行われ、修理工事は運航機関のGPA補修チーム及び本船乗組員が行っている状況。
 
上4枚<Banjul Shipyardのドック内に係留中のJames Island」号及び船底の様子>
 
上2枚<Banjul Shipyardの看板及び船体メンテナンス・修理工事のための建屋>







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