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2-2-3 鉄道輸送
 これまで言及したように、タイの貨物輸送における鉄道輸送の役割は比較的小さく、2000年の総延長3,919kmで、総貨物輸送量の2%未満しか運んでいない。しかしタイの鉄道は主に旅客の輸送用として認知されており2000年には約540万人の旅客を運んでいる。
 表2-6は鉄道貨物の80%以上がコンテナ、石油製品及びガス、セメントの3品目で占められていることを示している。最も重要な路線はバンコクとその周辺域及び東部県を繋ぐ路線である。この路線の往復交通量は総鉄道貨物量の約3分の1を占め、往路復路ともに輸送量はほぼ同じである。
 
表2-6: タイにおける主な鉄道輸送品目(2002年)(有償トン)
分類/品目 有償トン
コンテナ 4,011,587
石油製品及びガス 3,246,762
セメント 1,977,833
穀物及び穀物製品 245,218
石膏 129,108
その他 88,956
農産物 81,516
MTコンテナ 48,455
機械 44,243
ココナッツ 29,548
木材及び建材 15,627
肥料 3,643
ゴム 3,001
合計 9,925,499
 
2-2-4 内陸水運
 タイの内陸水運は伝統的な交通手段の一つであり、庶民の足及び生活物資の輸送手段として利用されてきた。
 水運は主にチャオプラヤ川及びその支流とこれに繋がる運河を中心に発達してきた。内陸水運に供される船舶は河川、運河の運航のため小さく主に食料、家畜、砂、及び建材等を運んでいる。
 
表2-7: 内陸水運船隊の特徴
船舶の種類 隻数 GT 平均GT
一般貨物 14,244 37,161 2.6
旅客船 4,541 23,131 5.1
貨客船 6,670 22,837 3.4
冷凍貨物船 24 84 3.5
石油タンカー 24 4,461 185.9
曳船 544 5,683 10.4
その他 3,827 54,810 16.7
木造バージ/筏 8,597 312,214 36.3
鋼製バージ/筏 2,765 278,406 100.7
その他 1,092 27,234 24.9
合計 42,328 766,021  
 
図2-8: 内陸水運により運ばれている日用雑貨
 
2-2-5 航空輸送
 タイには民間航空会社による定期便が就航している空港は25カ所ある。国内空港の内バンコク国際空港は最も混雑した空港であり、2000年には年間320万人の乗降客と27,413トンの貨物の揚げ降ろしがされた。これらの数値はそれぞれ国内乗客及び貨物量の45.7%と48.3%を占めるものである。
 航空輸送の上位10航路は下記の5空港間の航路であり、これらは全て国際空港である。
 
バンコク−チェンマイ:13,370トン
バンコク−プーケット:3,973トン
バンコク−ハジャイ:3,544トン
バンコク−スラッタニ:3,354トン
バンコク−チャンライ:1,461トン
 
 前記のように国内貨物輸送における航空輸送の役割と位置付けは非常に限られており、看過できる。
 
2-2-6 海上輸送
(1)タイ国海上輸送の形態
 国境を海に接している状況から、タイの国際貿易量の相当量は下表に示すように海上輸送に依存している。一方沿岸輸送は国内総貨物量の僅か5.12%を輸送しているに過ぎない。
 
表2-8: 2000年度 国際貿易輸出入統計(千トン)
輸送形態 輸入 輸出 合計
千トン 千トン 千トン
海上 69,918 94.6 72,626 94.3 142,544 94.4
陸上 1,566 2.1 3,997 5.2 5,563 3.7
航空 2,291 3.1 411 0.5 2,702 1.8
郵便 113 0.2 0 0.0 113 0.1
合計 73,888 100.0 77,034 100 150,922 100
 
 タイ国を取り巻く環境は技術的優位性の堅持及び開発途上国からのサービス分野の自由貿易化への圧力等変化している。タイは世界の海運の中で生き残るためにこの環境の変化に応じた準備と適応の必要性を認識しており、国際海運サービスに関してはタイ国に限らず外国の運航会社に対し、関連法規に適合している場合は殆ど規制をしていない。
 タイの海運サービスは下記の2種類に分類することができる。
 
1)国際海運
 タイの海運はタイに出入りする貨物・旅客ともに取扱い可能な会社がその出自、国に関係なく参加可能である。タイ国に寄港する全ての国々の船舶は差別なく平等に扱われる。タイに出入りする貨物はその貨物が政府機関または公的機関から直接または間接的に発注された物で特定の国から輸送される場合にタイ国籍船での取扱いが要求される場合を除き、その取扱いに制限を設けていない。この分野で船舶をタイ国籍とするには船主はタイ国の法律の下に設立され、最低51%のタイ資本である会社または公社である必要がある。さらに国際航海に従事するタイ籍船に搭乗するタイ船員の割合は50%を下回らない事が規定されている。このタイ船員の割合は関連省庁の大臣から承認を得た場合には10%まで減じる事が出来る。
 1999年にタイは物品及びサービスにおける自由で公平な競争貿易を確保する視点から“物品及びサービスに関する価格条例(Price of Goods and Services Act B.E. 2542 (1999))”及び“競争貿易条例(Competition Act B.E. 2542(1999))”を施行したが、両条例は既に開放された国際海運に対しては直接的な影響を及ぼさなかった。
 
2)内航海運
 タイ国の内航海運は国内の取扱い業者に限定されている。国内海運に使用される船舶はタイ国人かタイ国の法律により設立され、70%以上のタイ資本を有するものでなければならない。この分野で登録された船舶は国際航海に必要な安全基準及びその他の基準を満たせば国際航海にも従事可能である。内航海運に従事するタイ籍船に搭乗する船員は100%タイ人でなければならない。外国籍船の内航海運への従事は条件付で個々のケースを判断し許可される場合がある。
 
表2-9: タイ国における沿岸海運産業の現状(商船の隻数)−1/2
1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000
自航船 船舶の種類 隻数
一般貨物船 792 825 846 870 897 938 968 1,001 1,063 1,119
旅客船 930 1,007 1,102 1,173 1,244 1,600 1,822 2,130 2,362 2,774
貨客船 516 518 520 529 531 536 538 544 566 572
コンテナ船 3 3 3 3 5 5 5 5 5 5
冷凍貨物船 557 585 614 682 760 777 813 902 1,033 1,138
石油タンカー 85 91 100 116 125 142 147 149 160 168
ガスタンカー 9 11 12 13 13 15 16 17 18 19
石油/ガスタンカー 5 5 6 6 6 6 6 6 6 6
漁船 34,872 34,888 34,901 34,977 35,028 38,505 38,528 38,535 38,546 38,616
その他 5,089 5,250 5,418 5,562 5,737 6,078 6,193 6,399 6,517 6,634
合計 42,858 43,183 43,522 43,931 44,346 48,602 49,036 49,688 50,276 51,051
非自航船 木造バージ/筏 64 64 64 64 64 68 68 69 69 69
鋼製バージ/筏 1,543 1,714 1,803 1,846 1,891 1,917 1,918 1,957 2,138 2,309
その他 131 132 132 133 133 134 135 135 136 136
合計 1,738 1,910 1,999 2,043 2,088 2,119 2,121 2,161 2,343 2,514
総合計 44,596 45,093 45,521 45,974 46,434 50,721 51,157 51,849 52,619 53,565
 
表2-9: タイ国における沿岸海運産業の現状(商船のサイズ)−2/2
 
 表2-9に示すように、2000年度の沿岸航海に従事する船舶の合計隻数は53,565隻、2,702,363GTである。53,565隻の船舶の内、漁船が38,616隻、72%を占める。沿岸海運における最も一般的な輸送方法は非自航バージによる輸送である。バージは隻数及びトン数ともに趨勢を占め2,309隻、1,366,558GTである。沿岸輸送に従事する船舶の特徴は相対的に小さく、且つ過去10年間その平均サイズが変わらないことである。一般貨物船及び石油タンカーの平均サイズは僅かそれぞれ37.4GT及び604.7GTである。然るに非自航バージの平均サイズは591.8GTである。
 この現状はタイの国内貨物が道路に偏っており過度に依存していることを明白に示している。
 
表2-10: 2000年度平均船舶サイズ(漁船を除く)
船舶の種類 平均サイズ(GT)
一般貨物 37.4
旅客船 21.9
貨客船 26.7
コンテナ船 17.0
冷凍貨物船 26.0
石油タンカー 604.7
ガスタンカー 781.4
石油/ガスタンカー 547.0
合計 46.0
 
《貨物動向と港湾能力》
 表2-11は1996年から2000年の5年間にタイ国内で沿岸輸送された主要貨物を示している。
 最も顕著な特徴は、圧倒的に石油輸送が多いことである。同期間中の沿岸輸送貨物総量2,300万トンの内、約95%は石油製品であった。逆に2番目に多い品目である金属製品は、全体の1.47%を占めているに過ぎず、他の品目で1%を超えているものはない。道路貨物との比較は対照的である。道路貨物は多様化しており、全体の25%を超える品目はなく、7種の異なる品目がそれぞれ全体の6%またはそれ以上を占めている。
 
表2-10: グループ別沿岸輸送貨物(1996-2000)
 
《沿岸輸送の主要航路》
 燃料油、ディーゼル油、原油、ガソリン、LPGガス及びその他の石油製品を運ぶ最も重要な航路はチョンブリ、ラヨーンからバンコク、サムットプラカーン、サムットサコン及びチャチェルンサオ向けの航路である。その他石油製品以外の貨物は主要な積地及び仕向地はバンコクおよびチョンブリの様々な港湾となっている。
 表2-13は1998年の沿岸輸送積地及び仕向地について要約したものである。表からは、チョンブリが貨物の積地として、バンコクが仕向地として重要である事が分かる。実際、バンコク、サムットソンクラーム、チョンブリが沿岸輸送のほぼ40%を占めている。しかし、これらの平均輸送距離は非常に短く(91km)、トンキロベース貨物輸送では約20%しかなく、チョンブリと南部県のスラータニー、ナコンシタマラート、ソンクラー間の貨物輸送規模とほぼ同程度である。
 表2-13は沿岸輸送された主要貨物の分類を荷積地及び荷揚げ港別に示す。主要な貨物の動きは以下の項で要約する。







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