その他の相談・苦情(4)
独居高齢者の介護に伴う生活支援が緊急課題
サービス利用者・・・80歳、女性
相談者・・・ケアマネジャー
●相談苦情の概要
独居で80歳の女性に痴呆の症状が出始め、日常生活に支障をきたしてきたため介護保険の申請がなされた。担当のケアマネジャーがアセスメントをする中で、介護保険サービスの利用計画を立てるだけでなく、生活全般の支援が必要と考え基幹的社会福祉協議会に連絡した。「地域福祉権利擁護事業」と「成年後見制度」利用の申請を検討したい。
●相談受付機関の対応
介護保険と地域福祉権利擁護事業を繋げるためにキーパーソンの役割を果たしたのはケアマネジャーであった。それを受けた基幹的社会福祉協議会と居宅介護支援事業者で以下の対応をした。
(1)日常生活の支援を超えた多額な預金は扱わない(上限50万円)という条件で地域福祉権利擁護事業での金銭管理の支援と見守りを開始した。
(2)本人の財産管理のために親族に相談して、成年後見制度を利用した。後見人との契約で、高額な預金の預かりも行なうこととなった。またヘルパーによる訪問介護サービスの契約を締結し、サービス提供を行なっている。また、ケアマネジャーがサービスについてもしばしばチェックしている。
●問題点
(1)成年後見制度を利用するためには成年後見人への継続的な報酬の支払が必要であるため、安定した資産がないと利用しにくい。
(2)地域福祉権利擁護事業の理念を理解したケアマネジャーを見つけられるかが課題。
●特記事項
成年後見制度利用では後見人への報酬が必要となるので、事実上、家族が代行する場合が多い。そのため、金銭管理をめぐる親族間での紛争となることも少なくない。
その他の相談・苦情(5)
家族による、要介護者への虐待が疑われるケース
サービス利用者・・・80代、要介護度2
相談者・・・ケアマネジャー
●相談苦情の概要
母親には痴呆があり、排泄の介助が必要で訪問介護を利用している。主介護者である息子は介護が思い通りにならないと、時折、叩く、大声で叱るなどの暴力があるようだ。
●相談受付機関の対応
基幹型在宅介護支援センター、ケアマネジャー、事業者も交えてのケアカンファレンスによって、利用者本人と家族の状況の把握をして、利用者への有効な支援のための役割分担を確認した。息子は母親の介護に懸命に取りくんでいるが、介護の知識が不十分で、排泄の介助がうまくいかず、介護のストレスを抱えている。息子自身の悩みを聞き、介護方法を実践してみせるなど息子の介護力を高める援助を続けた。また、母親の加齢による心身の衰えや痴呆について、息子自身が理解できるように努めた。
●問題点
(1)息子は仕事をしつつ母親の世話をして、心身ともに疲れている。虐待をしているという意識はない。
(2)虐待が疑われる場合、直接に注意をすると、隠れた虐待に変わる恐れがあるので、そうした対応については十分に配慮しなければならない。
(3)母親の心身の衰えによって親子の立場が逆転したことを受け入れ、要介護者を中心にして家族全体への支援の方向を総合的に考えていく必要がある。
●特記事項
【虐待が疑われる場合の支援のポイント】
●虐待の分類で何に該当するか?(身体虐待・精神的虐待・経済的虐待・性的虐待など)
●介護者自身に虐待の意思があるか?虐待を隠そうとしているか?
●介護者自身に、極度の疲労・病気・精神的障害はないか?
●介護者が十分な介護の知識をもっているか?
●介護者は要介護者の加齢や病気による生活障害を理解できているか?
その他の相談・苦情(6)
独居痴呆性高齢者の年金を親族が持ち出す
サービス利用者・・・79歳、男性、介護度4
相談者・・・ケアマネジャー
●相談苦情の概要
独り暮らしの男性79歳は、金銭の管理が出来ない。時折訪ねて来る親族が年金などを持っていってしまうので介護保険の利用料が払えない。重度の痴呆があり、夜間徘徊など問題行動が多くなり、近隣住民からの苦情も多く、在宅での独居生活は困難である。
●相談受付機関の対応
(1)本人の身体と年金の安全を確保するために、区長による成年後見申し立てを検討した。
(2)独りでの生活が困難であるため、緊急避難として老人保健施設へショートステイさせた。
(3)ケアマネジャー、権利擁護センター職員、民生委員など関係者による、地域ケア会議を開いて、今後の支援について話し合っている。
(4)地域福祉権利擁護事業で日常生活の金銭管理サービスを受けられるよう申請した。
●問題点
(1)親族による、人権侵害、経済的虐待、介護放棄。
(2)本人に判断能力が乏しく、正確な被害の状況の確認ができない。
(3)成年後見制度、地域福祉権利擁護事業などは申請から開始できるまで時間がかかる。
●特記事項
独居の高齢者虐待では、本人が痴呆で判断能力が乏しい場合には、ヘルパー、近隣住民や民生委員などが早く気づくような、地域での見守りが必要である。
その他の相談・苦情(7)
同居家族の協力が得られず、介護保険による支援ができない
サービス利用者・・・85歳、女性
相談者・・・ケアマネジャー
●相談苦情の概要
85歳の女性は最近になって痴呆の症状が進み、近隣とのもめごとが多発しているが、近隣との付き合いがない同居の娘は全く取り合わない。利用者が介護認定調査員にも被害妄想を抱いており、介護認定を更新できず、適切な支援ができない。
●相談受付機関の対応
(1)在宅介護支援センターの相談員が定期的な訪問を繰り返したことで、利用者の被害妄想は少し落ち着ついてきた。
(2)同居の娘は仕事で家に居ることが少ないため、訪問時の様子などを記録して読んでもらうことで、母親の日中の様子や痴呆の状態を理解してもらう努力をしている。
●問題点
(1)娘は支援者と会おうとしないため、受診や介護保険の申請はできないままである。
(2)母と娘の依存関係が外部の支援を拒絶しているが、家族の長年の関係は簡単には改善できない。
(3)家族に対して支援者の考えをおしつけないで、支援すべきサービスへの理解を得ることが必要。
●特記事項
家族が介護保険の受け入れを拒否している場合、家族間の調整も必要となるが、家族の問題に介入するのではなく、あくまで利用者にとって必要な支援を第一に考えていかなければならない。
解決が困難なケースでは、地域ケア会議などを活用して、行政の職員、ケアマネジャー、民生委員など、色々な立場からのサポートの方向性を見出す必要がある。
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