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感情的な行き違いに関する苦情(3)
セクハラを理由に、サービスが打ち切られた
サービス利用者・・・80代男性、要介護度2
相談者・・・娘
 
●相談苦情の概要
 利用者は週2回、午前と午後2時間の家事援助サービスを受けていた。契約時、利用者にはアルコール依存症の傾向があり、以前契約していたサービス提供事業者のヘルパーにセクハラをしたことは伝えていた。今回、飲酒の気配があればサービスを中断するという個別の約束を交わしていた。その後、利用者のヘルパーに対するセクハラ行為があったとして、十分な説明もないまま一方的にサービスが打ち切られたことに納得がいかない。
 
●相談受付機関の対応
(1)事業者の介護記録を調査したところ、女性ヘルパーにとっては耐え難いと思われる言葉によるセクハラが報告されていた。
(2)利用者の言動に問題があるとはいえ、契約時には過去のいきさつも伝えており、契約書に書かれている通り、事業者からの契約解除には「14日後」の予告期間を遵守すべきである。
 セクハラによってヘルパーの身の危険が予想される場合、ヘルパー2人制や男性ヘルパーの派遣を考慮するなどして、トラブルの未然防止に努めるべきであると指導した。
 
●問題点
(1)事業者から契約解除を申し入れた際の説明が不十分であり、解除の理由について、利用者の尊厳や家族の心情に配慮した表現が必要であった。
(2)サービス内容や個別の約束事などは、契約締結時に、事業者、利用者、家族が共に確認をして契約書に明示しておくべきである。
 
●特記事項
 都道府県のガイドラインでは、やむを得ない場合、事業者からの解除は一ヶ月以上の予告期間をおくよう記載されており、文書指導した結果、契約書予告期間は改善された。厚生省令第37号第9条によれば、正当な理由無く指定訪問介護を拒んではならないとある。
 
感情的な行き違いに関する苦情(4)
ショートステイの入所拒否に納得できない
サービス利用者・・・80歳女性、要介護4
相談者・・・子
 
●相談苦情の概要
 母を入所させるため、介護老人保健施設のショートステイに申込をした。利用者はパーキンソン病であると伝えたところ、診断書の提出が必要であり、本人の面接は後日連絡すると説明されたのに1ヶ月過ぎても連絡がなかった。再び電話し、『健康診断書』の提出を求められたので、すぐ提出した。数日後、パーキンソン病のため入所できないと回答があった。病気のことは申込時に伝えてあったのに、受け付けたこと、また、入所の可否の決定までに日数がかかりすぎていることに納得できない。
 
●相談受付機関の対応
【国保連が事業者に事実を確認】
(1)受け入れ拒否の理由はパーキンソン病のためだけでなく、褥創と痴呆もあり重度医療が必要なため、夜間ヘルパーと週一回の往診体制では対応できないと判断した。
(2)申込時のマニュアルがないため、回答までに時間がかかった。
【国保連の指導】
(1)今後は、必ず利用者と家族に面接した上で、あらためて入所受け入れの判断をし、入所を断る場合は納得するまで説明するよう助言。
(2)入所の受け入れが不可能な場合はケアマネジャーと連絡を取り、入所以外のサービス提供を利用者に提案できるような体制をとるように助言。
(3)マニュアルを作成し、申込書受理後早急に利用者に受け入れの可否を回答するよう指導。
 事業者は説明が不十分であったことを謝罪し、あらためて面接を行い、受け入れが不可能な理由を詳しく説明し、相談者は納得した。その後、事業者からはケアマネジャーと相談しながら利用者にあったサービスを検討することにした旨の報告があった。
 
●問題点
 入所拒否の決定を書類のみで行っており、利用者への連絡も電話のみと、事業者の一方的な進め方には問題がある。利用者側に立った検討と説明が必要である。入所困難なケースについてはマニュアルなどを作成し、指導・助言ができるような体制の整備が望まれる。
 
感情的な行き違いに関する苦情(5)
訪問介護利用者の家族がわがままだ
サービス利用者・・・要介護5
相談者・・・ケアマネジャー
 
●相談苦情の概要
 利用者の子供がヘルパーに対し、介護の仕方、言葉づかい、態度などについて、事細かく注文をつける。また、急にサービスを断ったり、依頼したり、予定を変更することが度々あり困っている。事業者としても限界であり、サービスを断ることはできないか。
 
●相談受付機関の対応
 国保連の調査委員が調査した結果
(1)利用者は、お金を払えば希望することは何でもやってもらえる、利用者の都合で変更は自由にできると思っていた。
(2)事業者がサービスを拒否できる正当な理由とはならない。
(3)ケアマネジャーが事業者と利用者のコミュニケーションを取るなど、中立な立場での助言がなされていない。
 以上の事から、調査委員は事業者と利用者との話し合いを提言し、和解した。
 
●問題点
(1)利用者や家族に介護保険サービスに対する間違った認識がある。
(2)ヘルパーと利用者のコミュニケーション不足。
(3)ケアマネジャーの役割不足。
 事業者は、サービス提供を拒否する前に、利用者とコミュニケーションを取り、相互の協力でサービスがスムーズに提供されることなどを説明すべきである。また、ケアマネジャーは双方の問題点を中立な立場で助言し、トラブル回避に努めることが望まれる。
 
●特記事項
 利用者と事業者は利害関係にある。契約に無関係な第三者のアドバイザーがいれば、トラブル防止に役立つのではないかと思われる。ヘルパーの研修やフォローアップも必要である。
 
感情的な行き違いに関する苦情(6)
介護療養型で、希望したリハビリをやってくれない
相談者・・・家族
 
●相談苦情の概要
 介護療養型医療施設に入所したとき、重要事項説明書と運営規定には同意したが、契約書は交わしていなかった。入所後、希望していたリハビリをやってくれなかった。
 また、看護職員が利用者から暴力行為を受けたという理由により3日間の猶予のみで退所勧告を受けた。仕方なく利用者は10日後に他の施設に移転したが、釈然としない。
 
●相談受付機関の対応
 事業所を調査し、判明した。
(1)入所後、利用者に「リハビリは当面見合わせる」と説明したが、よく理解していなかった。リハビリは通常1ヵ月後に開始している。
(2)契約書は用いず、同意書の押印で済ませている。簡略的だが、不適切な内容はない。
(3)本件の利用者は各施設を転々とし、事業所側が困惑するような存在と認識されていた。
 しかしたとえ身勝手な利用者であったとしても、要望を聞き取り事前の説明を十分にして、意思の疎通を図ることが重要である。
 
●問題点
(1)契約書を交わすことが望ましいのではないか。全般的に、事業者側の説明が不足し、利用者の理解を得ていたとは思われない面もある。
(2)退所申し渡し(契約解除)の時には、慎重な配慮、説明、言動が望まれる。
 
●特記事項
 利用者からの質問や苦情に対して、特に医療系では説明が不足する傾向が見られる。医師と患者の関係の意識改革が必要ではないか。







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