違法行為に関する苦情(2)
介護職員が行った医療行為でのミス
サービス利用者・・・要介護5
相談者・・・子供
●相談苦情の概要
80歳の父親は、痰をとるため気管を切開しており、経管栄養であった。病院併設のデイケアを利用しているが、昼食の際、介護職員が鼻のチューブから栄養剤を注入すべきところ、誤って気管のチューブに接続した。肺に異物が入らないよう気管に風船がつけられていたため栄養剤が喉にたまり吐いた。あやまちに気づいた職員はすぐ病院で手当てし、繰り返しの吸引を行った。その後、酸素飽和度の低下のないこと、胸部X線の撮影で異常のないことを確認し、帰宅させた。
申立人は、施設の処置を不服として入院させた。資格のない職員に医療行為をさせたことと、事故後の説明がないことが、納得できない。
●相談受付機関の対応
国保連が調査した結果
(1)施設では資格のない介護職員に医療行為をさせた。
(2)異常に気づいた施設側はすぐ病院へ送り、治療にあたった。
(3)手当ての結果、異常がないことを確認し、帰宅させた。
(4)帰宅に際し、院長、看護婦を同行させ、家族に経過報告し、謝罪した。
以上、施設側のミスは重大であるが、その後の処置は敏速で適切であり、利用者への対応も良心的だった。相談者は慰謝料を期待していたと思われるが、その後の利用者に支障のない限り、その必要はないと判断した。
●問題点
(1)流動食の注入は、日常生活に欠かせない食の援助であるが、この操作を、医療関連の職員に限定するのは、経費、時間的にも無理があるのではないか。
(2)ケアプラン作成時の初期訪問での情報収集やアセスメントの不足がある。
(3)医者と事業者の間に情報交換がなく、経管栄養について指示が連絡されていれば、事故は防げたと思われる。
(4)介護の領域、研修のあり方など課題を残す事例である。
違法行為に関する苦情(3)
ショートステイの受け入れを拒否された
サービス利用者・・・要介護3
相談者・・・家族
●相談苦情の概要
母親は月2回、1回5日間程度のショートステイを利用していた。ところが施設側が、翌月からショートステイの利用は受け入れられないと言った。理由を聞くと、本人が頻繁にナースコールなどをするため、職員が十分な対応ができないとのこと。このような理由でサービス提供を拒否され、納得できない。
●相談受付機関の対応
国保連の苦情処理委員が調査を行った。施設側の説明によると
(1)本人の対応に職員が苦慮し、家族の望むケアを提供することが困難になったため、施設側から受け入れできない旨、申し入れたとのこと。
(2)施設からの受入れ拒否は正当な理由であるか検討した結果、厚生省令第37号第155条準用第9条に照らし、適切とは言えないと判断。
国保連は、介護のあり方について、職員間での十分な検討が必要であり、介護技術の向上に不断の努力が不可欠であると指導した。
●問題点
(1)問題のある利用者の対応について、職員間で話し合い、検討することがなされなかった。
(2)すぐ利用拒否の判断をし、問題解決の話し合いがなされなかった。
(3)施設側は省令、通達を十分理解しておらず、サービスマニュアルも作られていない。
●特記事項
国保連には、事業者側から問題のある利用者についての相談が多く寄せられている。正当理由がなければ、一方的な契約解除ができないので、事業者としての対応に苦慮しての相談である。そうした相談については、問題ある行動について克明な記録を残すよう助言している。この記録が家族への説明などの際、問題解決の指標となる。
最終的な判断は、事業者と保険者が連携して行うが、法的根拠となる記録を残し、第三者を交えて行うほうが良いケースもある。(生活保護受給者なら民生委員の立会いなど。)
違法行為に関する苦情(4)
訪問介護サービスの提供と請求が一致してない
サービス利用者・・・要介護3
相談者・・・サービス利用者
●相談苦情の概要
利用者は重度の糖尿病を患っていて、在宅酸素治療を行っている。訪問介護サービスを受けているが、実際に行っていないサービスについて請求を受けた。また、勝手に訪問回数を増減するので苦情を言ったところ、サービス提供の中止を言い渡された。請求の明細と、根拠をきちんと説明してほしい。サービス提供は計画どおり行ってほしい。
●相談受付機関の対応
【国保連の調査結果】
(1)利用者は独居老人でこだわりが強く、相手にきびしい態度や反発を示す性格である。事業者や主治医との関係は不良で、コミュニケーションがとれていない。
(2)サービス提供の記録が不十分で、事実を明確にすることができなかった。
(3)当該事業者は「訪問看護等医療系サービスは契約締結にはなじまず、契約は不要である」との認識を持っている。
(4)契約書は作成しておらず、重要事項の説明書も交付していない。
(5)当事業所は平成13年開設の事業所で、開設時に事業所内で打ち合わせをしただけ。
(6)ケアマネジャーは系列事業所所属である。
よって運営基準違反が明らかになり、基準を遵守するよう保険者より指導がなされた。
●問題点
(1)医療系サービスは介護上の指示や専門的な指導を行うため、対等であるという契約はなじまないという認識があり、利用者に対し優位になりがちである。ゆえに契約締結や重要事項説明書について問題意識を持っていない。訪問看護事業者間で、「契約締結は行わない」という事を話し合いで決めていた模様である。
(2)ケアマネジャーが系列事業所に所属しており、中立、公平性が損なわれ、適切な指示が行われていない。
(3)医療系サービスは情報収集が難しく、トラブルがあって初めて表面化するので、事前の指導が難しい。
違法行為に関する苦情(5)
レンタルベッドの修理代を請求された
サービス利用者・・・要介護4
相談者・・・配偶者
●相談苦情の概要
福祉用の特殊寝台(ベッド)をA事業者と契約して借りた。3ヶ月ほど使用したが、病院に入院することになり返還した。ところが、回収に当たったB事業者からベッドの故障を理由に修理代金2万円を請求された。身に覚えがないので払いたくない。
●相談受付機関の対応
苦情処理委員が調査した結果
(1)ベッドの故障とは、可動パイプが変形していて交換が必要であった。
(2)利用者は寝たきりで、パイプが変形するような行為は不可能である。
(3)レンタルベッドの契約はA事業者としたが、ベッドの搬入、搬出はB事業者、修理代の請求はC事業者の発行したものであった。
(4)ベッド所有者はC事業者であり、三者のレンタル契約であることが判明した。C事業者から一次代理店のB事業者がベッドを借り受け、二次代理店のA事業者にレンタルした。
(5)ベッドの故障は利用者に原因があるという明確な判断根拠は見当たらなかった。
以上のことから、故障の原因は事業者の推測の域で判断されたと思われるので、話し合いの結果、修理代金の請求は撤回された。
●問題点
(1)当該事業者は重要事項説明書を交付していない。(運営基準第37号205条違反)
(2)運営規定の概要を所内に掲示していない。(運営基準第37号204条第1項違反)
(3)事業者の運営システムが複雑で、管理責任の所在が不明確である。三者のレンタル契約は許されない。(運営基準第37号第203条第3項違反)
現状から考えると、保険者が営業認可する事前の調査はどのようであったか、ケアマネジャーは実状を把握していたのか、保険給付の対象品を扱う事業者の指導監督のあり方など多くの問題を残す。措置の時代の商慣習などは撤廃し、運営基準を正しく準用できるよう指導が望まれる。福祉用具貸与事業者に法人格は必要ないが、人員基準、設備基準は指定居宅サービスと同様と認められている。
違法行為に関する苦情(6)
ケアマネジャーが特定の事業者を斡旋した
相談者・・・福祉用具貸与事業者
●相談苦情の概要
利用者が福祉用具の貸与を希望した時、ケアマネジャーが特定の事業所を斡旋したり、福祉用具の貸与金額を比較したり、高い事業所に「他の事業所は○○円だから○○円にしなさい」と指示するが許されるのか。ケアマネジャーに罰則はないのか。傲慢な態度を指導してほしい。
●相談受付機関の対応
国保連の調査の結果
(1)特定の事業所を斡旋するケアマネジャーの行為は、運営基準第38号第25条第1項に反する。
(2)価格の件は、ケアマネジャーは交渉していると言うが、事業者は指示と受け取っており、言葉づかいの難しさを残す問題である。
(3)ケアマネジャーの罰則については、刑法などに触れなければ、ない。
以上の事から、ケアマネジャーとは話し合いで解決。都道府県はケアマネジャーの資質を向上させるため研修を行う、また事業者の集まる時を利用して、違反行為について例示して具体的に説明し、基準にそった運営を指導していくという説明で了解を得た。
●問題点
(1)ケアマネジャーが未熟で、違反行為であるという認識がうすい。
(2)交渉と指示という受け取り方に差が出た言葉づかいの問題がある。ケアマネジャーと事業者の信頼関係の不足も要因である。
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