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介護事故に関する苦情(2)
通所リハビリから帰宅後に玄関で転倒した
サービス利用者・・・要介護1
相談者・・・家族
 
●相談苦情の概要
 通所リハビリから自宅に送り届けられたとき、家族が不在であった。利用者が要介護1なので、事業者は心配ないと判断していたが、家族が帰宅したとき、利用者は玄関で転倒し、額を打ち、血を流して倒れていたので、救急車で入院した。家族不在の場合、居室まで送るくらいの配慮が欲しかった。また、責任者からきちんと説明と謝罪が欲しい。
 
●相談受付機関の対応
 国保連の苦情処理委員が調査し、家族と事業者の責任者と国保連で話し合いが行なわれた。その結果、治療費が保険で支払われることになり解決した。また、改善策として
(1)マニュアルをきちんと見直し、作り直し、連絡体制を強化した。
(2)事故報告をすることを徹底した。
(3)職員の研修も実施した。
−以上、苦情が改善に結びついて終結した。
 
●問題点
(1)【説明不足】重要事項説明のとき、保険加入や補償内容についての説明が必要である。
(2)【契約内容の不備】契約書は作成されていたが、送迎時について、何処から何処まで送迎するか明らかにされていない。また、家族不在時の対応も確認が必要であった。
(3)介護サービスマニュアルは一応あるが形式的で職員がきちんとそれにそった対応ができていない。
(4)事故を知ったとき、必ず報告することを職員に義務付ける必要がある。
(5)施設長である医師が不在で、説明義務が果たされず、速やかな対応が取られなかったことから、苦情となってしまった。
 
●特記事項
 本件では国保連で、家族、事業者との話し合いが行なわれ、事故の補償が成されると共に改善策が策定され、苦情が生かされている。
 
介護事故に関する苦情(3)
ショートステイで夜間徘徊し、転倒骨折した
サービス利用者・・・要介護
相談者・・・姪
 
●相談苦情の概要
 ショートステイ利用中に、利用者が夜間徘徊し、転倒したため、鎖骨を骨折し手術をした。施設はその責任を認めようとせず、謝罪の言葉もないなど施設の対応に納得できない。
 
●相談受付機関の対応
 国保連が調査した。その結果次のことがわかった。
(1)施設長が「夜間は介護中でないので責任はない」という考え方をもっていること。
(2)施設は医療法人で、ケアハウス、特養を併設しているが、開設後半年しか経っていないため、職員、施設長とも経験不足である。
(3)医者である施設長が、1日経ってから病院に連れて行った家族と他の病院で行った医療処置について「鎖骨骨折で手術はおかしい」など不信感をもっている。
 調査の結果、国保連は、次の指導を行った。
(1)事故を保険者へ報告すること。
(2)家族へ説明をすること。
(3)治療費の話し合い(保険対応など)をすること。
 
●問題点
(1)開設後、日が浅く経験不足で、施設長も職員もマニュアル通りの対応ができなかった。
(2)事故を知ったとき、必ず報告することを職員に義務付ける必要がある。
(3)施設長である医師はショートステイ中のサービスの内容と責任を十分理解していなかった。また、家族への謝罪等速やかな対応を取らなかったため苦情となった。
(4)家族とのコミュニケーションも不足していた。
(5)事故報告を怠ったことは運営規準違反(厚生省令第37号第140条第37条準用)。
 
介護事故に関する苦情(4)
通所介護送迎中の運転手がケガをさせたが報告がない
サービス利用者・・・男性、要介護3
相談者・・・家族
 
●相談苦情の概要
 通所介護を利用し帰宅した際に、運転手が利用者とともに転び、ケガをさせたが、その事実を隠しており、事業所も家族に対し真実を明らかにしない。家族から催促されないと対応してくれない。事故の際の事業所の対応の悪さが納得できない。また、事故状況の調査をして欲しい。
 
●相談受付機関の対応
 国保連が調査を実施した。
(1)事業所には措置の時の「お世話をしてやっている」という態度が残っている。事業所としては、介護保険制度のもとでのサービス提供のあり方、事故など緊急時のマニュアルの整備が必要であり、職員全員が対応を確認する必要があることを指導した。
(2)今後、事故報告の徹底、介護サービス記録の整備と再発防止の話し合いが必要である。
(3)損害保険の加入を確認し、保険対応の範囲、事故現場の限定の有無や、適応の可否を確認することも必要。
【国保連の調査・指導の結果】
 事業所の責任者が利用者の家族に対応することになり、利用者の家族も態度が軟化し、話し合いで解決した。また、ケガの治療費は損害保険から支払われた。利用者の介護度は、ケガが原因で5に変更され、介護老人保健施設に入所した。
 
●問題点
(1)事業者に介護保険制度のもとでのサービス提供のあり方が十分認識されていなかった。
(2)介護サービスマニュアルがきちんと作成されていない。
(3)事故に対する認識が甘く、その結果、事故報告も怠っている。
(4)事故処理のマニュアルもないため、説明や謝罪が遅れ家族の怒りをかってしまった。
(5)事故対応は、職員と利用者個人間の問題ではなく、事業所全体の問題としてとらえる認識がない。
(6)事故報告を怠ったことは運営基準違反。(厚生省令37号第109条 第37条準用)
 
介護事故に関する苦情(5)
訪問看護で入浴のため移動中に、段差で転倒し膝に内出血
サービス利用者・・・要介護1
相談者・・・嫁
 
●相談苦情の概要
 訪問看護担当の看護師が都合で交替した日、利用者は入浴介助を受ける際、交替した初めての看護師に浴室まで見守られながら歩行していたが、浴室前の段差でつまずき転倒した。看護師は膝などに内出血があったが骨折がないものと判断した。
 翌日、所長から容態確認があったとき、大丈夫と答えてしまったが、転んだ後、家族がおんぶしてベッドまで運んだことなどに納得ができず、担当看護師に『介助が丁寧でなかった』『転んだことで精神的ショックが大きい』と苦情を言った。責任者からきちんと説明と謝罪が欲しい。
 
●相談受付機関の対応
 国保連の苦情処理委員が調査したところ、苦情を受けて当日管理者が利用者宅に電話し、状況確認とお詫びをした。翌日担当看護師と交替した者、管理者の三者が話し合った。
 その結果改善策として
(1)マニュアルをきちんと見直し交替時の引き継ぎ、連絡体制を強化することとした。
(2)職員の研修も実施した。
以上、苦情が改善に結びついて終結した。
 
●問題点
(1)説明不足・・・重要事項説明のとき、損害保険加入や補償内容についての説明が必要である。
(2)交代時の申し送り事項がきちんとされていなかったため、交代した看護師が利用者の心身の状況を把握せず、対応ができなかった。
(3)事故発生時のフォローは、当然交代した看護師がすべきであった。
(4)また、転倒時の対応のマニュアルも整備しておくべきであった。
 
●特記事項
 その後、家族、事業者と話し合い、事故の補償が成され、事業者の改善策が示された。
 
介護事故に関する苦情(6)
その他の介護事故の事例
●おやつのゼリーを誤嚥
<概要>
 介護老人福祉施設入所中、おやつのゼリーを詰まらせ、チアノーゼ等があり、医師が気道を確保し吸引後、点滴を行った。その後意識を回復したので、救急車で病院に搬送し、容態を観察するため一時入院し、5日後に退院した。今回は2回目の誤嚥である。
(1)3回目の事故の恐れもあるが、職員の対応・教育はどうなっているか。
(2)入院時の費用負担はどうなるか。
(3)入院したのに経過の報告がない。謝罪の気持ちがあるのか。
<相談結果>
 マニュアルがあり、それに従い事務長とケアマネが謝罪し、入院費用は施設が負担した。再発防止のため、職員研修とおやつの配布に工夫するなどが検討された。
 
●送迎車からの転倒
<概要>
 通所介護の送迎車から下車する際、踏み台を踏み外し右下肢に擦過傷を負った。
<相談結果>
 外科受診し、創部の処理を行なった。家族に処置を報告した。完治まで1ヶ月かかったが、家族とは和解した。事業所では日報の提出、報告連絡の徹底とヒヤリ・ハットを提出するように改善した。
 
●皮膚病への感染
<概要>
 ショートステイ中に皮膚病を感染させられた。退所時に施設側から虫刺されがあると説明されていたが、退院後全身に広がり、医師から皮膚病と診断された。皮膚病のため、介護が難しくなり、2ヶ月も通院している。施設が行った初期の治療が不適切だったのではないか。
<相談結果>
 保険者が施設を調査指導した。その結果、施設長が相談者を訪問し、謝罪したことで相談者は納得した。伝染病が疑われた皮膚病については、施設へ確認し、助言指導した。







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