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サービス利用料金に関する苦情(2)
居宅介護サービス負担金の請求内容がおかしい
サービス利用者・・・女 要介護4
相談者・・・家族
 
●相談苦情の概要
 母が同一事業者で訪問看護と訪問介護等を利用しているが、利用者負担金の請求内容がおかしい。毎月同じ内容のサービスを受けているのに、月によって10万円くらいの差があるときもある。2回も間違いがあったので、その都度指摘するが「入力ミスでした」と悪びれず言うだけである。銀行引き落としなのでしっかりチェックしないとそのまま引き落とされる。誤りに気づき訂正できたが、他の利用者にも同じ事が起きて過剰支払になっているのではないかと思う。
 
●相談受付機関の対応
 保険者の相談窓口が対応。介護報酬支払は、記載されたサービス内容と請求額があっており、請求手続きに問題が無ければ支払われる。サービス実態とあわない入力ミス等は事業所内の問題であるが、ケアマネジャーは利用者とサービス事業者に同一のサービス提供票を交付しており、実施状況の把握をしているので、事業者への不信や疑問はケアマネジャーに必ず伝えるよう助言する。また、保険者の担当窓口にも報告をした。
 
●問題点
(1)在宅サービス提供と給付管理業務はシステム化されているが、保険対象外サービスや緊急サービス変更等により、事業者が事務処理ミスを起こす可能性が考えられる。事業者のチェック体制の確立が必要である。
(2)ケアマネジャーがサービス計画作成後も利用者やサービス事業者と継続的に連絡をとり、実施状況や緊急課題の把握をし、計画変更など事業者と連絡調整を密に行う必要がある。
 
●特記事項
 事業所・施設が不正な行為によって、介護給付費の支払を受けたときは、支払額の返還のほか、返還額の4割の額を支払わせることができる。(介護保険法第22条)
 
サービス利用料金に関する苦情(3)
居宅療養管理指導の料金請求に不満
サービス利用者・・・女性 要介護4
相談者・・・家族
 
●相談苦情の概要
 重度心身障害者医療により無料で医師の往診を受けてきたが、その病院が介護保険サービスを提供するようになり、往診の料金が請求されるようになった。請求書をみると居宅療養管理指導となっているが、家族は契約時に全く説明を受けていない。介護保険への移行に納得がいかない。
 
●相談受付機関の対応
 保険者の相談窓口が対応。調査したところ、介護保険への移行時に、まず福祉職員が説明し、ケアマネジャーが介護認定に関する説明や契約時の説明を行ってきた。居宅介護支援事業所、サービス提供事業者共に記録を適切に保管し、契約書も問題なく交わされていた。
 そこで、相談窓口は利用者への説明が不十分である事を指摘し、医療機関とケアマネジャーが再度説明を行った。しかし、介護保険への移行そのものに納得されず、申請を取り下げ、医療での対応となった。
 
●問題点
(1)保健所所管のケアマネジャーであり、契約書等の記録整備は万全だが、障害者福祉からの移行に関し、介護保険との違いの説明や情報提供を利用者や家族が納得するまで適切に行う必要があった。
(2)利用者は形式的な説明に、分からないまま同意し、契約書に押印したが、トラブルになって初めて契約書を読み、介護保険を選択することのデメリットを認識したようである。福祉サービスが措置から契約へ変わったが、契約意識は低い。利用者の契約意識の向上を図る必要がある。
 
●特記事項
 国保連に保険者から報告された事例で、保険者対応で処理済の為、ケースワーカーのかかわり方、対応は不明。
 
サービス利用料金に関する苦情(4)
福祉用具貸与中の入院で利用料全額負担に不満
サービス利用者・・・男 要介護4
苦情申立者・・・家族
 
●相談苦情の概要
 ベッドと車椅子の福祉用具を借りていたが、その後、病状が悪化し入院した。ケアマネジャーに入院を伝えたが「入院中の負担金は介護保険が使えないので全額自己負担になる」と言うだけで、福祉用具はそのままになっている。全額自己負担するつもりはないが、このままでよいのだろうか。
 
●相談受付機関の対応
 保険者の相談窓口が対応した。まずケアマネジャーに問い合わせると、「自分には責任がない」と対応したため、居宅介護支援事業者の調査に入った。その結果、ケアマネジャーは9ヵ月間も利用者宅を訪問しておらず、給付管理も郵便のやり取りだけで利用者の状況把握についても怠っていた。また入院中の福祉用具貸与の取り扱いについても説明をしていなかったので、責任者を呼びケアマネジャーの無責任な対応、怠慢及び説明不足を注意し、今後の対応、改善策の提出を指導した。
 
●問題点
(1)ケアマネジャーは利用者の状況をたえず把握し、サービス利用に不慣れな利用者が知らないままに無駄な経済的負担を負わないようにサポートする必要がある。
(2)居宅介護支援事業者は、基本的な対応も出来ないケアマネジャーに対し、マニュアル等を整備し、研修等により質の向上をはかる必要がある。
 
サービス利用料金に関する苦情(5)
訪問介護を暫定プランで利用し、高額の自己負担が発生
サービス利用者・・・男 要介護4
相談者・・・家族
 
●相談苦情の概要
 入院中の母が退院することになり、看護師長に退院後の相談をしたところ、在宅介護を受けるようすすめられた。入院中に要介護認定の申請をし、訪問調査も受けた(後日、要支援と認定)。看護師長がケアマネジャーを担当し、訪問介護事業者の紹介を受け、退院と共に訪問介護のヘルパー利用を開始した。
 後日届いた利用請求額が、支給限度額を大幅に超えた高額な利用者負担となっており、驚愕している。契約内容や支給限度額を超えた場合の利用者負担など事前に全く説明が無いままサービスを提供され、高額な請求をされたことに対し納得がいかない。
 
●相談受付機関の対応
 国保連の苦情処理委員会が、保険者の聞き取り、事業者調査を実施した。その結果、保険者からは、ケアマネジャーが要介護認定結果を『要介護2又は3』と見込んでサービス計画を作成したことが判明。見込み違いや利用者への説明不足を反省しており、認定の区分変更などの手続きをとったとの説明があった。
【事業者調査結果】
(1)ケアマネジヤーは利用者の退院に際し、要介護認定の申請をするよう援助した。認定結果が判明する前に『要介護2〜3』を見込んで暫定ケアプランを作成し、退院と同時に訪問介護サービスの提供を開始したが、認定結果は『要支援』となり高額な自己負担分が生じた。
(2)契約は退院前に院内で行い、内容の説明も行ったとの回答であったが、利用者は説明内容を理解しておらず、苦情となっている。
(3)ケアマネジャーはサービス計画原案の作成にあたり、家庭訪問も行わず、介護支援業務を示す適切な記録もなかった。
(4)当該事業所は、4名のケアマネジャーを配置。1名が常勤職、他は同一医療機関の看護師が兼務しており、1人当り50人以上の利用者を担当していた。
 
 国保連は事業者に対し次の指導を行った。
(1)ケアマネジャーは、居宅サービス計画においては、利用者の自宅を訪問し、環境の把握等を的確にした上で作成すること。またサービス内容や利用料等について事前に十分利用者や家族に説明を行い同意を得ること。
(2)指定居宅支援事業所のケアマネジャーの員数を省令(厚生省令第38号第2条)に基づいた標準配置にするよう改善を促した。
(3)ケアマネジャーは常勤看護師として病院の勤務体制に位置付けられており、ケアマネジャーとしての役割を果たす条件が整っていない。管理者は居宅介護支援業務が支障なく適切に行われるよう兼務のあり方を検討し、改善を図ること。
(4)居宅介護支援事業所としての記録を整備し適切に保管すること。
 
●問題点
(1)ケアマネジャーは、居宅サービス計画について事前に利用者や家族とよく話し合い、家庭訪問等により環境の把握、介護上の問題点を明確にし、暫定プランでのサービス提供の説明を十分におこない、同意を得ておく必要があった。
(2)入院中にかかわった看護師が、在宅のケアマネジャーとなるのは、利用者にとっては継続した相談や病状悪化の時の再入院等に安心できる利点がある。しかし、常勤看護師のケアマネジャー兼務では、居宅訪問をするなど、きめ細かいアセスメントが困難である。兼任ケアマネジャーのあり方について検討が必要である。
(3)1人のケアマネジャーが50人以上の利用者を担当しているのは、居宅介護支援事業所の従業者数の省令標準を超えている。的確な利用者支援のためには、標準的な人員配置に改善する必要がある。
 
●特記事項
(1)利用者は介護認定の区分変更手続きにより要介護3となった。
(2)事業所の再調査では、ケアマネジャーが、専従者2名、兼務者3名となり省令基準人員が確保されていた。またソーシャルワーカーの指導も強化されていた。







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