IV. 課題の整理
ビジター艇受入れの現状および課題を以下に整理した。
全国の約3,000漁港のうち、漁港管理者がビジター艇の受入れを認めている漁港は131とまだ少い。「国民に開かれた漁港」となっていないことから、今後、受入れ条件が整う漁港については受入れ体制を検討する必要がある。
ビジター艇の受入れ形態は、管理者への利用の届出による届出制と、使用の許可等が必要な施設使用許可制がある。
現在、ビジター艇の受入れ漁港の多くは、施設使用許可制であるが、必要書類の作成、使用日等の変更手続き、使用料等の支払いおよび許可書の受取方法等が煩雑で時間と手間が掛かっている。
また、ビジター艇の受入れに伴い漁港管理者による施設使用の現場確認対応、係留場所の指示・誘導等の管理運営上の課題も指摘される。
ビジター艇の受入れ施設の管理・運営は、漁港管理者が直接行っているケースと、漁業協同組合等へ業務を委託しているケースがある。いずれの場合も最小限の人員で行っているのが実態であり、特に、漁港管理者が直接管理・運営を行うことが多く、行政サービスとしての限界から、土曜日曜・祭日など、利用者へ十分なサービスを提供することができないのが現状である。
これらから、ビジター艇の管理・運営のための専門知識を有する人材を確保し、専任の管理人を配置するなどのサービス面の充実を図り、利用者ニーズに応じた管理・運営体制づくりが課題となる。
漁港の中には、漁港利用促進会議等を設置し、漁港管理者、漁業者、利用者等が事前協議を行い、漁港利用に関するルール等の合意形成を図った上でビジター艇の受入れを進め、成功している事例もある。一方、漁業者等との合意形成がまとまらず、トラブルが発生している漁港も見受けられる。
今回行ったアンケート結果によると、漁港管理者および漁業者は、艇の受入れ後、マナーが悪くなった点として、利用者のごみ等の投げ捨て、利用可能施設以外の使用、漁港施設や漁船等の破損・損傷等を挙げている。これらは、いずれも利用者のマナーに起因するものであり、地域における合意形成が進まない要因となっている。
ビジター利用を推進するためには、全体として漁港利用の秩序を確立していく必要がある。
ビジター艇受入れのための施設・設備としては、ビジター艇専用桟橋、岸壁、トレーラー置き場、駐車場、管理棟および告知(指示)看板等が必要に応じて整備されている。
施設・設備の設置には、漁業活動との利用調整、設置費用の負担および設置費用の償還と料金設定のバランス等が課題となっている。
利用者サイドからみると、ビジター艇の受入れに関する情報は十分とは言い難い。また、ビジター艇受入れにより周辺地域等へ経済波及効果があがっている漁港は非常に少ない。
|