B. 既存アンケート調査の介助必要度と外出頻度からの推計
1)対象者の推計
以下の方法を用いて、対象者を推計した。
高齢者・障害者を以下のような外出の際に介助が必要な者の比率により分類する。このうち、介助を必要とする者を対象者として仮定する。
・外出の際に一部あるいは全面的な介助を必要とする者(対象者)
・時間をかければ一人で外出できる者
・公共交通を使って一人で自由に外出できる者
Us = Pi × α × β
Us:対象者数 Pi:高齢者・障害者人口
α:対象者の範囲となる選択肢の回答比率(%)
β:高齢者・障害者以外の移動困難者を考慮した調整係数(1.0以上)
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(1)使用データ
高齢者・障害者の外出時における「身体能力や公共交通利用時における介助の必要有無」に関する複数調査結果から「公共交通機関を利用できない人」の比率を比較検討したものが下表である。障害者については、厚生労働省「平成13年身体障害児・者実態調査結果」を、高齢者については、東京都「平成12年度・高齢者の生活実態調査」の既存データを用いた(表11)。
表11 高齢者・障害者に占める公共交通機関を1人で利用できる人の比率
注) |
知的・精神障害者については、既存調査がない。太枠調査についての特徴は、表14を参照。 |
表12 使用データの特徴
項目 |
調査名(地域) |
調査主体 |
年次 |
対象者の範囲 |
サンプル数 |
設問内容 |
留意点 |
身体障害者 |
身体障害児・者実態調査結果(全国におけるアンケート) |
厚生労働省 |
平成13年 |
18歳以上の在宅身体障害者 |
4,517人 |
・外出時に介助の必要有無 |
・サンプル調査 ・必ずしも歩行能力を反映していない |
高齢者 |
高齢者の生活実態(東京都におけるアンケート) |
東京都 |
平成12年度 |
65歳以上の高齢者 |
5,086人 |
・歩行能力を5段階で質問 ・面接調査 |
・サンプル調査 ・選択肢があいまいで答えにくい |
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注)全国の対象者にアンケート調査を実施し、得られた外出頻度を用いた。 あくまでも実態なので、供給量の増加やサービス水準の向上による潜在需要については考慮されていない限界はあるものの、全国を対象地域とし、統計的に信頼できるサンプル数を有するので活用することにした。
(2)試算方法
既存アンケート調査結果の「外出に際して介助が必要な者」の比率で試算した。選択肢毎の回答率で利用者数を按分した。
Us = Pi × α × β
= 高齢者・障害者人口×対象者の範囲となる選択肢の回答比率(%)
(ここでは、β=1.0と設定する)
注)対象者の範囲となる選択肢の回答比率とは、例えば下表のケース10で想定した介助が必要な利用者(a+b)の回答比率(例:27.9%の場合0.279)を指す。
表13 対象者の範囲
身体障害者 ○印は「対象者」算出の範囲
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全面的な介助が必要(a) |
一部介助が必要(b) |
時間をかければ1人でできる |
1人でできる |
ケース10 |
○ |
- |
ケース11 |
○ |
- |
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注)設問は「平成13年身体障害児・者実態調査結果報告」厚生労働省のアンケート調査
高齢者 ○印は「対象者」算出の範囲
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自分ではまったく 移動できない |
物につかまれば 歩ける |
一歩ずつゆっくりなら 歩ける |
ゆっくりなら 歩ける |
普通に 歩ける |
ケース10 |
○ |
- |
ケース11 |
○ |
- |
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注)設問は「平成12年度・高齢者の生活実態」東京都のアンケート調査
ケース10、ケース11の外出交通量の推計においては、表14のように障害の種類と程度別に分けて、介助の必要有無別対象者を推計した。
表14 身体障害者アンケート結果による対象者の検討例
資料:厚生労働省 「平成13年身体障害児・者実態調査結果報告」
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(3)対象者の推計結果
『ケース10. 外出の際に介助を必要とする者』(6,328人)
介助が必要な障害者は3,588人(34.4%)、介助が必要な高齢者は2,740人(4.3%)。
表15 介助の必要有無別障害者数の推計(単位:人)
注)厚生労働省「平成13年身体障害児・者実態調査結果報告」を用い、町田市の障害者数に按分。 |
表16 介助の必要有無別高齢者数の推計(単位:人)
自分ではまったく 移動できない |
物につかまれば 歩ける |
一歩ずつゆっくりなら 歩ける |
ゆっくりなら 歩ける |
普通に 歩ける |
合計 |
2,740 |
8,094 |
52,894 |
63,728 |
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注)東京都「平成12年度・高齢者の生活実態」を用い、町田市の高齢者数に按分。
『ケース11. 外出の際に全面的な介助を必要とする者』(3,247人)
全面的な介助が必要な障害者は2,227人(21.3%)、全面的な介助が必要な高齢者は1,020人(1.6%)である。
表17 介助の必要有無別障害者数の推計(単位:人)
注)厚生労働省「平成13年身体障害児・者実態調査結果報告」を用い、町田市の障害者数に按分。 |
表18 介助の必要有無別高齢者数の推計(単位:人)
自分ではまったく 移動できない |
物につかまれば 歩ける |
一歩ずつゆっくりなら 歩ける |
ゆっくりなら 歩ける |
普通に 歩ける |
合計 |
1,020 |
1,721 |
8,094 |
52,894 |
63,728 |
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注)東京都「平成12年度・高齢者の生活実態」を用い、町田市の高齢者数に按分。
2)外出交通量の推計
対象者の推計結果を基に、その対象者の外出交通量を推計する。
外出交通量とは、全ての対象者の外出頻度(トリップ)の総和である。既存調査データを用いて、歩行能力(身体特性)別に分類した対象者の平均外出頻度(実態)を用いて算出した。
歩行能力別外出頻度による推計
外出の際に一部あるいは全面的な介助を必要とする対象者に、外出頻度(実態)を乗じて総和を求める。
Ts = Σ( Us × Ti )
外出交通量 = Σ(対象者数×対象者別外出頻度)
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ア. 前提:外出回数は、外出1回あたり往復トリップ(2トリップ)と見なす。
イ. 計算式: Ts = Us × Ti
Ts : 1日の総トリップ数(トリップ/日)
Us : 外出時の介助の必要度別利用者数(対象者数)
Ti : 1人あたり1日の平均トリップ数(トリップ/日/人)
Ti = Ty × 2/365
Ty : 1人あたり年間総外出回数(回/年)
注1)外出時の介助の必要度別利用者数(Us)は、対象者の推計結果。
注2)身体障害者の総外出回数(Ty)は、「平成13年身体障害者実態調査結果」厚生労働省のアンケート調査における「外出頻度」の質問を次のように換算した。
・ほぼ毎日 7回/週
・週に2〜3回 2.5回/週
・月に2〜3回 2.5回/月
・年に数回 3回/年
・外出なし 0回/年
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