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c. STS
(1)−1 移送サービス(供給体制)
 町田市では、わが国唯一の自治体直営の「やまゆり号」を1972年から初めて運行するなど福祉交通について積極的に取り組んできており、複数のNPO等ボランティア団体が移送サービスを提供している。移送サービスの利用者は、運行団体によって異なるが、主に歩行の困難な車いす使用者、視覚障害者、ストレッチャーの使用が必要な寝たきりの高齢者等である。
 
表4 町田市の移送サービスの供給体制(平成15年現在)
団体名 保有台数 年間運行件数
年間走行距離
運行時間
予約受付
料金 運行開始年月
市直営 やまゆり号
(町田市障害福祉課)
5台 4,376件
56,218km
平日(8時半〜17時)
1ヶ月前〜20日まで
無料 1972年2月
NPO 町田ハンディキャブ友の会 4台 1,973件
33,551km
毎日24時間
1週間前〜当日まで
時間・距離制 1983年7月
NPO 町田ヒューマン
ネットワーク
1台 621件
11,049km
毎日24時間
1週間前〜当日まで
時間・距離制 1989年12月
NPO 鶴川にケアセンターを
作ろう会
1台 不明 毎日(9時〜18時)
不明
無料 2001年9月
NPO 地域であたりまえに育つ
営みを支援する会
2台 824件
7,000km
毎日24時間
不明
時間・距離制 2000年4月
NPO みずきの会 1台 不明 月〜土(8時〜17時)
1ヶ月前〜前月末
時間制 2001/04/01
合計 14台 7,794件
(不明を除く)
-   -
注)運行件数とは片道トリップを1件とするトリップ数。平成12年度実績。NPOとは、特定非営利活動法人を指す。
資料:「東京都内移送サービス実施団体ガイドブック」東京ハンディキャブ連絡会2002.3
 
(1)−2 移送サービスの利用実態
 「町田ハンディキャブ友の会」の平成14年度利用実績データをもとに、移送サービス利用者の身体特性、利用頻度等の実態を明らかにする。
 ここで、移送サービス利用者とは、団体に登録した会員のうち、平成14年度に1回以上利用したことのある会員を指す。
 
 移送サービス団体へのヒアリング調査より多く挙がった意見は、需要が増加している高齢者の通院に対して現在の供給体制では供給量が不足していること、今後の供給体制の拡充や「やまゆり号」の利用時間帯の拡大等であった。
 
ア. 身体特性
 移送サービス利用者の身体状況別構成比と1人あたり利用トリップ数を図6に示した。全利用者82人のうち、74.4%(61人)が車いす使用者であり、視覚障害者が7.3%(6人)、杖等を使用する歩行困難者が11.0%(9人)、その他高齢者等が7.3%(6人)である。
 
図6 利用者の身体状況別構成比(N=82人)
 
イ. 利用頻度
 利用者の半数以上の55.4%が月に1回(年に12回)未満の利用である。他方、月に5回以上利用する人は全体の9.6%を占める。一番利用の多い人は、月に平均15.5回(年に186回)で、その次に利用の多い人は13回(年に156回)、約12回(143回、141回の2名)の利用である。
 
図7 利用者の1ヵ月あたり平均利用回数(N=82人)
 
ウ. 利用目的
 移送サービス利用者の利用目的は通院が59.6%で一番多く、次に施設通所が21.7%、行事参加が8.7%、買物が6.4%の順で利用が多い。
 
図8 利用目的(1,826トリップ/年)
 
(2)高齢者の通所サービスの利用実績
 介護保険事業における高齢者の通所サービスの利用実績(2002年度)を表5に示す。通所介護(デイサービス)、通所リハビリのための送迎を行う施設及び介護保険指定事業所は43ヵ所ある(2003年10月現在)。
 
表5 高齢者の通所介護・通所リハビリサービスへの送迎実績(往復1回)
  通所介護 通所リハビリ
平成12年度 9,298回/月 2,917回/月
平成13年度 12,171回/月 3,463回/月
平成14年度 14,898回/月 3,260回/月
資料:町田市健康福祉部高齢者介護課「平成15年度版 まちだの介護保険」2003.9
 
(3)心身障害者の通院・通所訓練に伴う交通費の助成
 町田市では障害者の通院や通所訓練に伴う交通費の一定額を助成している。
 心身障害者(身体及び知的障害者)の通院・通所訓練交通費の利用実績を表6に示す。
 
表6 障害者の通院・通所訓練交通費の利用件数と助成額
  利用件数 助成額
平成12年度 13,117回/年 71.64百万円
平成13年度 12,921回/年 69.57百万円
資料:町田市健康福祉部高齢者介護課「平成14年度 まちだの健康福祉」2002.10
 
(4)心身障害者の入所・通所施設の送迎サービス(平成14年7月1日現在)
 町田市内にある障害者授産施設等では、施設や作業所の規模によって独自の送迎サービスを行う施設もある。
 町田市内の障害者入所・通所関連施設を表7に示す。
 
表7 障害者の入所・通所施設
資料:町田市健康福祉部障害福祉課「平成14年度 まちだの健康福祉」2002.10
 
5)既存の施策
 障害者と高齢者を対象とした交通関連の助成制度を表8にまとめた。
 
表8 町田市の高齢者・障害者対象交通関連助成制度
助成制度 助成対象者及び内容 助成額
町田市 「やまゆり号」の運行 歩行困難な車いす利用者を対象に買物や通院、施設見学等でリフトバスを運行。寝たきりの方はストレッチャー装備の車両を利用 市が全額負担(利用者は無料)
(平成13年度利用者数:2,789人/年)
障害者通院・通所訓練交通費の助成 身体障害者手帳や愛の手帳所持者、難病認定された方で、町田市重度身体障害者児童福祉手当又は、心身障害者福祉手当を受けている者 通院や機能回復訓練施設に通ったときの交通費の実費額を助成。タクシー利用の場合、実費の2分の1を助成
(最高3万円/月まで)
重度脳性麻痺者等介護人派遣 重度の脳性麻痺者等全身性障害者で、独立して屋外活動をすることが困難な方に対して、障害者が推薦した介護人の派遣費用を助成 市が全額負担
(平成13年度派遣件数:10,055回/年、平成13年度助成額:65,960千円/年)
ガイドヘルパー派遣 重度の視覚障害者で、外出時に介助者が必要な場合(社会福祉協議会へ委託) 市が全額負担
(平成13年度派遣件数:2,724回/年)
ガソリン費の助成 身体障害者(下肢、体幹機能障害の程度が1〜2級)
愛の手帳1〜2度
1人あたり2,700円/月を市が負担
自動車改造費の助成 身体障害者手帳所持者自ら運転する車及び障害者が同乗する車 自動車改造の場合、一定額を市が負担
補装具や日常生活用具の交付・修理 身体障害者手帳所持者、65歳以上の寝たきりや障害者 利用者の自己負担額の一定額について市が負担
お出かけサービス 介護保険または市制度のホームヘルプサービス利用者を対象に通院や外出の援助 利用者の自己負担
年会費300円,1時間890円
(30分未満は445円)
以降30分毎に55円加算
その他 東京都シルバーパス(東京都) 70歳以上の者
申し込みにより、都バス・地下鉄・都電・都内民営路線バスを利用できる。(社)東京バス協会から交付
利用者の自己負担
・住民税課税者:20,510円/年
・非課税者:1,000円/年
交通災害共済無料加入(交通災害共済組合) 77歳以上の者
東京都市町村民交通災害共済のBコースに自動的に加入
市が負担(500円)
注)お出かけサービスとは、高齢者の介護予防や生活支援のために、介護保険適用外高齢者の外出支援サービスとして、概ね65歳以上の者を対象にする。市がシルバー人材センターに委託運営しており、現在車両2台で運転はボランティアスタッフが行う。通院の利用が圧倒的に多い。
 
資料:町田市健康福祉部「まちだの健康福祉」(平成14年度)から抜粋
 町田市「障害者サービスガイドブック」(平成14年度)から抜粋
 
6)財源
 町田市は市直営のSTS「やまゆり号」の運行費を一般会計(社会福祉費)より拠出している。
 町田市の財政規模(平成12年度)は、歳出が114,210,977千円であり、民生費29,541,248千円のうち社会福祉費として15,507,140千円(歳出の13.6%)を支出している。そのうち、移送サービス「やまゆり号」への支出は5,648千円である(但し、事務局・運転者の人件費、事務所運営費、駐車場費などは含まれない)。







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