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4.3 町田市を例にしたケーススタディ
 町田市を例に、地域福祉交通サービスの計画フローチャートに沿って現況分析、需要動向分析を行った。町田市は既にSTSを運行しているので、サービスの拡張計画が考えられるが、本節では、町田市の地域福祉交通サービスの現況、地域福祉交通サービスが必要な高齢者・障害者数の推計例を示した。
 詳細な推計のために必要な高齢者・障害者実態調査、地域福祉交通サービス拡張計画の策定については本調査では実施していない。
 本調査における対象地域の選定理由は次のとおりである。
・地域福祉交通サービスに対する自治体の取り組みが進んでいる地域
・地域密着型交通機関が必要な大都市郊外、又は地方部の都市
・利用者数、利用者ニーズ等に関するデータが比較的整備されている
 
表4-22 対象地域の選定理由
対象地域 選定理由
町田市(東京都) ・福祉のまちづくりに対する取り組みが活発(町田駅周辺のバリアフリー化等について検討)
・1972年から、車いすのままで乗車できるリフト付きバスの「やまゆり号」をわが国唯一かつ初めて、自治体直営で移送サービスを運行
・移送サービスを行うNPO等ボランティア団体が複数存在
・丘陵地に住宅地が多く、町田駅を中心として放射状にバス路線が集中
 
図4-11 町田市の位置
(拡大画面:47KB)
 
 地域福祉交通サービスの計画フローチャートの中で、基本構想の「ステップ2. 地域及び公共交通の現況分析」、実施計画の「ステップ4. 需要動向分析」について、町田市におけるケーススタディを試みた。
 
4.3.1 地域及び公共交通の現況分析(計画フローチャート、ステップ2)
 地域及び公共交通の現況分析では、町田市の人口(要介護高齢者数、障害者(児)数等を含む)、施設分布、交通の現況(STSを含む)等を整理した。
 
(1)人口
1)人口の基本データ
 町田市の人口は395,129人、人口密度5,517人/km2(平成15年7月1日現在、住民基本台帳による人口)である。65歳以上の高齢者は全人口の16.1%(63,728人)を占め、東京都の平均(17.1%)よりやや低い。
注:平成15年1月1日現在、住民基本台帳による人口統計による。
 
2) 高齢者・障害者に特化したデータ
 65歳以上の高齢者数は63,728人であり、高齢化率は16.1%である。高齢者のうち介護保険認定者数は、9,188人(14.4%)である(表4-23)。
 身体障害者数は8,554人、知的障害者数は1,885人であり、障害者の合計は10,439人(精神障害者を除く)である。町田市総人口395,129人の2.6%を占めている。障害者のうち、ほぼ半数の4,796人(45.9%)が65歳以上である(表4-24)。
 町田市の高齢者と障害者の合計人数は69,371人である(表4-23、4-24の合計より65歳以上の障害者数を差し引いた人数)。
 
表4-23 町田市の高齢者数(単位:人)
資料:町田市高齢者介護課統計(平成15年7月1日現在)
 
表4-24 町田市の障害者数(単位:人)
注: 精神障害者は「町田市障害者計画」によると、4,633人と推計される(平成15年)重複障害者(再掲)とは、身体障害者のうち、複数の障害を持つ者を指す。
資料:町田市障害福祉課統計(平成15年7月1日現在、住民基本台帳)
 
(2)施設分布
 町田駅周辺等中心部ではデパート等大型店舗が集積し、これを囲んで住宅街が広がり、さらに外側の丘陵地帯には大規模な団地が点在している。大規模な団地内には、大型小売店はあるが、病院は団地から離れた場所に立地している。
 
(3)交通
1)道路
 町田市の南東部から北西部を貫く町田街道が道路ネットワーク上の重要な要となっている。主要国道では、首都圏の環状線(国道16号線)と放射線(国道246号)が通っている。町田市における道路幅員は、約80%が5.5m未満であり、道路の改良率は50%に満たない状況である。特に町田駅等、駅周辺道路は一方通行を含む幅員の狭い街路構造となっている。
 
2)公共交通
(1)鉄道
 市内を通過している鉄道路線は、東京都心からの放射状路線として小田急線(市内に3駅)、東急田園都市線(同3駅)、京王相模原線(同1駅)と、これらの路線と連絡するJR横浜線(同3駅)の4路線である。町田駅がJR横浜線と小田急線の乗換駅となっており、町田駅周辺に特に商業施設が集積している。
(2)バス
 市内を運行している乗合バスは、神奈川中央交通バス、小田急バス、京王バスの3社である。町田駅前にはバスターミナルが3カ所設置されており、市内各地へのバス路線が集中している。一方、町田駅周辺道路では、買物目的等の自家用車やバスの交通量が道路容量を上回り、渋滞が発生しやすい。
 町田駅発着のバス路線は市内東部を概ねカバーしており、東部のバス交通は大半が町田駅を起点とする路線である。その他、鶴川駅・相原駅も小規模な乗換拠点となっている。市域は南東部から北西部に広がり、北部・西部の丘陵地帯に立地する団地へアクセスするバス路線とその運行本数が少ない。
(3)タクシー
 町田市を営業拠点とするタクシー会社は、小田急交通南多摩(株)(60台)とカンツリー交通(株)(92台)の2社を始め、相模原観光交通(株)、川崎交通産業(株)、神奈川都市交通(株)、京王タクシー、あらいぶ(株)、千代田タクシーなど約10社である。このうち、約4社が介護付タクシーやリフト付タクシーサービスを提供している。介護保険制度の「通院等乗降介助」(いわゆる介護タクシー)の指定事業所として、平成15年9月から(株)コムスンが初めて参入している。
 
※町田市の現状:町田市で通所介護(デイサービス)送迎を行う団体は43の事業所があり、各団体は車いす対応のリフト付車両は少なくとも1台以上保有している。







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