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3.2 移送サービス団体に関する既存データによる運営実態分析
3.2.1 収支と運行実態に関する分析データの概要
 
 移送サービス実施団体の現状を把握するために、財政と運行などのデータを用いて分析を行った。秋山哲男「高齢者・障害者のスペシャルトランスポートサービス」(1998.3)のp60〜76の分析方法等を参考に、東京ハンディキャブ連絡会が2002年3月に発行した「東京都内移送サービス実施団体ガイドブック」のデータを用いて、分析を行った。
 分析対象団体は、(1)財政や運行データの各項目がもれなく記入されていることと、都市間の比較ではなくひとつの行政地域内における団体間の比較を目的とするため、(2)同じ行政地域内に属する複数の移送サービスを提供するボランティア団体であること、を条件とした。各団体の財政やトリップなどの分析を行うことによって、運営基盤の安定性の目安やトリップあたりコスト等を明確にすることができ、各団体間の比較が可能となる。
 但し、分析の結果を参考するにあたって、運行件数や財政状況の視点から、次の点に留意する必要がある。(1)団体間で規模の差が大きく、収入や支出の詳細項目に団体それぞれの事情がある。(2)ボランティア団体なのでそれぞれの成り立ちの背景や団体の性格、サービス提供内容が異なる。
 本節で取り上げる各団体の基本属性、運行実績、財政の状況を表3-10に示した。
 
表3-10 各団体の基本属性と運行実績、財政状況
No 開始
年度
運行
時間
運行日 利用
会員数
運転
ボラ数
事務
ボラ数
賛助
会員数
保有
車両
(台数)
運行
件数
(件)
走行キロ
(km)
1 1981 9:00−21:00 毎日 285 60 14 45 5 3,502 71,361
2 1990 9:30−17:30 月-金 140 11   23 3 2,603 26,023
3 1991 9:00−17:00 月-金 55 13     2 1,483 24,550
4 1995 24時間 毎日 37 5 7 167 1 2,377 19,932
5 1979 8:30−18:00 毎日 250 28 6   6 5,393 79,731
6 1998 24時間 毎日 62 5 6   2 2,544 26,654
7 1983 24時間 毎日 172 78 13 111 5 1,973 33,551
8 1989 24時間 毎日 54 9 17 30 1 621 11,049
 
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資料: 「東京都内移送サービス実施団体ガイドブック」東京ハンディキャブ連絡会、2002年3月発行
 
3.2.2 収支
(1)収入
 各運行団体ともに収入の多くを助成金から賄っている(ボランティアの場合、31%〜82%)。それ以外はわずかな料金収入、会費、寄付、バザーなどの事業により運営を支えていることが多い。一部の団体では、東京都地域福祉振興財団からミニキャブ運行事業助成金(東京都が昭和62年からボランティアグループの育成のために助成が行われ、近年助成額は年次毎に削減されている)として受けてきたが、助成事業は平成15年度から市区町村に移行された。図3-9に、対象団体別年間総収入の内訳を示した。市区町村からの補助金や東京都からの助成金の割合が非常に高いことが分かる。詳細をみると、財政規模が大きいのは1と5の団体である。これらの団体は、早い時期(81年と79年)から活動を開始したことから、市区町村からその実績を認められて助成金を受けるようになったと推測され、東京都からは補助を受けていないが、他の団体は東京都からの補助を受けてきている(図3-10)。
 
図3-9 団体別年間総収入の内訳
 
図3-10 団体別年間総収入に占める助成金の比率
 
(2)支出
 支出の主な内訳は、人件費・車両費・事務費である。図3-11に、年間支出の内訳を示した。特に人件費(事務スタッフ、運転者謝礼費の合計)はどの団体においても総支出に占める割合が大きい。既往調査注1の結果によると、総支出に占める人件費の割合は全体平均で約6割である。今回の調査対象団体では、平均55%であり、33%から69%まで人件費比率にばらつきがある(図3-12)。
 
図3-11 団体別年間支出の内訳
 
図3-12 団体別総支出に占める人件費の比率
 
 運転・事務ボランティアに対する対価について各団体は次の3タイプに分けられる。
1)完全な無報酬のボランティア(実費の費用も自己負担)
2)費用弁償型ボランティア:実費(交通費、食事代等)を収受する。
3)報酬型ボランティア:額は多くないが、協力費などの報酬を得る。
 

注1 秋山哲男「高齢者・障害者のスペシャルトランスポートサービス」東京都立大学(1998.3)63p.







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