| (4)いこまいCAR(愛知県江南市) コミュニティバス   1)江南市の概要  江南市は、名古屋市から20km圏に位置し、公共交通機関で約20分で結ばれるなど利便性が高い。ベッドタウンとして都市化が進み、愛知県尾張北部の主要都市となっており、人口も増加傾向にある。東西6.1km、南北8.8km、面積30.17km2の市域を有し、地形は極めて平坦である。人口は99,965人(平成15年4月1日)で、うち高齢者人口は16,234人(16.2%)である。   2)「いこまいCAR」運行の背景・経緯  江南市域では、モータリゼーションの進展により、従来から路線バスの廃止(3路線が撤退し、現在7路線運行)が相次いでいたが、市民の交通手段を確保することの必要性から、市では公共施設を結ぶ巡回バスを検討していた。一方、タクシー事業者も利用者の減少が目立つようになっており、タクシー利用の新規需要を掘り起こすことが必要と考えていた。こうした中で、地域の移動手段として、タクシーの空車を利用した乗合型タクシーの検討が進むこととなった。平成12年12月より検討に入り、運輸局へ一般貸切旅客自動車運送事業による乗合旅客運送許可(道路運送法21条)申請を行い、平成14年1月より試行運行を開始した。   3)事業の概要  「いこまいCAR」の概要を表2-39にまとめた。   表2-39 江南市コミュニティ・タクシー「いこまいCAR」の概要 
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| 事業主体 | 江南市(運行事業者:名鉄西部交通株式会社) |   
| 運行期間 | 平成14年1月〜平成16年9月30日(試行期間) |   
| 運行時間と間隔 | 8:30〜17:00(幹線コース30分間隔、支線コース1時間間隔) |   
| 運賃 | 料金区分毎に1人1乗車100円(小学校入学前の子どもは無料) |   
| 乗車定員と車両 | 5人乗りのタクシー車両 33台 途中で満車(5人乗車)の場合は、臨時便の運行 |   
| 運行コース | 市内6路線(幹線2路線+支線4路線) |   
| 平均一日乗車人数 | 平成14年1月〜7月:87人/日(0.32人/便) 平成14年8月〜15年3月:95人/日(0.35人/便) |   
| 年間運行費用 | 運行経費28,094,000円 収入見込3,033,000円 差引負担金25,061,000円 |   
| その他 | 既存の公共交通機関と競合しないように路線設定 (1)江南駅・布袋駅には直接乗り入れない (2)路線バスが運行している地域へは運行しない |  |  出典:江南市企画課(平成15年4月)「いこまいCAR」報告書   図2-51 運行路線図とコース名     
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| コース名 | 区間 | 距離 |   
| 【幹線コース】 |   
| すいとぴあ・布袋ふれあい会館 | すいとぴあ江南〜市民体育館 | 7.5km |   
| 市民体育館〜市役所 |   
| 市役所〜布袋ふれあい会館 |   
| 松竹住宅 | 市役所〜県営松竹住宅 | 2.8km |   
| 【支線A】(H14.1〜H14.7)(H15.10〜H16.9) |   
| 般若公民館 | 市民体育館〜般若町公民館 | 3.2km |   
| 東公民館 | 市役所〜古知野東公民館 | 2.8km |   
| 曽本会館 | 布袋ふれあい会館〜曾本会館 | 2.8km |   
| 老人ホーム | 県営松竹住宅〜養護老人ホーム | 2.3km |   
| 【支線B】(H14.8〜H15.9) |   
| 鹿子島会館 | 市民体育館〜鹿子島会館 | 2.7km |   
| 消防署東分署 | 市役所〜消防署東分署 | 3.0km |   
| 中奈良公民館 | 布袋ふれあい会館〜中奈良公民館 | 2.4km |   
| 老人ホーム | 県営松竹住宅〜養護老人ホーム | 3.1km |  |      図2-52 運行車両と停留所(のりば)   4)利用状況  平成14年1月から平成15年3月までの利用状況を図2-53に示した。運行開始初月のみ2,000人より少ない利用者であったが、次月以降2,000人以上の利用で安定的に推移している。また、時間帯別利用者数を見ると、9時〜11時までがピークである。曜日別平均利用者数は、土・日より平日の方が多い。   図2-53 月別利用者数の推移 
| 注) | H14.8.1の支線ルート再編により、再編前を支線Aコース、再編後を支線Bコースとした。 |    図2-54 時間帯別一日平均利用者数   図2-55 曜日別一日平均利用者数   図2-56 月別1便あたり平均利用者数の推移    幹線コースは利用者が安定的に増加しているが、支線A・Bコースでは1便当たり利用者数が極めて少なく、月別利用者数の推移も横ばいに留まっている(図2-56)。   5)利用者の意見と運用上の問題点 ・利用料金が100円(ワンコイン)と安く、満足している。 ・乗り継ぎと定時性について不便を感じる人がいる。 ・利用方法と乗り場の場所がわからない。 ・タクシー車両の乗車定員が5人のため、乗れるかどうか不安である。   6)運用上の工夫 ・一般タクシーとの区別 :タクシーの助手席側のサンバイザーに「いこまいCAR」表示を添付する。 ・利用済券の発行 :利用した際に現金と引き換えに利用済券を渡し、20枚集めると花の種を進呈する。   7)評価(国土交通省の評価)   表2-40 江南市コミュニティ・タクシー「いこまいCAR」の評価 
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| 項目 | 評価 |   
| 利用者利便 | 100円という低価格で公共施設等へのアクセスが可能となったことは、利用者利便性を向上させたといえる。 |   
| 地域の主体的な関与 | 運行委託料として100円/kmで助成することで運行に直接関与している。さらに、本格運行に向けて自治体と事業者の協力が期待される。 |   
| 事業性 | 収支率は約15%と低く、事業者においては路線見直し等により利用者増を図ること、とともに行政補助の継続的関与も望まれる。 |   
| 間接効果 | 新しい交通手段によって外出機会が拡大したこと、自家用車からの転換が見られたことから導入効果があったといえる。 |  |  出典:国土交通省自動車交通局(2003.3)全国のバス再生事例集   8)今後の課題  幹線コースでは、利用者数の安定的な増加が見られるが、支線コースでは1便当たり利用者数が極めて少なく、今後、路線設定や運行方式の再検討が必要である。例えば、タクシー会社の無線を活用し、一部デマンド型の運行を試みる。  例えば、各ゾーン内で2〜3人乗合することを前提とした運行計画を立て、朝・夕は固定路線、9時〜11時帯の利用ピークを経てからはデマンド方式とする方法も考えられる。デマンド方式で対応するエリアを選定するため、利用対象者を事前登録制にし、地図上にプロットして運行計画を立てる。なお、移動困難者の審査にはケアマネジャー等を活用する。  今後、車いすを使用したまま乗車できる車両も導入する。タクシー会社の輸送のみで足りない場合は、新たなNPOの立上げも視野に入れる。 |