(2)バス路線の再編及び新設の取り組み(埼玉県三郷市)
コミュニティバス
1)三郷市の概要
埼玉県の東南端に位置し、千葉県と東京都に接している。東京駅へ直線距離では約20kmであり、都心への通勤・通学には、バス及びJR武蔵野線からJR常磐線への乗換が必要である。昭和48年(1973年)の武蔵野線の開通、公団みさと団地の完成などを契機に人口が急増。その後、首都高速6号足立・三郷線と常磐自動車道が開通、武蔵野線新三郷駅の開業もあり、宅地開発が進行している。2005年には、三郷市にとって、初の放射状に都心・秋葉原へ直結する鉄道、つくばエクスプレスが開通予定である。
面積は30.41km2、人口は130,515人(平成15年4月1日現在)、人口密度は4,292人/km2、世帯数は49,359世帯である。平成8年から人口は横ばいからやや減少傾向にある。65歳以上の高齢者が14,748人である(全人口に対する高齢者比率11.3%)。
2)三郷市のバスネットワーク再構築の背景
ア)社会的な背景
社会的な背景としては、次の3点が挙げられる。
(1)乗合バス事業の規制緩和(需給調整規制の撤廃)により、乗合バス事業者変革が求められた。
(2)貸切バス事業の規制緩和により、観光バス事業者が乗合バス事業へ参入を模索した。
(3)厳しい競争の中のトラック輸送事業者が、新たな事業展開を模索するなかバス事業への参入も検討した。
イ)地域的な背景
地域的な背景としては、次の4点が挙げられる。
(1)路線バスの充実、コミュニティバスの新設の要望等、市民のバス待望論がピークに達していた。
(2)貸切バス事業者2業者が、乗合バス事業への参入を計画していることが把握できていた。
(3)市内の6トラック輸送事業者の貸切バス事業への参入が把握できていた。
(4)つくばエクスプレスの開業、三郷インターチェーンジ周辺の大規模商業施設(14.6ha)の開業を間近に控えており、バス事業の成長を見込むことができる。
ウ)需給調整規制廃止後の変化
バス事業者と自治体の需給調整規制廃止後の変化を整理した。
(1)バス事業者
以前は、需給調整規制の中で独占市場的なバス事業であったが、バスを適正な商品、市場価値のある商品にする姿勢に変化した。
さらに、事業者の都合によるサービス供給から、利用者の立場にたつ利用者ニーズの把握への変化が見られ、事業者の創意工夫が発揮された。
(2)自治体
規制緩和により、自治体はバス交通計画の策定から関与せざるを得ない状況となってきた。
自治体にとっては危機であるが、地域主体の交通計画を作り、バス事業者を誘導するチャンスである。反面、自治体が直営のコミュニティバスを運行する際には、バス事業者の路線と競合しないような工夫が必要である。
3)バスネットワーク再編成前の状況
バスネットワーク再編前の三郷市の状況は、次のとおりである。
(1)三郷に鉄道がなかった当時を引きずった路線(松戸駅行き、団地循環等を除く)。
(2)住宅地の拡大に対応していないバス
(3)利用者にバス停まで出て来いというバス(バス停まで1kmの地域もある)。
(4)市の南部地域、みさと団地地域を除く地域からは、ルート、運行本数、運行時間帯等いずれに対しても不満の多いバス。
(5)市民からの新規ルートの開設、既設ルートの改善、また、はやりであるコミュニティバス(公共施設循環バス)の要望が多数寄せられる。
(6)議会においても、バス交通の改善の一般質問がほぼ毎回提出される。
(7)市の対応としては、路線バスの改善とコミュニティバスの開設の両方向で検討。
・路線バスは、既存のバス事業者に要望するが、バスを取り巻く環境を楯に、後ろ向きの回答が多かった。
・コミュニティバス(4ルート、月曜日から金曜日まで、1日28便、午前8時30分〜午後5時15分まで)の運行を想定すると、年間7千万円近い経費の支出が見込まれると概算され、実施には至らなかった。
(8)市民ニーズ、市民の交通行動にあったバスネットワークの再編成が必要。
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4)地域コミュニティバス」等の導入
三郷市では、規制緩和に向けて地域住民の利便性向上と地域の交流活性化を図るため、鉄道駅を中心とする生活圏を形成する各地域(コミュニティ)単位に、平成14年度(9月〜11月)より新たなバス路線(6路線)の運行を開始した。
各路線の概要を表2-31に示す。
運行時間帯は、路線別に若干異なるが午前5時台から午後11時台までである。
表2-31 「地域コミュニティバス」の概要
番号 |
路線名称 |
運行区間 |
路線長(km) |
所要時間(分) |
運行本数 |
運賃 |
備考 |
車両 台数 |
平日 |
休日 |
1 |
早稲田 循環(東) |
三郷駅北口〜早稲田7丁目〜三郷駅北口 |
3.6 |
14 |
35 |
34 |
170円 均一 |
循環 ルート |
4台 |
2 |
早稲田 循環(西) |
三郷駅北口〜早稲田5丁目〜三郷駅北口 |
4.5 |
18 |
25 |
20 |
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3 |
三郷・新三郷シャトル |
三郷駅南口〜三郷市役所〜彦成1丁目〜三郷団地〜新三郷駅南口 |
11.4 |
47 |
96 |
59 |
150〜350円 |
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5台 |
4 |
新三郷・吉川シャトル |
新三郷駅南口〜彦成1丁目〜彦糸1丁目〜吉川駅 |
6.8 |
19 |
154 |
土140 日 97 |
150〜250円 |
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4台 |
5 |
三郷・金町シャトル |
三郷駅南口〜総合体育館〜市役所〜戸ヶ崎1丁目〜高州3丁目〜金町駅 |
13.4 |
50 |
100 |
100 |
170〜360円 |
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6台 |
6 |
新三郷東循環 |
新三郷駅北口→半田→早稲田8丁目→新三郷駅北口(朝コース) |
5.9 |
15 |
10 |
10 |
150円 均一 |
循環 ルート |
1台 |
新三郷駅北口→文化会館→早稲田8丁目→半田→新三郷駅北口(昼・夜コース) |
6.8 |
20 |
40 |
40 |
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この6路線のほかに、平成15年12月から市の「地域コミュニティバス」の計画案に沿って民間バス事業者により、新三郷駅西循環ルート(一周所要時間:13分)が新たに開通され、運行されている。
図2-46-1 自治体が配布するバス路線ガイドマップ
図2-46-2 自治体が配布するバス路線ガイドマップ
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